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 リビア沖の地中海で27日、欧州での難民申請希望者を乗せてイタリアに向かっていた密航船が沈没し、リビア治安関係者によると約200人が死亡した。ロイター通信が伝えた。

 船はサハラ砂漠以南のアフリカ出身者ら約400人を乗せてリビア西部を出航。約200人は救助されたが、残りは船の中に閉じ込められたとみられる。

 国際移住機関(IOM)によると、欧州への密航船の沈没で死亡した人は、今年だけで2300人以上にのぼる。また国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、1月から8月半ばまでに、欧州への流入地となっているギリシャ、イタリアに密航した人は26万5千人。うちギリシャに上陸した15万8千人の大半は、バルカン半島を北上し、ドイツや北欧での難民申請を目指す。

 こうした状況を受け、ドイツのメルケル首相は27日、ウィーンでの国際会議後の記者会見で、ギリシャとイタリアに、EUが直接運営に関わる登録センターを設置するよう訴えた。「欧州の玄関口」で、シリアなど紛争国からの「保護されるべき人々」と経済目的の不法移民を判別し、難民審査を加速させる、との狙いだ。

 EUの規則では、難民審査は最初に上陸した国が責任を負う。しかしメルケル氏は「ギリシャはその状況にない」と述べ、従来の欧州の難民政策が難民の急増で機能不全に陥っていることを認めた。一方で「保護が必要な人を保護するのは欧州の歴史的義務だ」とも述べ、他のEU加盟国も難民受け入れの負担を公平に分かち合うよう求めた。

 記者会見に同席したEUのモゲリーニ外交安全保障上級代表は、EU内で難航する難民受け入れの割当制をめぐる協議について「時間は無尽蔵ではない。加盟国が責任を持って決断することが必要だ」と述べた。(アテネ=山尾有紀恵、ウィーン=喜田尚)