大内悟史
2015年8月28日18時10分
観光客を呼び込むために蒸気機関車(SL)の運行を復活させたパイオニア、大井川鉄道(本社・静岡県島田市)が経営不振にあえいでいる。首都圏などから観光客を集めてきたが、多額の有利子負債が重荷となり、存続が危ぶまれてきた。今月末、新たなスポンサー企業から社長を迎え、再生へのレールを走り出す。
ぽーーーっ。今月20日、大井川鉄道の新金谷駅に汽笛が響き、英国の人気アニメの主人公にふんしたSLがゆっくり動き出した。同社が昨年度から運行を始めた「きかんしゃトーマス号」だ。
家族5人で乗車した兵庫県南あわじ市の小学2年、村上隼太君(7)は「初めて乗るので楽しみ」。島田市出身の母親、綾美さん(33)は「鉄道の存続が決まってよかった」と話した。
同社はここ数年、経営不振が続き、昨年は沿線自治体に補助金を求める意向を表明。さらに官民ファンドの「地域経済活性化支援機構」(東京)に支援を申請し、今年5月末、機構から再生支援の決定を受けた。
大井川鉄道はピーク時の1967年度、年間383万5千人の乗客がいた。それ以降は、沿線の過疎化やマイカーの普及などで乗客が減って経営が悪化。90年代末には、負債が30億円台に膨らんだ。
同社は76年、経営改善を目指し、旧国鉄が運行をやめたSLを他社に先駆けて復活させた。すると、鉄道ファンや観光客が押し寄せ、2009年度には28万2千人がSL列車に乗車。現在もSL4両を保有し、ほぼ毎日運行しており、収入の9割をSL関連が占める。
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