『ted』を楽しむためには、いろいろ勉強しなきゃね
まあ、実にお下品な映画であるが、しかし、それなりに1980年代の映画に関する知識が必要なんだよな。何せ、タイトルバックから『E.T.』ですからね。
ということで、ネタバレ多々です。気になる方は以下を読まないように。
『TED』(監督:セス・マクファーレン/脚本:セス・マクファーレン、アレック・サルキン、ウェルズリー・ワイルド/製作:スコット・ステューバー、セス・マクファーレン、ジョン・ジェイコブス、ジェイソン・クラーク/ヴィジュアル・エフェクト・スーパーバイザー:ブライアー・クラーク/製作:ユニバーサル)
しかし、何で主人公のジョンとクマのぬいぐるみテッドのお気に入りが『フラッシュ・ゴードン』なんだ、あんなクソ映画。本当に「テディ・ファッキン・ベアー」だよ。
というか、監督のセス・マクファーレンは元々アニメ・クリエイターなわけだが、何故アニメーターが作った映画って、何でこんなにオタク臭に溢れているんだろうか。オタクだからアニメを作ったのか、アニメだからオタクになったのか?
しかし、吹替え版だったらそれでもいいが、字幕版で「くまモン」「ガチャピン」「星一徹」はないだろう。そんな台詞をテッドは喋っていないのである。本来は「くまモン」は「Teddy Ruxpin」だし、「ガチャピン」は「T.J.HOOKER」だし、「星一徹」は「Joan Crawford」なのである。そんなんじゃ分からない、ということでそんな字幕を作ったんだろうが、しかし、それでは「ちゃんとした字幕」とは言えないんじゃないか? まあ、吹替え版ならその程度の観客相手なのでどんな翻訳をしてもよいが、字幕版の基本は英語で話しているのをそのまま聞くことが前提なのである。そんな英語で話している・聞いている映画の字幕に原語とまったく異なる言葉が書かれている画面を見ると、何故か違和感を覚えるのである。「Susan Boyle」は「デブ」とかに翻訳しないで、ちゃんと「スーザン・ボイル」という字幕をつけているんだから、その辺は原語に忠実な字幕を望む。
その他はとにかく1980年代テイストに溢れている作品なのだが、しかしそれもどちらかというとB級テイストだ。特に面白いのはかの超オタク監督クェンティン・タランティーノが愛してやまない超B級俳優ジョン・トラボルタが主演の超B級映画『サタディ・ナイト・フィーバー』と、リチャード・ギア主演のこれまた超B級青春映画『愛と青春の旅立ち』からのダンス・シーンのパクりだろう。ジョン(マーク・ウォールバーグ)とロリー(ミラ・クニス)のそれぞれの妄想と回想のシーンなのだが、その他、『トゥナイト・ショー』『トップガン』『007/オクトパシー』『きみに読む物語』『ナイトライダー』『チアーズ』『ブリジット・ジョーンズの日記』『エイリアン』などの映画やテレビ番組の引用やパクりに溢れていて、ついにはセス・マクファーレン自身のテレビ・アニメ『ファミリー・ガイ』まで使っている。
更に昔は「しゃべるテディ・ベア」としてテレビ番組などに引っ張りだこだったテッドもすぐに視聴者から忘れされられることになったことについてはコリー・フェルドマン、フランキー・ムニッツ、ジャスティン・ビーバー、アーノルド坊や、などの「一発屋」を引用して語っている。まあ、その辺もアメリカには一杯あるネタですね。日本でも最近の芸人なんかには増えているが。
しかし、このうだつの上がらないレンタカー屋の受付をやっている、踊りも下手だし超音痴でオタクの中年男(ジョン)に、なんでロリーみたいなイイ女が惚れるんだろう。まあ、だからこそ映画になるんだろうけれども、結局、一時は真っ二つに引き裂かれてしまうテッドもロリーの必死の手術(って言うんだろうか、あるいは裁縫?)によって蘇ってしまうのである。もっとも、これからも生き返ったテッドとジョンは以前と同じような生活をするんだろうし、だとするとその度にロリーは怒り心頭に達して、またまたジョンは家を追い出されてしまうんだろう。ま、そんな進歩しない関係が男女なんですね。
しかし、私的に一番笑えたのはロリーが勤める広告会社のオーナー社長レックスがジョンに紹介する自慢のコレクションの数々。3000本安打のボッグスのバットに始まり、ジョー・ルイスのグローブ、ジョン・レノンの眼鏡ときて最後が「ランス・アームストロングのキン○○」というシーンだ。多分、映画製作時にはまだランスのドーピング告白はなかった筈だから、まだまだ相当な金額を支払ったのだろう。ドーピング告白をした後の現在なら幾らぐらいなのだろう? という興味が湧いてくる。
という具合に、いろいろお楽しみがある『ted』なのであった。
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