コミュニティーFM:音楽配信めぐり法廷闘争

毎日新聞 2015年08月27日 15時00分

「番組まとめ」チャンネルのイメージ
「番組まとめ」チャンネルのイメージ

 放送エリアが限定されているコミュニティーFMが、全国どこでも聴くことができるインターネットラジオ「リッスンラジオ」(リスラジ)に音楽番組を配信するのは契約違反として、音楽CDなどの2次使用を管理している「日本レコード協会」が全国35局と結んだ使用許諾契約を打ち切り、法廷闘争に発展している。35局が「恣意(しい)的な排除」と契約継続を求めて東京地裁に提訴したのに対し、レコ協側は「コミュニティーFMは音楽配信事業者と化している」と反論している。【島田信幸】

 レコ協はレコード会社の委託を受け、曲を放送したテレビ・ラジオ局から2次使用料を徴収している。訴状などによると、限られた地域で番組を放送しているコミュニティーFMについては一般の放送局よりも低い使用料を設定し、1年ごとに使用許諾契約を更新してきた。

 ただ、コミュニティーFMは、ビルなどの影響で電波が届かない難聴取地域でも放送が聴けるよう、番組をインターネットで同時配信(サイマル配信)しているため、実際には全国で聴くことができる。一部の局はサイマル配信を利用して2012年からリスラジに番組を提供している。

 リスラジは各局が別々の時間帯に流す音楽番組をつなぎ合わせ、24時間音楽を流す「番組まとめ」チャンネルを放送している。リスラジ聴取用のスマートフォンの無料アプリのダウンロードは300万件に達しており、番組まとめは人気チャンネルの一つという。

 この番組についてレコ協側は、実質的に制作しているのはリスラジの運営会社「エムティーアイ」(MTI)で、局側に対価を支払っているなどと問題視。今年2月に「リスラジへの番組提供は難聴取地域の解消が目的でない」と48局に契約解除を予告し、「放送区域の需要に応える」「番組の主要部分を自主制作する」ことなどを新たに契約案に明記した。

 北海道から沖縄まで全国各地の35局はこれに同意せず、契約を3月末で打ち切られたが、「サイマル配信は難聴取地域の解消が目的。リスラジへの番組提供で利便性を高めている」として提訴した。

 レコ協側は「コミュニティーFMは地域情報の発信拠点であることが前提。自主制作せず、地域の限りもないリスラジへの配信は契約の対象外」としており、35局側は敗訴すれば曲が放送できなくなる可能性がある。

 訴訟の背景には、今年に入り、定額制で音楽が聴き放題のインターネット音楽配信サービスへの参入が相次いでいる事情もありそうだ。あるFM局の責任者は「音楽配信業に力を入れ始めたレコード会社側がレコ協に圧力をかけている」と指摘する。レコ協側も訴訟の中で「番組は委託元であるレコード会社の音楽配信事業と競合する」と主張している。

 【ことば】コミュニティーFM

 超短波放送(FM放送)用周波数を使用し、地域に密着した情報の提供を目的とした放送局。放送区域は半径5〜15キロ程度で開局には総務省の免許が必要。1992年から制度が始まり、8月現在で全国に約290局ある。多くの局が区域の市町村と災害放送協定を結んでおり、2011年3月の東日本大震災では、各地の局がきめ細かな災害情報を提供した。

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