あれから改めてヤナギサワのアルトについていろいろと調べてみましたので、前回記事の訂正も兼ねてUPしておきます。
【Yanagisawa ALTO SAX History】
■1956年 12月 A-3
ヤナギサワ初のアルトサックス。初期型と後期型があります。
【特徴】
A-3の初期型はキーがプレスでなく鋳物で作られており、鋳物表面をヤスリがけした後にバフがけとラッカー吹きつけが行われています。またトーンホールが現在の様に管体からの引き上げではなく、別パーツがロウ付けされています。
A-3の後期型はキーが鋳物ではなく大量生産のプレスとなっています。
A-3外観の最大の特徴はマーチンのようなワイヤーキーガードです。
A-3は輸出版では「300」シリーズの彫刻もあります。また別に「1200」シリーズという刻印も確認されています。
■1965年 6月 A-5
アルトサックス2号器。
【特徴】
初代A-3から10年を経て、フルモデルチェンジしプロモデルとしてデビュー。CONN的なトーンホール位置とテーブルキー機構を持ったA-3から、セルマー型のテーブルキーと低音リンク機構、ベルの右に移されたLowBおよびB♭キー、そしてHiF#キーを備えています。現在のアルトとほぼ変わらない操作性を保持しており、A-5が名器と言われる所以といえます。
■1966年 4月 A-4
特徴:A-5の様なフルモデルチェンジではなく、A-3からの機構を維持したまま改良を続けたモデル。位置づけは準プロモデル。
まずは初期モデルから。
A-4初期モデルの特徴はA-3のキーガードがワイヤーではなくなった点です。ただし他は変更なく、テーブルキーと低音キーのリンク機構はCONN型のままで、テーブルキーの形状もA-3の平行四辺形状のままです。
A-4中期モデル
中期モデルはBおよびB♭のトーンホールが右に移されました。またテーブルキーが丸型に変更されました。さらにテーブルキーと低音キーのリンク機構がA-3のCONN型ではなく、BUFFET CRAMPONの18-20~SDNやKINGのZEPHYR~Super20に見られる機構を採用し、A-3やA-4初期型よりも遥かに小さな力で低音キーを操作できるよう改良が加えられています。
A-4後期モデル
後期型のA-4はA-5のデファイン・廉価版として発売されました。A-5との差異はHiF#キーがないことです。1970年夏のA-6登場まで製造され、1975年ぐらいまで流通しました。
A-4は全モデルを通じてHiF#キーが省かれており、現在ではF#レスをわざわざ有償でカスタム対応していることを思うと貴重なモデルといえます。F#キーがないことからA-4後期型はA-5よりもむしろMarkVIコピー色が強いともいえます。
A-4各モデルのうち、前期はA-3のリファイン、後期はA-5のデファインだと考えると、「純粋にA-4のためだけに設計されたA-4」は中期モデルのみとなります。確かにキー機構やトーンホール位置、本体管の太さの違いなど、A-4中期モデルだけに見られる違いが多くあり、完全に他のアルトから独立したオリジナリティの強いモデルになっています。
A-4は輸出版では「400」シリーズの彫刻も見られます。
■197?年 A-2
A-5=プロモデル、A-4=準プロモデルというカテゴリに加え、初心者向けにA-2がリリースされました。
【特徴】
A-2の特徴として、ベルの長さが標準的なアルトの半分しかないこと、LowB♭キーがないこと、LowBキーがベルの「背中」にあることが挙げられます。ベルが短く大変かわいい印象です。
■197? LowAつきA-4(試作)
セルマーのMarkVI同様、柳澤でも特殊楽器としてLowA付のアルトが存在しますが、試作のみで市販はされていません。
このLowA付きA-4では、ネックのオクターブキーがアッパースタイルになっていたり、テーブルキーのC#とBキーが連結されているなど、後に1980年のエリモナ88シリーズで初めて市販採用され、その後のヤナギサワ各モデルのデザインを決定づける当時としては斬新な機構にも、果敢に挑戦しています。
■1970 8月 A-6
A-5、A-4のラインナップを統合し、A-5の後継としてA-6がデビューしました。
【特徴】
A-6はより一層セルマーMark6を意識した造りとなります。特に米国での評判が高くなり、セルマー一辺倒だったプロも演奏に使用するようになりました。
■1972年 A-7
初めての真鍮以外のヤナギサワサックス
【特徴】
総銀製のネックと本体をもつモデル。ただしA-7は試作品で、92年のシルバーソニックA-9930の発売を待つこととなります。そしてその後99年の9937に結実するのです。9937に「7」の数字を入れるのには、A-7の「7」という理由があったんですね。
■1978年 7月 A-80(A-800)
■1980年 A-88(A-880)
ついにエリモナシリーズが発売されました。これぞ「名機」と呼ぶにふさわしいプロモデルといえます。
80と88の違いは、80が国産素材、88が輸入素材で作られているということです。いずれも管の厚さと重量を増し、遠鳴りとパワフルさを兼ね備えた楽器といえます。特に当時のアメリカのプロJazzプレイヤーに絶賛されています。
中でも88は輸入素材を用いた新開発の材質を用い、入念な焼入れを行っているため、80とは響きも音質も大いに異なります。また88ではトーンホールの大きさを部分的に改良し、細かなチューニングが施されています。またヤナギサワでは初めてHiF#キーを涙型キーに変更する、テーブルキーの中央を連結させる新機構を採用し格段に滑らかな運指を実現する、また現在のヤナギサワネックの形状(アッパースタイルのオクターブキー)を初めて市販採用(A-4 LowA付き(試作)ではこれが使われていました)するなど、当時考え得る最高の技術を惜しみなく使っています。
今後ヤナギサワ中古を探す方は、売る側は「名機エリモナシリーズ!」としか言わないと思いますが、そこは激しく「エリモナっちゅうけど88か?ただの80か?」と突っ込んでみてください。
■1980年 A-50(A-500)
A-50は、ヤナギサワの新たな戦略である「初級者モデル」カテゴリ拡充策として登場しました。既に発売されていたA-2は他社の初心者モデルと比べると「割り切り」が大きすぎて市場になじまないという判断から、プロモデルのアルトと同様の姿をした廉価版を発売することになったのです。
ちなみに80年代初頭にエリモナシリーズが発売された際のプリマ楽器経由のA-50の価格は、アルトのラッカーモデルでA-88が楽器本体のみ30万円、A-80が23万5000円だったのに対してかなりの低価格である14万9000円となっています。プロモデル、準プロモデルと比べてA-50がいかに廉価モデルであり、またこの安価な楽器でいかに多くのヤナギサワユーザーのシェアを獲得することができたかは推して知るべしです。
【特徴】
初心者モデルながら、シルバーメッキを加え他社に対抗、またサムフックを調整式にしたり、管ベル支柱の輪を大きくし音を改善したり、ラッカー素材をアミノアルキッド系ラッカーにし耐久性を上げるなど、現代楽器としてYAMAHAの初心者モデルと肩を並べるための(そしてさらに上に行くための)細かな改良は加えられています。
しかし最近、A-5とA-50を(わざと)混同させて、A-50を「名機」として偽り、価値を吊り上げて販売している店や人をよくみかけます。またそれを真に受ける人も多く、20年以上前の初心者モデルの中古楽器がオークションで5~6万、店だと8~10万円以上の価格で買われているのをみかけます。しかしA-5/A-6のプロ仕様/完全ハンドメイドによるマーク6コピーと、単なる初級者用のA-50では管やバネの材質、作り精度をはじめ、ボアの大きさなども全く異なり、残念ながらA-50は所詮カレッジモデルの域を越えていません。A-5とA-50は番号は同じ「5」と共通ですが、その楽器コンセプトは全く異なりますので、納得して買われた方はいいですが、売る側の無責任な売り文句には十分気を付けられた方が良いと思います。(だまされて買ってしまった人はこの記事を見なかったことにして一刻も早く忘れてください。)
-------閑話休題------
さて、その後、エリモナ80、88シリーズは90年代に入り900、990シリーズへ改良されていきます。
また901(ブラス)→902(ブロンズ)や、991(ブラス)→992(ブロンズ)と管体素材のバリエーションが増えていくことは皆さんご存知のとおりです。
今日あなたのヤナギサワに息を入れるとき、こんな歴史の上に乗っかってる音なんだなぁと少し思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
たくさんの歴代ヤナギサワアルト、どれが名機?という話は色んなご意見で諸説紛々でしょうが、やはり皆さんご自分の楽器が「1番の名機」でいいんじゃないかなと思います。お気に入りに勝る名機はなし!だと思います。
ちなみに僕はサックスの楽しさを教えてくれたA-50が自分にとってのヤナギサワ名機かな。客観的に見たらA-50なんて安物の中途半端なスクールバンド向け楽器なんですけどね。開放C#キーと中間Dキーの音色の差とピッチの差なんて最悪な楽器だし。音はペンペラペンだしね。でも僕にとってはいい楽器&当時の宝物でしたよ。
今後は復活したA-4でたくさんJazzを吹いて、僕にとっての名機にしたいなと思います。