2015-08-28

ビンの蓋の話を読んで、思い出したこと

クリスタルガイザーの蓋もあけにくい。

量が多くて安いから愛飲していたけど、蓋を開けられなくていつも友人に開けてもらっていた。

大学受験ときも、同じノリでコンビニクリスタルガイザーを買ってから受験会場に行ったのだけど、同じ大学を受ける友人なんていなくて喉が渇いたのに蓋をあけられなかった。

恥を忍んで通路を挟んで隣の席の男の子に蓋をあけてくれるよう頼んだ。彼は快諾してくれて、そんなに固くないよ?と笑いながらあけてくれた。

喉の渇きも潤い、万全の状態で試験に臨めたおかげで第一志望のその大学合格した。入学すると、蓋をあけてくれた彼も、同じ学科にいた。

理系学部学科だったので、女子は私を含めて三人しかいなかった。二人は、どうにも話しかけにくいタイプの子だった。

上京してきた友人もいなかったため、顔見知りがいることが嬉しくて、彼とよく話すようになった。

いつも、隣で必修科目を受けていた。彼は明るくてすぐに色んな人と仲良くなっていた。私は彼伝にたくさん友人ができた。

いつも、彼と、彼の友人と一緒にお昼ご飯を食べていた。場所学食だったが私はお弁当を持参していた。

いつも作ってきて偉いね。と二人は言ってくれていた。ある日彼の友人がひとつちょうだいと私の玉子焼きを食べた。すごく美味しい、と喜んでくれた。

とても嬉しかった。

もっと食べたいと言われ、私のおかずが無くなってしまうかもしれないと困っていると、彼が、俺も食べてみたいから今度手料理ご馳走してよ、と言ってきた。

私は女性マンションに住んでいるため部屋に招けない旨を話すと、彼が部屋を貸してくれることになった。

後日、彼の部屋に行くと、彼と、彼の友人と、知らない人がいた。彼の兄だった。二人暮らししているらしい。先に言えよと思った。

男三人に囲まれてなんだか気まずかったが、ご飯を振る舞って、お酒も飲まずに朝までマリオカートスマブラをした。

実家で弟といつも対戦していた私は、マリオカートの腕にかなりの自信があったのだが、なんと彼の兄に全敗した。

私は悔しかった。

理由をつけて、彼の部屋に入り浸るようになった。その都度彼の兄とマリオカートで戦った。そして負けた。

そんな日を続けていた大学二年生の夏、彼の兄が海外大学院に進学することになった。

彼の兄を送る会に参加させてもらった。彼の兄はたくさんの人に慕われていた。

出発日、成田空港まで見送りに行った。見送りに来ていたのは、彼の家族と私だけだった。

彼の兄は、空港でお別れするのはなんだか気恥ずかしいからと出発便を友人たちには教えていなかったらしいのだが、私は彼から聞いていたので空気も読めず行ってしまった。

見送った後、彼の母親からお兄ちゃんの彼女さん?と聞かれてしまい、申し訳なく思った。お母さん、あなた長男さんは童貞ですよ。

マリオカートで対戦する相手がいなくなり張り合いのなくなった私は、何をするわけでもなく、しかし変わらず、彼の部屋に入り浸っていた。

三年生にあがる頃、女性マンションだと不便だから契約更新しないで引っ越そうと思う、という話をすると、彼に、じゃあうちに住めばいいじゃんと言われた。彼の兄が旅立ってから、一部屋余っているから。

さすがに、それは如何なものかと断ったのだが、なんやかんやあって結局一緒に住むようになった。

元々入り浸っていたから、生活にそんなに大きな変化もなく、でもたまに、こんな生活をして良いのだろうかと不安になったりもしていた。

今思うと、付き合ってもいない男と一緒に住むなんてどうかしているけど。

何かするわけでもなく、時々彼の友人が遊びに来て、三人ではしゃいだりした。

大学三年生の初夏、彼の友人に初めての彼女ができた。サークルの後輩らしい。

同じ授業は少なくなっていたもののいつも三人でいた私たちだったが、彼の友人は彼女とお昼をとるようになり、私たちは二人ぽっちになってしまった。

彼女あんなところに行った、こんなことをした、と楽しそうに報告をしてくる彼の友人が羨ましくて、それを真似て私と彼も色々な所に出かけた。

彼と一緒にいると、とても楽しかった。

そのうち、彼が私以外の人と出かけると聞くと、なんだかモヤモヤするようになった。

私が彼以外の人と出かけると言うと、行かないでと言われるようになった。

でも、今更付き合うだなんて考えられなくて、そのままの関係が続いた。

その年、クリスマスを一緒に過ごした。イルミネーションを観に行くわけでもなく、家でのんびりと、いつもより少し豪華なご飯を食べた。

飲みに行こう、と彼が言った。近くの居酒屋で安いお酒を飲んで、隣の席のサラリーマンに絡んだりしてぐだぐだと話した。

店を出て、寒いねと言うと彼が手を繋いできた。やめてよ気持ち悪い、と笑って手を振りほどいたら彼も笑っていた。

酔い覚ましがてら、近所をうろついた。コンビニで水を買った。ボルヴィックを買おうとしたら、こっちにしようよと彼はクリスタルガイザーを取った。

コンビニを出ると、彼はクリスタルガイザーの蓋をあけて私に渡してくれた。

一口飲んで、懐かしいねと言うと、覚えていたんだ、と彼は笑った。

帰り道、彼が寒いねと言ったから手を繋いでみた。やめろよ気持ち悪い、と彼は笑っていた。手は離さなかった。

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