クロマグロ会議:漁業者ら「産卵期の漁獲規制を」
毎日新聞 2015年08月27日 22時18分(最終更新 08月27日 23時51分)
産卵期のマグロを取ることも規制すべきか−−。太平洋クロマグロの資源管理について話し合う水産庁主催の全国会議が27日、東京都内で開かれ、産卵期(6〜8月)のマグロの漁獲規制などが議題となった。水産庁は「科学的根拠に乏しい」と消極的だが、漁業者や研究者からは「マグロを将来に残すためにはもっと卵を産ませるべきだ」と規制を求める声が上がっている。
「(マグロが取れなくなり)危機感を持っている。卵を産ませないと魚は増えない」。全国会議では長崎県壱岐市のマグロ漁師、尾形一成さん(53)がこう訴え、産卵期の規制を提案した。会場には全国の漁業者ら約400人がおり、2人が同様の意見を述べた。
太平洋クロマグロは近年、親魚の資源量が急激に減少し、全国的に不漁が続く。昨年11月には国際自然保護連合(IUCN)から絶滅危惧種に指定された。水産庁は今年から、30キロ未満の未成魚(幼魚)を2002〜04年の平均の半分(約4000トン)に抑制する規制を実施している。
これに加え、ひき縄や一本釣りなどの漁業者の間には、産卵期の漁獲規制を求める意見が根強い。背景には00年代半ば以降、産卵場のある日本海側で夏季に大規模な巻き網漁が行われるようになったことへの反発がある。
水産庁は「産卵魚の量と卵から未成魚まで育つ量とに相関関係は見られず、産卵期の巻き網の漁獲がその年の産卵に与える影響も限定的。規制は科学的根拠が乏しい」と産卵期の規制は不要との立場だ。マグロの資源状態を調べる国際機関「北太平洋マグロ類国際科学委員会」(ISC)の勧告に沿った今の規制で、漁獲量は回復すると主張している。
これに対し、水産資源管理を専門とする東京海洋大の勝川俊雄准教授は「ISCが楽観的な見通しを示してきたことで対応が遅れ、絶滅危惧種になった。若い親魚を取れば未来の産卵も奪われる。その年の産卵への影響だけをとらえる水産庁の考え方は間違っている」と批判する。
今月31日には米国や韓国などが参加して「中西部太平洋マグロ類委員会」(WCPFC)北小委員会が始まる。日本は未成魚に育つ魚が著しく低水準になった場合の緊急的な措置について、議論することを提案する。【一條優太】