2010年5月26日10時24分
プロ野球ヤクルトの高田繁監督が辞任を決断した最後の一押しは、少年ファンのひと言だった。「高田、やめちまえ」。神宮での試合前には必ずサインの時間を割く監督にとって、この声が戦意を失わせた。
ゼネラルマネジャーとして日本ハムをパ・リーグ連覇に導いた手腕を買われ、ヤクルト監督に就任。2年目の昨季はクライマックスシリーズに初めて進出した。だが、球団は昨オフ、目立った補強をしなかった。昨季と顔ぶれが変わらない打線は他球団から研究され、苦戦を強いられた。
「ギラギラしたものを見せろ」。5日に0―12と大敗した巨人戦の後、高田監督は今季初めてゲキを飛ばした。自らの言動でチームを鼓舞するタイプではない。球団関係者に「おれにこんなこと言わせるなよ」と漏らしている。だが、それも選手には響かず、その後も負けを重ねた。
ガーデニングが趣味の高田監督。選手層の薄さは若手を育てて解消するつもりだった。4月中旬の遠征先で、練習する選手を見ながら寂しげにつぶやいた。「(植物と違って)こっちはうまくいかんな」。巨人V9戦士も、監督としては大きな花は咲かせられなかった。(波多野大介)