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【社会】

国旗国歌「強制」記述の日本史 都立高、実教出版採用せず

 東京都立高校が二〇一六年度に使う日本史教科書で、国旗国歌について「公務員への強制の動きがある」とした記述が不適切だとして都教育委員会が使用を控えるよう通知している実教出版(千代田区)の教科書を、いずれの高校も使用しないことが分かった。都教委が同社の教科書を選ばないよう働き掛けなどを始めた一三年度用以降、この記述のある同社の教科書を選んだ学校はない。

 都教委は二十七日の定例会で、都立の高校や中高一貫校、特別支援学校の計二百五十九校が一六年度に使う教科書を採択した。高校の教科書は各校が選んだ教科書をそのまま採択するが、同社の「高校日本史A」「高校日本史B」を選んだ学校はなかった。日本史Aは近現代史で主に一年生用、日本史Bは通史で二年生以降で使う。

 同社の教科書には、国旗国歌に関する注意書きで「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述。都教委は「(国旗国歌の指導は)児童生徒の模範となるべき教員の責務」として、入学式や卒業式での国歌斉唱時に国旗に向かって起立しない教員を懲戒処分にしている。

 毎年、翌年度に使う教科書は各校が選定し、都教委が採択する。日本史Aが採択対象となった一二年、都教委の職員が「都教委の考えと合わない」と各校に電話した。日本史Bも含めて対象となった一三年には都教委が「使用は適切でない」との見解を議決。一四、一五年も同様の見解を各校に伝えた。市民団体が一四年二月に東京地裁に都教委の議決取り消しを求めた訴訟は係争が続いている。

 都教委に見解の撤回を求める請願を呼び掛けた市民団体「子どもと教科書全国ネット21」の俵義文事務局長は「実教出版の教科書を使いたい学校もあるのに、不当な理由で使わせないのは、子どもの学習権の侵害だ」と話した。

 

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