梅棹サロン、ギャラリーに 「知の巨人」忠夫氏旧邸改装
民族学者の故梅棹忠夫さんの旧邸(京都市左京区北白川)を改装したギャラリーが29日オープンする。知の巨人が自宅を開放して若者たちと語り合った「梅棹サロン」の精神を受け継ごうと、次男の陶芸家マヤオさん(64)と美衣さん(67)夫妻が準備を進めており、「ジャンルや世代を超えて人が集い、面白いものを生み出す場にしたい」と意気込む。
独創的な文明論を打ち立て国立民族学博物館(大阪府吹田市)初代館長も務めた梅棹さんは1960年代、毎週金曜日に自宅の居間に学問分野の異なる研究者を招き、酒を交わしながら深夜まで議論した。「梅棹サロン」と呼ばれ、後進育成の場にもなった。
2010年に梅棹さんは90歳で亡くなったが、生前から、家族だけでなくさまざまな人の思い出が残る旧邸をギャラリーとして開放する意向を示していたこともあり、マヤオさんが3年前から旧知の建築家安田滋さん(61)らと設計や改装を進めた。築約100年の木造2階建て住宅の1階部分の居間などを展示用スペースに改造。梅棹さんが増改築の際に自ら張った床板をはじめ、大阪万博記念公園・自然文化園の設計で知られる風景造園家・吉村元男さん作の中庭、本棚が並ぶ回廊など旧邸のしつらえを残しつつ、キッチンや茶室を備えたギャラリーに生まれ変わらせた。
ギャラリーの名前は、梅棹さんが堪能だったエスペラント語で「集まり」を意味する「rondo」と「創造者」の「kreanto」を合わせ「ロンドクレアント」とした。マヤオさんは「父は常に、来る人拒まずだった。家に残る梅棹忠夫の手あかを大切に、急がず私たちのスタイルで改装を続け、人文や科学、芸術の垣根を越えて人が立ち寄り、刺激を与え合える場にしていければ」と話す。
29日から9月27日まで、梅棹さんが世界各地の調査で撮影した写真約50点を特別展示する。29日午後4時から石毛直道・元民博館長の記念講演もある。入場無料。原則月曜休み。問い合わせは同ギャラリーTEL075(286)7696。
【 2015年08月27日 11時50分 】