東京が壊滅する日 ― フクシマと日本の運命
【第12回】 2015年8月27日 広瀬 隆 [ノンフィクション作家]

なぜ、メルトダウン事故は、
半世紀以上「マル秘」にされたか?
――広瀬隆×堀潤対談<前篇>

『原子炉時限爆弾』で、福島第一原発事故を半年前に予言した、ノンフィクション作家の広瀬隆氏。
壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』が第4刷となった。
本連載シリーズ記事も累計145万ページビューを突破し、大きな話題となっている。
このたび、新著で「タイムリミットはあと1年しかない」とおそるべき予言をした著者が、「8bitNews」主宰者で元NHKアナウンサーの堀潤氏と初対談。
なぜ、アメリカのメルトダウン事故は、半世紀以上「マル秘」にされたか?
知られざる報道の真実に耳を傾けてみたい。
(構成:橋本淳司)

じつに事故50年後に明らかになった
高濃度放射能とは?

広瀬 隆(Takashi Hirose)
1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『資本主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。

広瀬 堀さんは2012年にアメリカで原子力の取材をされていたそうですね。

 2012~2013年までの1年間、ぼくはNHKに籍を置きながらUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に留学していました。ソーシャルメディアと放送の融合を研究しながら、原子力について取材していました。

広瀬 そうでしたか。知りませんでした。

 ロサンゼルスの北、車で50分くらい走ったところにあるシミバレーという山あいの町に、1959年にメルトダウン事故を起こした実験用原子炉がありました。その実験用原子炉の影響については、半世紀に渡って公開されてきませんでした。

広瀬 2012年に公聴会が開かれたサンタスザーナの野外実験用原子炉の事故ですね。

 そうです。地下に設置された原子炉が事故で空焚きになり、燃料棒十数本がメルトダウンし、そのまま放射性物質が拡散されました。

 1980年代に入って、ガン患者や体調不良の人が多いので、「ここで何かあったんじゃないか」と疑念を抱いた女性たちが運動を始め、いろいろな妨害を受けながらロビー活動を続けた結果、2009年、カリフォルニア州議会で問題の原因解明を図ることが決議されました。
 そして、EPA(米国環境保護局)が3年間調査を行い、その結果が、2012年に住民向けに公表されました。

堀 潤(Jun Hori) 元NHKアナウンサー、1977年生まれ。 2001年NHK入局。「ニュースウォッチ9」リポーターとして、おもに事件・事故・災害現場を取材し独自取材で他局を圧倒。2010年、経済ニュース番組「Bizスポ」キャスター。2012年、米国ロサンゼルスのUCLAで客員研究員、日米の原発メルトダウン事故を追ったドキュメンタリー映画「変身 Metamorphosis」を制作。2013年、NHKを退局しNPO法人「8bitNews」代表に。現在、TOKYO MX「モーニングCROSS」キャスター、J-WAVE「JAM THE WORLD」ナビゲーター、毎日新聞、「anan」などで連載中。2014年4月より淑徳大学客員教授。

広瀬 事故から50年以上経過してようやく、というニュースに私は驚きました。

自由に事実を伝えたい!
それでNHKを退職した

 米国環境保護局によると、サンタスザーナ野外原子炉実験所跡地では、最大でバックグラウンドレベルの1000倍を超えるセシウム137が検出されました。セシウム137は、291ヵ所から検出されており、影響は広範囲にわたりました。

 さらにストロンチウム90が●●当たり最大788ベクレルで通常の284倍。プルトニウム239/240は約7ベクレルで、通常の10倍という値が検出されました。
 50年以上たっての数値ですから、非常に深刻な事故だったとわかります。

広瀬 一帯の住民にどのような影響があったか、教えてください。

 シミバレーは周辺域の水源にもなっていました。住民は、放射能の汚染が河川や地下水にどの程度影響を与えるのか、飲み水や農業用水への汚染がどの程度高まっているのかなど説明を求めていましたが、米国環境保護局は「汚染実態の調査の説明会なので健康へのリスクに関して応えるデータを持っていない」と繰り返していました。

広瀬 私は日本でも水への影響がいちばん心配です。80万ページビュー(サイトの閲覧数)を突破した本連載第4回でも触れましたが、フクシマ原発から出たトリチウムの放出総量はまったく明らかにされていません。でも、これから多くの人の健康に影響を与えるはずです。

 ぼくはサンタスザーナのことを、日本の50年後を考えるうえで重要なモデルケースになるし、大事なテーマだと思って企画しました。
 しかし日本では、因果関係をアメリカ政府が認めないと、なかなかむずかしいことです。

広瀬 そんな因果関係をアメリカ政府が認めるわけがない。それでも警告を出すのがジャーナリストの責任ですよね。

 50年後の日本で健康被害が出ないことを願ってやみませんが、もし仮に何かあったときに「補償してほしい」と言っても、「原発事故が原因とは判断できない」と断られるのが関の山でしょう。だからサンタスザーナの教訓を学ぶべきと取材を重ねたのですが、結局、無理でした。

上映会を自由にやってみたい

広瀬 取材した映像はお蔵入りになったのですか?

 いえ、そうするわけにはいかないと映画にしました。
 1959年のスリーマイル、1979年のサンタスザーナ、2011年の福島、3つのメルトダウン事故をテーマにドキュメンタリー映画をつくりUCLAの専用シアターで発表しました。

広瀬 反響はどうでしたか?

 2回上映しても入りきれないくらい満杯になりました。そのとき週刊誌の『フライデー』(講談社)の記者も取材してくれまして、その記事に「市民上映会の企画」も紹介されたのですが、映像は私がNHK職員として撮ったものだから、自主的な上映会はできなかったです。

広瀬 えっ!

 民主主義を標榜する日本にあって、しかも民主主義の発展のためにジャーナリストになった自分ですから、どのような問題でも自由に伝えられるようにならなければならないと思って、ぼくはNHKを辞めることにしました。そして、自分でドキュメンタリー映画「変身 Metamorphosis」を制作したのです。

広瀬 そうでしたか。私も30年以上、一貫して原発問題に取り組んできましたが、1980年代までは、どこのテレビ局も原発問題を深く掘り下げてくれました。ディレクターの人たちも私に好意的で、内部の資料を「広瀬さんには見ておいてもらいたい」といって見せてくれたほどです。

 一方、私はアメリカなど海外から直接得た情報や、被害者の証言を伝え、お互いに事実を知るためには協力関係にありました。
 それが15年くらい前から、本当の問題を伝えなくなった。これは新聞、テレビ、雑誌はじめすべてのメディアに言えることです。

 もちろん広瀬隆なんて危険物扱いで、一切意見を言わせない。そういう中で起きたのがフクシマの事故です。異論を唱える人間の言葉を聞かないようにメディアが変わってしまった原因がなぜかわからないけれど、そういう中で堀さんのように、当たり前のことを言えるスターが出てきてくれたのはすごくうれしい。

 そう言っていただくとありがたいです。でも問題があるなら、そこに突っ込んで取材をし、課題を洗い出して解決するための知見を集める。ファクト(事実)の追及は当たり前のことなのに、原発の話になると途端に口を聞いてもらえなくなったり、思想が偏っていると思われたり、大変です。だからぼくも自由に活動して、ドキュメントを制作したくなったのです。

広瀬 堀さんが主宰している「8bitNews」という市民参加型メディアについてくわしく教えてください。

 市民参加型のメディアが必要だなと思ったのは、大手のマスメディアが取り扱えなくても、現場の市民がそれぞれ情報を打ち上げてくれればいい、と思ってのことです。

広瀬 堀さんはいま日本全国の方から情報を集めて、発信しているのですね。

 そうです。8bitNewsに、YouTubeにアップロードしたニュース映像を送ってもらいます。それをネットの中だけで終わらせるのではなく、ぼくがやりたいのは「パブリック・アクセス」つまり市民が公共の資源・財産にアクセスする権利、市民が自主的に番組づくりに参加する市民メディアなので、テレビやラジオ、ウェブニュースに配信するという環境をつくります。それがだんだん軌道に乗ってきたところです。

広瀬 その市民の動きは、明日への大きな希望ですよ。
(つづく)

なぜ、『東京が壊滅する日』を
緊急出版したのか――広瀬隆からのメッセージ

 このたび、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』を緊急出版した。

 現在、福島県内の子どもの甲状腺ガン発生率は平常時の70倍超
 2011年3~6月の放射性セシウムの月間降下物総量は「新宿が盛岡の6倍」、甲状腺癌を起こす放射性ヨウ素の月間降下物総量は「新宿が盛岡の100倍超」(文部科学省2011年11月25日公表値)という驚くべき数値になっている。

 東京を含む東日本地域住民の内部被曝は極めて深刻だ。
 映画俳優ジョン・ウェインの死を招いたアメリカのネバダ核実験(1951~57年で計97回)や、チェルノブイリ事故でも「事故後5年」から癌患者が急増。フクシマ原発事故から4年余りが経過した今、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』で描いたおそるべき史実とデータに向き合っておかねばならない。

 1951~57年に計97回行われたアメリカのネバダ大気中核実験では、核実験場から220キロ離れたセント・ジョージで大規模な癌発生事件が続出した。 220キロといえば、福島第一原発~東京駅、福島第一原発~釜石と同じ距離だ。

 核実験と原発事故は違うのでは?と思われがちだが、中身は同じ200種以上の放射性物質。福島第一原発の場合、3号機から猛毒物プルトニウムを含む放射性ガスが放出されている。これがセシウムよりはるかに危険度が高い
 3.11で地上に降った放射能総量は、ネバダ核実験場で大気中に放出されたそれより「2割」多いからだ。

 不気味な火山活動&地震発生の今、「残された時間」が本当にない。
 子どもたちを見殺しにしたまま、大人たちはこの事態を静観していいはずがない

 最大の汚染となった阿武隈川の河口は宮城県にあり、大量の汚染物が流れこんできた河川の終点の1つが、東京オリンピックで「トライアスロン」を予定する東京湾。世界人口の2割を占める中国も、東京を含む10都県の全食品を輸入停止し、数々の身体異常と白血病を含む癌の大量発生が日本人の体内で進んでいる今、オリンピックは本当に開けるのか?

 同時に、日本の原発から出るプルトニウムで核兵器がつくられている現実をイラン、イラク、トルコ、イスラエル、パキスタン、印中台韓、北朝鮮の最新事情にはじめて触れた。

51の【系図・図表と写真のリスト】をはじめとする壮大な史実とデータをぜひご覧いただきたい。

「世界中の地下人脈」「驚くべき史実と科学的データ」がおしみないタッチで迫ってくる戦後70年の不都合な真実!

 よろしければご一読いただけると幸いです。

<著者プロフィール>
広瀬 隆(Takashi Hirose)
1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『日本のゆくえ アジアのゆくえ』『資本主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。

 

堀 潤(Jun Hori)
元NHKアナウンサー、1977年生まれ。
2001年NHK入局。「ニュースウォッチ9」リポーターとして、おもに事件・事故・災害現場を取材し独自取材で他局を圧倒。2010年、経済ニュース番組「Bizスポ」キャスター。2012年、米国ロサンゼルスのUCLAで客員研究員、日米の原発メルトダウン事故を追ったドキュメンタリー映画「変身 Metamorphosis」を制作。2013年、NHKを退局しNPO法人「8bitNews」代表に。現在、TOKYO MX「モーニングCROSS」キャスター、J-WAVE「JAM THE WORLD」ナビゲーター、毎日新聞、「anan」などで連載中。2014年4月より淑徳大学客員教授。