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August 26, 2015

学会ドヤり系質問の傾向と対策

学会ドヤり系質問という言葉をご存知だろうか。

知らないのも無理はない。私が最近作った言葉だからだ。

「学会ドヤり系質問」とは、簡単にいえば、学会の質疑応答時にフロアから「ドヤ顔」でなされる質問である。つまり、「これは鋭い質問だ!、私は本質をついてるぞ!」ということをしたり顔で言っている質問である。

それだけならたいして問題はない。「ドヤ顔」で指摘せざるを得ない問題点もあるだろう。

しかし、「学会ドヤり系質問」にはもう2点ほど重要な(そして困った)要素を持っている。それは・・・

(1)きわめて定形化されているため誰でも簡単に言える

(2)実際はぜんぜん鋭くない、むしろ残念な質問である

という2点である。


学会ドヤり系質問のリスト

私は以前から、こういうくだらない質問群に苦々しい思いを抱いてきた。

そして、それ以上に、こういうくだらない質問で「自分辛口だ」と思い込んでいる大先生にも忸怩たる思いがあった。

ただ苦々しく思うだけでは癪なので、リスト化して院生や若手研究者の間にシェアしようと思う。

みなさんのタレコミもお待ちしております。(ポイントは「定型化されている」かつ「残念」の2点を満たすことです)



1. この研究に関心をもったきっかけは何でしょうか?

定形度 ★★★★★
残念度 ★☆☆☆☆

「研究のきっかけを問う」ということがなぜか高尚な質問だと思っている人がいるようだが、実際、情報量はたいして増えない。ただ、かならずしも批判意図があるわけではなく純粋好奇心から聞いている場合も多いので、残念度は星ひとつに抑えた。


2. これは一体誰に向けて行っている研究ですか?

定形度 ★★★★☆
残念度 ★★★☆☆

要は「研究の想定読者がわからない」という批判だが、定形表現化しつつあるため「難しくてよくわからなかった」という不満感を粉飾するためにも使われる。

ただし、想定読者がほんとうにわからない「小学校自由研究」みたいな研究もあるので、そこはやっかいである。



3. この研究の教育示唆は何か?

定形度 ★★★★★
残念度 ★★☆☆☆

教育系の学会ではしばしば使われる決まり文句。要は「教育の何の役に立つの?」という質問である。私などは「教育研究の役に立つ」という学術的意義だけでも十分だと思うのだが、なぜか一部の教育研究者は「学校現場の役に立つ」じゃないと納得しない人がいる。

定形度が高いので、それを真似して院生や学部生まで言うので困りもの

ただし、これも正当な問いである場合もあるのでそこが厄介である。


4. あなたの発表は過去の事例(orデータ)を分析したに過ぎない。しかし、教育は未来をつくる仕事である。

定形度 ★★☆☆☆
残念度 ★★★★★

「未来をつくる」という美辞麗句に乗せられて、思わず「ドヤ顔」になってしまったパターン。学会において「未来」のようなキラキラワードは使わないほうがいいと思う。

私たちはみなひとりの例外もなく未来を考えるために常に過去を参照している。古いデータについてその妥当性を問うならともかく、単に過去に未来を対置することは何の意味もない。



5. あなたの発表は数値を分析したに過ぎない。しかし、教育は子ども幸せを考える仕事である。

定形度 ★★☆☆☆
残念度 ★★★★★

これも「子どものしあわせ」という美辞麗句に駆動された「ドヤ顔」質問。概念規定をしないのなら「幸せ」のようなキラキラワードは使わないほうがいいと思う。(ただし、きちんと概念規定をするのであれば、むしろどんどん使うべし)



対処

「学会ドヤり系質問」への対処を考える。

プレゼン予防線を貼っておくのもひとつの方法だが、そんなくだらない質問にわざわざ貴重な時間を割くのも悔しいので、最近の私は以下のような「ご静聴感謝スライドを用意することで対処している。

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