2015年8月26日23時36分
26日に国会内で行われた武藤貴也衆院議員の記者会見は以下の通り。
【冒頭発言】
●騒動へのおわび
8月19日発売の週刊誌に、新規公開株に関する記事が掲載されました。本件をめぐる事実関係については後述いたしますが、まず今回の件につき、これまで私を支援していただいてきました地元の滋賀のみなさま、また今回ご迷惑やご心配をおかけしましたすべてのみなさまに心からおわびを申し上げたいと思います。
関係各位より、本件につきまして自分自身の言葉でより詳しい事実関係を説明すべきではないかというお声を多数ちょうだいいたしました。私としてもこの記事が出た瞬間に、記事には書かれていない真実を公開しようと思っていました。
しかし、自民党に籍を置く政治家として、またいま安保法案の参院審議中という微妙な時期において、私個人の判断でそのようなことをすることはできませんでした。
党と協議のうえ、世間をお騒がせし、また法案審議に余計な負担をかけたことに対するけじめとして、正式に離党手続きが進みましたので、改めて一個人として本件についてご説明をさせていただきたいと思います。
●株取引をめぐる経緯説明
まず今回のことについて少しさかのぼって経緯を申しあげます。この問題は先日発売された週刊文春の情報源とされる私の後輩、A氏が私や私の知人から預かったお金をすべて失ってしまったところから始まりました。
彼は以前から事業資金を各方面から集めており、私にも実際、A氏の申し出があり、平成24年の12月から私個人の資金を最初は500万円から始まり、数年間の累積で非常に多くの額ではありますが、4千万円も預けるに至りました。これは私がいままで選挙や政治活動のためにと思い、個人でためていたすべての資金でございます。
しかし、実際、私がA氏に預けた資金はこれだけではありませんでした。知人から預けられた3千万円、さらに彼に懇願され、私の親から預かった3千万円、数年での累積ですが、それらは合計で約1億円にものぼりました。
私がなぜこのような非常に大きな資金をA氏に託したのか、当然疑問に思われる方も多くおられると思います。実はA氏と私は学生時代から約10年の付き合いがありました。いつも食事をしたり、お互いの家に泊まったりして、政治家になる夢を語りあった同志だったと言っても過言ではありません。
若い頃から築き上げてきた信頼関係ですので、当然お金とは無縁の本当に心を許せる後輩であり、友人であると思っていました。
ところが、私が当選をした後、A氏の心の中で何かが変わってしまったのかもしれません。A氏が突然、私のために「資金を作りたい。武藤さんを自分の生命保険の受取人にしてもよいので、信頼して事業資金を預けて欲しい」とまで言ってきました。
私は当時、A氏のことを完全に信頼し切っていましたので、当然政治資金も必要だという思いもあり、しっかりとした調査もせずにA氏の要求する金額を預けていきました。もちろん、いまとなっては若い頃の友人関係の延長でA氏を信頼し切っていた私の人間的甘さが間違っていたと心から反省をしております。
ちなみにA氏の言う事業の内容は有名ブランド品の売買でした。A氏いわく「世界でも高値で取引されているブランドを中心に、売り先と買い先が決まっているもののみを転売して利ざやを稼ぐビジネスに資金を使う、ブランド品だけに値崩れの心配はなく、リスクもゼロ」との説明でした。
しかし、平成24年の暮れから資金を渡してほどなく、「天候の影響で商品の売買が遅れ、そのため穴があいたからそれを埋めるためのさらなる資金が必要だ」、あるいは「銀行口座がロックされてしまったため、その代わりとなる資金が必要だ」などと言って、さらなる資金を工面して欲しいと言ってきました。
私は「元々預けた事業資金もなくなる」と言われ、それは困ると思い、各方面、自分の責任の持てる範囲で幾度となく資金を工面しました。最後に資金を渡したのは平成26年10月初旬でした。私に「これで最後です、これですべてうまくいくようになるので、何とか信用してお金を工面して欲しい」と言ってきました。
私は何度も「本当に大丈夫か」と確認し、これですべてがうまくいくようになるなら、と思い、「本当に最後だ」と言って仕方なく苦労してお金を作り、1千万円を預けました。
しかし、後からほかの被害者の方々からもお聞きして分かったことですが、最初からA氏の事業の実態はほとんどなく、私が最後に渡した1千万円でさえ、事業に1円も使うことなく、ビジネスパートナーと呼ばれる女性に横流しされ、他の方の配当か返済にすべて回してしまったようであります。
これは後にA氏本人から聞きました。これらの資金は事業に使うと言って集められ、その事業に使われていなかったのです。
それからこれも後に分かったことですが、A氏は私だけではなく、私の秘書にもこの事業の話を持ちかけていました。私が信頼し切っていたことが、秘書もA氏を信頼した理由だと思いますが、秘書もA氏に知人のものと合わせてこちらも非常に大きな額ですが、約4千万円もの資金を預けてしまっていたと聞いています。
結局A氏は最終的に事業に失敗し、お金は返せなくなったと言ってきました。私や私の知人、秘書などから預かったお金を「すべて失ってしまった」と言うのです。これには本当に困り果てました。
そんな状況の中で、非常に困っていた昨年の10月下旬、私の秘書が知人Bから「値上がりしそうな株があるので、資金をなくしてしまったのなら、この株を購入して穴埋めしてはどうか、枠は押さえている」という話を聞いてきました。一般公募入札で得意顧客のために押さえられている特別な枠があるとの説明でした。
私は株の取引をしたことがなかったので、再度秘書を通じて知人Bに確認いたしましたが、知人Bは「その株は必ず購入できる」と言ったとの報告を受けました。そこで私の信頼している秘書が間に入っていたこともあり、その話を真に受けてしまい、私が預けたお金を失ったA氏に「この株を購入して私が預けたお金の返済に回してはどうか、必ず買えるみたいなので」という提案をしました。
このとき私はまだ何とか、A氏に金銭問題を解決してほしいと考えていたのです。A氏にはとっくに裏切られていたにもかかわらず、どこまでお人よしなのだと批判されても仕方がないと思っています。
お金に困窮していたA氏は私の話を受け、前向きに検討をし始めました。株式購入について取得した株の売却時期や利益が出た場合に支払うべき税金等を何度か問い合わせてきました。
しかし、私は株の取引について詳しいことは分からなかったので、直接、話を持ってきた私の秘書と話すように伝えました。ちなみにA氏はこの話を持ってきた秘書の知人Bからも資金を預かっていたようで、A氏から「誰の紹介ですか」と私が聞かれた際、「B氏からの話です」と告げたところ、「なんだBさんですか、良い話を持ってきますね」と言ったことを記憶しています。
週刊誌の記事によれば、A氏は「国会議員からの話だから信用した」という証言をしていますが、実際この話はB氏からのものだということをA氏は知っていたので、国会議員だから信用したという話は事実と異なると思います。そしてその後、検討の結果、A氏は株式購入のための資金を準備するということでした。
週刊誌の記事では私が指示して集金させたかのように書かれていましたが、事実はA氏自身の判断で株式購入をするために、ご自身で資金を準備したことがお分かりいただけると思います。
またこの際のやりとりの中で、私はA氏が私の名前を使い、国会議員のために枠を押さえているという話をしながら、資金作りをするといけないと思ったので、「そのようなことが絶対にないようくれぐれも注意して下さい」と付言しました。
当然ですが、公募の様式であり、知人Bが特別に枠を押さえているだけで、国会議員のために押さえている枠ではないからです。
ちなみにA氏はB氏からも資金を預かっていましたので、直接お互いを知っており、株の枠については私ではなく、B氏が押さえているという認識があったと思われます。
今回の報道において、私が一度も使用していない「国会議員枠」という言葉が独り歩きしておりますが、おそらくこのときのA氏のやりとりを切り取りしたものと思われます。
再度、申し上げますが、私はあくまで、「事実と異なりますので、国会議員が枠を押さえているなどという表現は困る」という意味でA氏に伝えておりました。
この部分の表現につきまして説明が必要という方がおられます。これはもともと個人的なやりとりであったので、誤字脱字も含めて、確かに不正確、乱雑なところがあったかもしれません。その点も反省をしなければならないと思っています。
その後、株購入の手続きは私の秘書と知人が行っていたので、細かくは把握しておりませんが、A氏は新たな資金を預かったり、借り受けたりして資金を作ったようです。
そして秘書の口座を利用したという点が、たくさんの方からご指摘がなされていますが、A氏からは自分の口座が裁判所から仮差し押さえされていること、またA氏自身がブラックリストに載っているため、証券口座が作れないなどという話がありましたので、秘書の口座を利用することになったと聞いております。
このとき、秘書の口座に資金を振り込んだ方々については、A氏の指示で振り込んだ方々であり、私は、また私の秘書もその金額、あるいは振り込んだ方々のお名前や人数についてもまったく存じ上げませんでした。
そしてその後、平成26年11月、秘書の口座にある資金で、株式の一般公募に応募したのですが、B氏から「確かに購入できる」と言われていた株が、結局購入できませんでした。その理由については、秘書を通じて何度もB氏に問い合わせましたが、合理的な説明はありませんでした。その後、秘書の口座に入金された資金を元の方々にすぐ戻すように指示をいたしました。
なお報道で秘書が口座に入金されたお金の一部を自分の債権者への返済に回したとの記事がありましたが、現在すべての方に返金が済んだとの報告を受けています。ここまでが本件に関する経緯の詳細です。
●今後の対応について
次に今後についてお話しいたします。A氏とそのビジネスパートナーの女性に対して、本年2月ぐらいからすでに民事訴訟を提訴していましたが、それに加えて刑事告訴についても現在準備を進めております。本件に関連した一連の事件に、法の裁きが必要だと考え、私自身も何も隠すことなく、法廷ですべてを明らかにしたいと思います。
●自民党離党の決断について
最後に私が離党という決断をしたことについてご説明申しあげます。7月30日、私がツイッターでのコメントを出して以来、私の言動がたびたび国会で取り上げられるようになり、しまいには初当選前にブログで書いた日本国憲法に関する記事まで用いて政府が野党に追及されるという事態にまで発展いたしました。
平和安全法制が国会で審議されている重要な局面で、私の個人的、プライベートなことが政争の具になるのを見ていられず、これ以上、党に迷惑はかけられないと判断し、離党を決断させていただきました。
これまで私を支援していただいた地元滋賀4区、滋賀県のみなさま、またこれまでご迷惑、ご心配をおかけいたしました全ての皆様にあらためて心からおわびを申し上げるとともに、長くつきあってきた後輩とはいえ、完全に信用してしまった私自身の人間的な甘さを心から反省し、失った信頼を取り戻すため、今後も努力してまいりたいと考えております。
若輩者の私ではございますが、みなさまにおかれましては引き続き、ご指導、ご鞭撻(べんたつ)をたまわりますようお願いを申しあげます。
【質疑応答】
――株式購入の枠について「国会議員のために作られている」という認識だったのでしょうか。
先ほども申しあげましたように、国会議員枠というものが存在していたという認識は当時からもございませんでした。私がA氏に対して「国会議員が枠を押さえているということを言って、資金集めをしては事実と異なるので、そのような表現を使ったり、私の名前を使いながら資金作りをしないようにくれぐれも注意するように」ということで、A氏に伝えていました。
そのことが誤解を招いてしまって、国会議員枠というものが存在をして、それを秘匿するかのような表現というふうに受け取られたのではないかと思います。
――「LINE(ライン)」のやりとりの中では「国会議員のために枠を押さえてあることが一般に知られたら大変」とあります。国会議員のために便宜を図ってもらっているという枠があるとの認識があったのではないですか。
ご覧になったラインで、私が国会議員のために枠を押さえていると言ったのは一カ所だけだと思います。確かに記述は信頼している友人だったので、乱雑や誤解を招くような表現だったと思いますが、私の真意は一般に「国会議員のために枠を押さえていると誤解してしまったら大変だ」というような意味合いで申しあげました。言葉が乱雑、あるいは誤解をまねく表現だったことは大変反省しなければならないし、申し訳なく思っています。
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