第1回「寮がなくても選手は育つ」専大松戸
以前、このコラムで、日大三(西東京)と聖光学院(福島)の寮を紹介しましたが、さて全国を見るとどうでしょう。寮のない学校がほとんどなのでは? 寮で24時間管理ができ、朝早くから夜遅くまで練習ができる環境のチームと、決められた数時間だけの練習のチーム。同じ土俵で戦うための努力、工夫とは――。今年、春季千葉県大会で2連覇、昨年夏は県大会決勝進出を果たした専修大学松戸高校(千葉)の取り組みを取材しました。
夕方4時30分。校舎からバスで約20分。グラウンドに到着したスクールバスから練習着に着替えた選手たちが次々と降りてきました。テキパキと動く選手たちは、荷物を部室に置くとグラウンドへ。すぐにアップから練習が始まりました。
専大松戸の野球部には寮がありません。練習時間は、夜7時30分までの約3時間。しかし、全体練習が終わったあと、誰1人として帰る選手はいません。バッティングをする選手、守備練習をする選手、走塁練習をする選手。それぞれが個々の課題に取り組み、終わ
るのは夜9時を過ぎることも。
「自主練習では、自分に足りないこと、全体練習でできなかったことに取り組んで、翌日までにはできるようにする、と自分たちで決めているんです。監督さんもあえて自主練習の時間を与えてくれるので、自分たちもその時間を大事にしています」(河村佳祐選手・捕手・3年)
とはいえ、甲子園出場を目指すチームの監督としては、1分1秒でも長く練習をして選手を指導したいと思うのでは?
「規制した練習では伸びないと思うんです。チームプレーに関しては全体での練習が必要。でも、それ以外は個人の練習で。ある程度、悪い状態をチェックして課題を与え、あとは個々でそれを伸ばす練習をすればいい。そういう意識づけ、環境を作ってあげれば、全体練習が短くてもいいと思うんです」(持丸修一監督)
例えば、カバーリング、けん制など、全体が1つのボールに対して動くプレーに対しては全体練習でしかできない。これには、妥協を許さずにできるまで徹底して時間を使う。しかし、打つ、投げることに関しては個人でも練習はできる、というわけです。全体のバッティング練習でも、チームの意識はちょっと違います。ポイントは打った打たないではなく、打ち方と場面に応じたバッティングができているかをチェックするのだそう。全体練習でできない選手がいれば「もういい! 出ろ!」と、すぐに持丸監督のげきが飛びます。選手たちにしてみれば、一切手抜きはできない。スキを作ったら負ける。毎日が勝負なのです。
「寮の良さも、もちろんわかります。いつでも集められるから指導者としては選手の全時間をつかえる。でも、うちは練習時間しかつかえない。でもね、3時間でもつかえたら最高じゃないですか。野球をやるための3時間を作って、自主的に直そうという時間を1時間作ることができれば十分だと思うんです」(持丸監督)
3時間を、短いと思うか、長いと思うか。それは、意識づけひとつで、変わってくるというものです。
夕方4時30分。校舎からバスで約20分。グラウンドに到着したスクールバスから練習着に着替えた選手たちが次々と降りてきました。テキパキと動く選手たちは、荷物を部室に置くとグラウンドへ。すぐにアップから練習が始まりました。
専大松戸の野球部には寮がありません。練習時間は、夜7時30分までの約3時間。しかし、全体練習が終わったあと、誰1人として帰る選手はいません。バッティングをする選手、守備練習をする選手、走塁練習をする選手。それぞれが個々の課題に取り組み、終わ
るのは夜9時を過ぎることも。
「自主練習では、自分に足りないこと、全体練習でできなかったことに取り組んで、翌日までにはできるようにする、と自分たちで決めているんです。監督さんもあえて自主練習の時間を与えてくれるので、自分たちもその時間を大事にしています」(河村佳祐選手・捕手・3年)
とはいえ、甲子園出場を目指すチームの監督としては、1分1秒でも長く練習をして選手を指導したいと思うのでは?
「規制した練習では伸びないと思うんです。チームプレーに関しては全体での練習が必要。でも、それ以外は個人の練習で。ある程度、悪い状態をチェックして課題を与え、あとは個々でそれを伸ばす練習をすればいい。そういう意識づけ、環境を作ってあげれば、全体練習が短くてもいいと思うんです」(持丸修一監督)
例えば、カバーリング、けん制など、全体が1つのボールに対して動くプレーに対しては全体練習でしかできない。これには、妥協を許さずにできるまで徹底して時間を使う。しかし、打つ、投げることに関しては個人でも練習はできる、というわけです。全体のバッティング練習でも、チームの意識はちょっと違います。ポイントは打った打たないではなく、打ち方と場面に応じたバッティングができているかをチェックするのだそう。全体練習でできない選手がいれば「もういい! 出ろ!」と、すぐに持丸監督のげきが飛びます。選手たちにしてみれば、一切手抜きはできない。スキを作ったら負ける。毎日が勝負なのです。
「寮の良さも、もちろんわかります。いつでも集められるから指導者としては選手の全時間をつかえる。でも、うちは練習時間しかつかえない。でもね、3時間でもつかえたら最高じゃないですか。野球をやるための3時間を作って、自主的に直そうという時間を1時間作ることができれば十分だと思うんです」(持丸監督)
3時間を、短いと思うか、長いと思うか。それは、意識づけひとつで、変わってくるというものです。
持丸修一監督と言えば、竜ケ崎一、藤代、そして常総学院(いずれも茨城)で指揮を執り、通算7度、甲子園に出場。藤代で美馬学選手(楽天・投手)、上沢直之選手(日本ハム・投手)を育て、その指導には定評のある監督です。そんな持丸監督も、専大松戸監督に就任した08年当時はその「意識づけ」には苦労したと言います。1つ1つ、練習のやり方から教え、気を抜くところを作らない。時には身の入らない練習があれば、1日、練習をミーティングだけにあて、徹底的に話をしたこともあるそう。
「私たちが教えられるのは、知識だけ。その知識を知恵にして自分のものにできるのか。一生懸命やるのは誰でもできる。でも、それだけではレギュラーにはなれない。どういう意識で、方向性で取り組んで結果を出すか。それを考えなさい、と言うことです」(持丸監督)
「意識づけ」した上で、考えて取り組む。そこに、自主性も生まれるのでしょう。
「数少ない中でいかに集中してやるか。時間があれば振り込めるのですが、寮がないのでそういうことができない。練習の1球も試合の1球のように打つことを意識しています。みんなでこのボール大事だぞって声をかけたりして。お互い意識をしてやっています」(河村君)
なるほど、ちゃんと選手たちの中には「意識づけ」ができているんですね。でも…寮があったらもっと練習ができるのに…なんて思ったことはない?
「あります。でも、寮がないのもやり方ひとつで強みになると思うんです。今では、1球に対する強さは誰にも負けない。その自信はあります」(岡本君)
「私たちが教えられるのは、知識だけ。その知識を知恵にして自分のものにできるのか。一生懸命やるのは誰でもできる。でも、それだけではレギュラーにはなれない。どういう意識で、方向性で取り組んで結果を出すか。それを考えなさい、と言うことです」(持丸監督)
「意識づけ」した上で、考えて取り組む。そこに、自主性も生まれるのでしょう。
「数少ない中でいかに集中してやるか。時間があれば振り込めるのですが、寮がないのでそういうことができない。練習の1球も試合の1球のように打つことを意識しています。みんなでこのボール大事だぞって声をかけたりして。お互い意識をしてやっています」(河村君)
なるほど、ちゃんと選手たちの中には「意識づけ」ができているんですね。でも…寮があったらもっと練習ができるのに…なんて思ったことはない?
「あります。でも、寮がないのもやり方ひとつで強みになると思うんです。今では、1球に対する強さは誰にも負けない。その自信はあります」(岡本君)
例えば、こんな短い練習時間のチームが寮が完備され夜遅くまで練習しているチームに甲子園で勝ったとしたら? これほどうれしい勝利はないはず!
「実社会でもそうでしょう。どの世界でも平等はあり得ない。そんな競争社会でいかに勝ち残っていくか。その方法を教えていったらいいんです」(持丸監督)
寮がなくても、練習時間が短くても、試合に勝つことで自身の成長を実感し、“野球っておもしろい、楽しい!”そう感じること。それが、人生の勉強になる――“教育”というわけです。
「監督さんがきっかけを作ってくれて、自分たちで考えて試合を展開させていくのがやっていておもしろいんです」(岡本君)
「僕たちは、見ている人がワクワクドキドキするような野球を目指しています!」(河村君)
選手の意識の統一と練習の徹底。甲子園に出場できるのはほんのわずかの学校です。でも、その甲子園を目指す中で、寮がなくても、短い練習時間でも選手はたくましく成長する。そんな選手たちの夏への挑戦が、ますます楽しみになってきました!
「実社会でもそうでしょう。どの世界でも平等はあり得ない。そんな競争社会でいかに勝ち残っていくか。その方法を教えていったらいいんです」(持丸監督)
寮がなくても、練習時間が短くても、試合に勝つことで自身の成長を実感し、“野球っておもしろい、楽しい!”そう感じること。それが、人生の勉強になる――“教育”というわけです。
「監督さんがきっかけを作ってくれて、自分たちで考えて試合を展開させていくのがやっていておもしろいんです」(岡本君)
「僕たちは、見ている人がワクワクドキドキするような野球を目指しています!」(河村君)
選手の意識の統一と練習の徹底。甲子園に出場できるのはほんのわずかの学校です。でも、その甲子園を目指す中で、寮がなくても、短い練習時間でも選手はたくましく成長する。そんな選手たちの夏への挑戦が、ますます楽しみになってきました!