2.
「数ある統計学の問題のなかでも、因果推論は
最も重要で、最も捉えがたく、そして最も無視
されてきたものの一つである」
ー P. Dawid (1979)
3.
科学的主張、その要件
1. 有意味
o その主張が真(ないし偽)になるのはどのような状況であるのか
が明確でなければならない
o ☓ 「天秤座の今日のラッキーカラーは紫色です」
2. 検証可能
o 実際に上の状況を経験的データによって確証できるのでなければ
ならない
o ☓ 「この宇宙のどこかにIQ100以上のカタツムリがいる」
4.
因果的主張、その要件
1. 有意味
o 「XはYの原因である」:この主張はいつ・いかなる条件下において
真(ないし偽)とされるのか?
o 因果命題の真理条件 (truth condition)の策定
2. 検証可能
o 上述の条件は、実際にどのようなデータ・経験によって評価・検証
されるのか?
因果の 意味論
因果の 認識論
因果概念はこの両局面
において問題視されてきた
13.
因果から確率へ
• じゃあ何が有意味で科学的なのか?
o Pearsonの答え: 相関係数
o Associationという概念に明確な意味を与える
(因果性と違って、「恒常的連接」にはちゃんとした
意味論がある!)
14.
規則説:まとめ
• 「因果力」概念の否定
o 認識論的に:そんなものは見つからない (Hume)
o 意味論的に:そんなものは無意味 (Pearson)
• 因果性 = 恒常的連接
o 認識論的に:それが観察できることの全て (Hume)
o 意味論的に:相関だけが明確な意味を持つ (Pearson)
21.
問題と対策
• 反事実条件アプローチの問題:
o 「仮にC (~C)だったらE (~E)だっただろう」
o どのようにして実現されていない可能世界のことを知るのか?
• 提案
o 実際にそうした可能世界を作り上げてしまえば良い
o → Cに介入して、それに応じてEがどう変わるかを調べる
22.
介入主義因果:定義
Pearl (2000), Woodward (2003)
C が E の原因である if
Cに対するなんらかの介入によって、
Eの確率分布を変化させることができる
C E
P(E)
I
do(C = c’) ≠ P(E|do(C=c’))
?
23.
因果モデル意味論
• 因果モデル: M = < G, P >
o G = <V, E> は変数 V 上の有向グラフ
o P は V 上の確率分布
• 介入 = 因果グラフGの改変
o 介入後の分布は改変グラフ G’ ともともとの確率分布 P
から計算可能。 (Spirtes et alの操作定理, Pearlのdo計算)
26.
因果効果の推定
• XのYに対する因果効果
o これは一般に とは異なる(交絡)
• 因果効果の推定
o do 計算 (Pearl), 操作定理 (Spirtes et al.)
o 傾向スコア分析 (Rosenbaum & Rubin)
27.
因果構造の推論
• 条件付独立性を使用するもの
o PC, IC*アルゴリズムなど
o (マルコフ条件 +) 忠実性(faithfulness/stability )を仮定
o 欠点:特殊な三つ組構造(unshielded-collider)のもとでしか
因果の向きを決定できない
• 二変数間の因果の向きの推論
o 午後のお話
28.
まとめ:因果グラフ理論
• 因果の意味論だけでなく、認識論も提供
o 因果効果の量的推定 (do calculus, Rubin’s framework)
o 因果構造の質的推論 (因果探索アルゴリズム、その他)
o → 因果的主張をデータに基づき検証する枠組みを与える
31.
経験論 vs 合理論
• 経験論(Empiricism)
o 我々の知識はすべからく経験に由来しなければならない
o 17世紀イギリス経験論:Locke, Berkeley, Hume
• 合理論(Rationalism)
o 経験に由来しない知識も、世界の理解のためには必要
o 17世紀〜大陸哲学:デカルトの神、カントのカテゴリー
32.
実証主義 (Positivism. 19世紀後半. Mach, Duhem, Pearson)
o 「科学理論は最終的にはすべて感覚データに還元される」
経験主義の歴史
経験主義 (17世紀. Locke, Berkeley, Hume)
o 「我々の知識はすべからく経験に由来しなければならない」
論理実証主義 (Logical positivism. 20世紀初頭. Carnap etc.)
o 実証主義のアイデアを論理学&確率論を用いて遂行
o 科学と形而上学の線引き
33.
経験主義の枠組み
• 基本概念
o 知覚、感覚データ、出来事、標本(の集合)
• 科学の目的
o 予測ないし「思考の経済」
• 方法/道具立て
o 述語論理(Frege, Russell)
o 確率論(Kolmogorov)
経験主義
「パラダイム」
39.
参考文献
• 規則説
o Hume, D. (1748). An Enquiry Concerning Human Understanding.
o Pearson, K. (1892). The grammar of science. W. Scott.
• 反事実条件説
o Lewis, D. (1973). Causation. The Journal of Philosophy, 70(17), 556–567.
• 介入主義
o Pearl, J. (2000). Causality: Models, Reasoning, and Inference. CUP,
o Spirtes, P., Glymour, C., & Scheines, R. (2000). Causation, Prediction, and Search. The MIT
Press.
o Woodward, J. B. (2003). Making Things Happen: A Theory of Causal Explanation. OUP.
• パラダイム論
o Kuhn, T. S. (1962). The Structure of Scientific Revolutions. U. Chicago Press
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