自撮り棒:広がる規制…撮影に熱中、トラブルも

毎日新聞 2015年08月26日 14時30分(最終更新 08月26日 14時38分)

自分を撮影するための器具「自撮り棒」。先端にスマートフォンなどを付けて使う=福岡市中央区天神の天神ロフトで、志村一也撮影
自分を撮影するための器具「自撮り棒」。先端にスマートフォンなどを付けて使う=福岡市中央区天神の天神ロフトで、志村一也撮影
自撮り棒使用禁止の看板を掲示する沖縄美ら海水族館=同水族館提供
自撮り棒使用禁止の看板を掲示する沖縄美ら海水族館=同水族館提供

 スマートフォンなどで自分を撮影するための器具「自撮り棒」の使用をイベントや観光施設で禁止する動きが広がっている。撮影に熱中すると、周囲の人にぶつかるなど迷惑をかけるためだ。若者を中心に利用者が増えているものの、規制していない施設では立ち入り禁止区域に自撮り棒を伸ばす客も現れるなど、マナーの悪さに関係者は頭を悩ませている。

 今月15、16日に千葉市や大阪市で開かれた音楽フェスティバル「サマーソニック2015」。国内外から多数のアーティストが参加し、昨年は約16万人が詰めかけた人気イベントで、今年から自撮り棒の使用を禁止した。主催する企画会社の担当者は「周りのお客さんに迷惑になりかねず危ない。何かが起こる前に規制した」と説明する。

 札幌市で6月にあった「YOSAKOIソーラン祭り」でも、観覧席など人の密集した場所で自撮り棒を使うことをやめるようガイドブックに盛り込んだ。福岡県久留米市で今月3、4日に開かれた夏祭り「水の祭典」でも使用が禁じられた。

 水族館やテーマパークにも規制が広がる。「沖縄美(ちゅ)ら海水族館」(沖縄県本部町)では自撮り棒を使うアジア系外国人が多くなり、「これまでトラブルはなかったが、予防のため」として5月の連休から館の入り口などにハングルなどで禁止を知らせるポスターを掲示している。

 規制していない施設でも、トラブルになりそうな場合は口頭で注意している。

 テーマパーク「福岡アンパンマンこどもミュージアムinモール」(福岡市博多区)によると、立ち入り禁止場所にいて近づけないキャラクターと写真におさまりたい一心で、自撮り棒を禁止場所に伸ばすケースがあった。キャラクターと自分たちだけで撮影しようと、周囲にいる子供たちを追い払おうとするグループも現れているといい、トラブルが予想される場合には職員がマナー向上を呼びかけている。

 太宰府天満宮(福岡県)では自撮り棒を使う中国人や韓国人が目立ち、福岡市から来た男性会社員(41)は「混雑する中で道をふさぐなどして撮影しており、迷惑だ」と怒る。

 一方、自撮り棒の人気は高いようだ。雑貨店「天神ロフト」(福岡市中央区)では6種類の商品をそろえる。昨年10月から販売を始め、購入者は10代〜20代前半の若者が中心。担当者は「フェイスブックなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の利用者が増え、写真を投稿するために自撮りしている」とヒットの背景を説明した。【宗岡敬介】

 ◇自撮り棒◇

 先端にスマートフォンやカメラを固定できる撮影の補助器具。伸縮式の金属製の棒で、伸ばすと約1メートルになり、値段は数千円程度。他人に頼まず1人でも背景に観光スポットを入れたり、大人数を1枚に収めたりして撮影できる。韓流アイドルが利用したことなどからヒットした。

最新写真特集