ハンター氏は視覚効果のスペシャリストでハリウッドでも有数のVFXスタジオ、New Deal Studios(ニューディール・スタジオ)の共同設立者。「ブレードランナー ファイナル・カット
■クリストファー・ノーラン監督の求めるリアリズム
「ノーランとの仕事では常に挑戦を求められます。彼は難しいショットをうまく撮るためにスタッフに激務を課すことも厭いません」(ハンター氏)
最初の選択は実写、次に本物に近いミニチュア撮影、そして最後の手段としてCGを使う。CGを使う際は、物語がウソっぽく映らないようにリアルさを追求する。ノーラン監督がCGに求めるのは、物語をより伝えることの出来る現実味のある映像であり、視覚効果はストーリーテリングの一部だとハンター氏は語る。
「ノーラン監督には信念があります。全作品に共通しますが、視覚効果を使う場合、一連の流れをまず映像に収めさせるのです。そこから物語に必要な部分を切り取って編集します。手法は毎回違っていても、その点は昔から変わりません」(ハンター氏)
■ノーラン監督の仕事が結実した「インターステラー」
映画「インターステラ―」(原題:Interstellar)
2014年/アメリカ映画/英語/169分
dir:クリストファー・ノーラン|ex pr:ジョーダン・ゴールドバーグ|pr:エマ・トーマス、クリストファー・ノーラン、リンダ・オブスト|VFX:イアン・ハンター
配給:ワーナー・ブラザーズ映画
2014年/アメリカ映画/英語/169分
dir:クリストファー・ノーラン|ex pr:ジョーダン・ゴールドバーグ|pr:エマ・トーマス、クリストファー・ノーラン、リンダ・オブスト|VFX:イアン・ハンター
配給:ワーナー・ブラザーズ映画
デジタル技術が台頭し、セットを組まずにグリーンバックで撮ることが主流になった今、「インターステラー」ではグリーンバックを一切使用していない。できる限り実物をフィルムに収めるために、アイスランドでロケを行い、その映像を惑星の景色に仕上げ、その景色をプロジェクタで投影したセットで、役者は演じている。観客が心を奪われ、その大きなうねりに身を委ねる圧巻の映像は、マシュー・マコノヒーをはじめとする役者の魅力を味方につけ、実際に撮影した素材を合成することで表現出来たものだとハンター氏は語る。
「頭のなかにある映像を、言葉にできる監督との仕事はいつも楽しいです。すべては監督のビジョン次第なのです」(ハンター氏)
エンデュランス(左上/下)、レインジャー(右上/下)。これにランダーを加えた3つの宇宙船をハンター氏が設計した(「インターステラー」より)。
■大切なのは技術者のスキルではなく、アーティストとしての表現力
「ある映画の脚本を読んでいるときに、質問に対してまったく答えられない監督がいました。監督なのに映像が見えていないのかと、ショックを受けましたね。正しいか正しくないかは別として、私はそうやって脚本を読むようにしています」とハンター氏は言う。
監督は自らのプランを言語化し周囲へ伝えるためにも、映画制作技術を把握しておかなければならない。それがアーティストとしての成長につながるというのが、ハンター氏の見方だ。
ハンター氏がスタジオを設立したのは1995年。仕事を始めた頃はまだ、デジタル合成もなく、MAYA CGIアニメーションもなく、その頃に比べると技術は圧倒的に進歩したという。安価なソフトウェアで人も世界も宇宙船も、ゼロから作り出すことができる。ここでハンター氏が問うのは、”問題はそれを作ることが可能かどうかではなく、それをどのように表現するのか“という点。つまり大切なのは、技術者のスキルではなくアーティストとしての表現力なのだ。
SSFF & ASIAのサイトでは今回紹介したセミナーPart1のほか、Part2(「ダークナイト」「インセプション」「ダークナイト ライジング」について)、Part3(「インターステラー」について)も配信中なので、ぜひ併せてご覧いただきたい!
ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)
1999年に誕生した米国アカデミー賞公認、アジア最大級の国際短編映画祭。俳優の別所哲也が代表を務め、グランプリは次年度アカデミー賞短編部門のノミネート選考対象となる。2008年には、SSFF & ASIAと連動したショートフィルム専門映画館、ブリリア ショートショート シアターを横浜みなとみらいに設立。日本にショートフィルムを啓蒙する役割を果たすべくその活動領域を広げるとともに、世界に羽ばたく若きクリエイターを応援している。東京・横浜にて17回目の開催を迎えた今年は約5,000本の作品が世界中から集まり、そのうち約200本を上映。現在、2016年度の開催に向け作品募集中!
1999年に誕生した米国アカデミー賞公認、アジア最大級の国際短編映画祭。俳優の別所哲也が代表を務め、グランプリは次年度アカデミー賞短編部門のノミネート選考対象となる。2008年には、SSFF & ASIAと連動したショートフィルム専門映画館、ブリリア ショートショート シアターを横浜みなとみらいに設立。日本にショートフィルムを啓蒙する役割を果たすべくその活動領域を広げるとともに、世界に羽ばたく若きクリエイターを応援している。東京・横浜にて17回目の開催を迎えた今年は約5,000本の作品が世界中から集まり、そのうち約200本を上映。現在、2016年度の開催に向け作品募集中!
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