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企業自身で生産性高める働き方改革を

2015/8/26付
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 労働規制改革の柱の一つと政府が位置づける労働基準法改正案は、安全保障関連法案の審議の影響などで成立が次期国会以降に持ち越される見通しだ。働いた時間ではなく成果に対して賃金を払う「脱時間給」制度の新設や、働く時間の配分を本人にゆだねる裁量労働制の拡大が先送りされる。

 だが、これらの労働時間規制改革が狙っている労働生産性の向上は、日本企業にとって待ったなしの課題である。1時間あたりに生み出す付加価値などの指標で日本は欧米の後じんを拝す。問われるのは企業自身の改革姿勢だ。規制改革の実現を待つのでなく、社員の生産性を高める制度づくりに各企業が工夫を凝らすべきだ。

 生産性向上を促す働き方改革には様々なやり方がある。ソフトウエア開発のサイボウズは残業の有無や在宅勤務が可能かなどにより9通りのコースを設け、全社員が自分に合った働き方を選べる。

 仕事が集中するときは時間に制約されず働く人と定時退社や短時間勤務を希望する人を分け、本人が望まない残業は排除することで企業全体としての生産性向上につなげている。全社員一律の管理から多様な制度へという、労働時間改革の方向性を示す。

 KDDIは7月から、終業から翌日の始業まで少なくとも8時間あけることを社員に義務づけた。健康確保と併せ、社員自身が効率的な働き方を考えるきっかけをつくる狙いがある。

 産業界で広がり始めた朝型勤務や夜の残業禁止も無駄な業務の削減など仕事の進め方の見直しを促す。企業はさらに知恵を絞って制度づくりを競ってもらいたい。

 日本企業は欧米と比べ社員の仕事の範囲が曖昧で、労働生産性の向上を妨げる一因になっているといわれる。一人ひとりの職務内容を明確にし、メリハリをつけた働き方ができるようにしたい。

 脱時間給制や裁量労働制をめぐっては過重労働を招きやすいとの声がある。懸念を取り払うため企業は休日の設け方などの健康確保策を今から十分考えるべきだ。

 会社から示された業務量などについて負担があまりに大きいと社員が感じるなら、拒否もできるように、転職しやすい柔軟な労働市場を育てる必要もある。企業をけん制する効果によって過重労働を抑えやすくなろう。職業紹介の規制改革など労働市場の整備を政府は急がなければならない。

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