先週来の世界同時株安は、週明けになって日米欧の株式市場をさらに一周した。中国発のブラックマンデーとも言える暴落の連鎖である。

 とはいえ、世界の株価は実体経済の実力以上にかさ上げされていた。日米欧が過去に例のない大規模な金融緩和で巨額のマネーを供給し、それが株式市場に流れこんでいたからだ。その調整が起きるのは避けられず、パニックに陥らぬよう冷静に対応することが肝要だ。

 同時株安の原因は二つある。

 ひとつは中国経済の減速がはっきりしてきたことだ。中国政府は7%成長目標の旗をおろしていないが、力強さは影をひそめつつある。経済実態をよく表すと言われる鉄道貨物輸送量は減少、電力消費も頭打ちで、輸出入は前年割れが続く。

 ここ数年、世界経済の主役は中国だった。リーマン・ショックの直後に中国政府が打ち出した4兆元(当時で50兆~60兆円規模)投資はそのはじまりだ。だが皮肉なことにその巨額投資が生みだした巨大な供給力が、いま大きな需給ギャップをつくって中国経済を苦しめている。

 原因の二つめは「中央銀行バブル」の終わりを市場が覚悟し始めたことだろう。7年前の経済危機を乗りきるために、先進国の中央銀行がこぞって乗り出した大規模な金融緩和である。

 その膨大なマネーは世界株高を演出してきた。だがゼロ金利や量的緩和という異例の策は、金利による市場の調整機能を損ね、政府の借金依存を助長するといった副作用がある。永久に続けることはできない。

 だから米国が年内にもゼロ金利を解除し、利上げに踏み切ろうとしているのは当然だろう。マネーの巻き戻しが株安につながるとしても、それはいつか通らねばならない試練である。

 だとすれば、株高と円安を推進力と頼んできた「アベノミクス」の限界も明らかだろう。今後、副作用が深刻にならないうちに量的緩和の縮小など正常化の道を早く探ることが必要だ。

 国内では株価急落のショックで、景気対策やいっそうの金融緩和を求める声が高まるかもしれない。だがそれは本質的な対策にならないばかりか、新たなバブルの原因を作るだけだ。

 もちろん再び世界経済危機に陥ることは防がねばならない。主要7カ国やG20で金融危機を連鎖させない協調体制を築いておくことが求められる。

 各国がバブルに頼ることなく経済の実力を地道につけていく。それしか世界経済を安定させる道はない。