千葉卓朗
2015年8月26日05時19分
会社に出勤せず、自宅でも喫茶店でも好きな場所で仕事をしていい。リクルートホールディングス(HD)が10月から全社員に、そんな働き方を認めるという。仕事はちゃんと回るのだろうか。
東京都江東区のマンションの一室。午後4時、リクルートHD経営企画室の宮崎雄さん(31)が、「会議」に出席した。といっても目の前にあるのはパソコンだけ。画面には、TV会議システムでつながった同僚3人が映し出されていた。小型カメラとマイクを通じ、リアルタイムで会話する。台所では妻の千代さん(31)が夕食のゴーヤチャンプルーの準備に忙しい。昼寝から覚めた長男の遼君(2)が宮崎さんの腰にしがみつく。
宮崎さんの部署で、できるだけ出社せず会社以外で仕事をする「リモートワーク」が始まったのは6月から。社員が会社に来なくてもどこまで仕事ができるのかを見極め、業務を効率化するのが目的だ。
宮崎さんの主な業務は、月1回の取締役会議と月2回の経営戦略会議の運営。東京・八重洲の本社内のオフィスには、各部署から議題の相談が次々舞い込む。
「会社にいなくて、仕事は回るのか」。そんな懸念もあったが、始めてみるとあまり困ったことはなかった。つなぎっぱなしのネット電話「スカイプ」で、相談にいつでも応じられる。TV会議システムを使えば、会議の進行も支障はない。出社が必要なのは、取引先との面会や資料のコピーなど一部業務ぐらい。今や出社は週2~3日。あとは終日、家でパジャマ姿で仕事する。「出勤が減ったので、広い郊外の家に引っ越そうかと考えています」
同社ではこれまで、一部子会社も含めた約260人が試行。7月時点では約8割が継続を希望したという。10月以降、対象社員をHD全社員約400人と一部子会社の約1600人に広げ本格導入する方針だ。同社で「働き方変革」を主導する林宏昌さんは「大胆な取り組みをしないと、働き方を変えられないと考えた」と話す。会議時間を短くしたり、電子化すべき印鑑決裁を洗い出したりするなど、社員の間に仕事の効率化の工夫も生まれたという。林さんは「仕事が短くなった分の時間を、読書やリフレッシュにあてれば、創造性の高い仕事につながる」。
対象となる社員の多くは元々、就業時間を自分で決めて働いており、在宅勤務でも実働時間に関わらずこれまで通りの給料となる方向だ。自宅勤務で社員はサボらないのか。林さんは「そこは、性善説でやっている」と言う。ただ、賞与は成果連動型で、成果が出ない社員の賞与は下がる。「普段、何をしててもいいけど結果は出してね、という仕組みなので、サボろうという考えは起きない」
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