さて、本日は、久々にドルトムントのレビューである。前にドルトムントのレビューやったのいつだったか思い出せない程度に久々のドルトムントのレビューである。ブンデスリーガはすでに開幕しているのだけれど、ドルは第一節でBMGを4-0で、第2節ではインゴルシュタットを4-0で屠っており、PSMで虐殺された川崎はそろそろ許されてもいいのではないかと思う。最近の公式戦では3試合で12点取ってるチームである。川崎は悪くないと思う。(こないだ湘南が川崎に勝った事とは、これは無関係である)
この試合では、香川がブンデスリーガ公式戦初ゴールを決めているんだけれど、それ以外にも香川の出来は良かった。中2日だったので、ドルの選手はみんな動きが鈍く、いつものスピーディーなサッカーが出来ていたとは言い難い所があったんだけれど、それでも圧勝してしまったのだから本当に今のドルは強いと思う。
この試合の場合、単にドルと昇格組のインゴルシュタットの実力の差というだけでなく、チームとしての攻撃の組織度、攻撃の選択肢の選び方に大きな差があって、今日はその辺りについて、試合のレビューを進めてみようと思う。
ドルトムント対インゴルシュタット、前半戦のお話
まず、スタメンの紹介から。
スタメンはこうなっていた。ドルトムントは4231、インゴルシュタットは4141。この組み合わせは、完全にフォメが噛み合っている為、ミスマッチが起きない対戦である。ただ、これはフォメ上の話であり、相手チームがどういう守り方をしてくるか、自チームがどういう攻め方をするのかで、話は全く変わってくる。
具体的に説明すると、4231対4141の対戦の場合、中央の3枚のマッチアップにおいて、マンツーマン気味に守るか、ゾーン気味で守るかによって、攻め方というのが変わってくる。
こっからはキャプでやる。インゴルシュタットの守備とドルの攻撃を例にして説明するけれど、
これは前半7分のシーンのドルトムントのビルドアップ。このシーンの場合、中央の3枚が香川、ギュンドガン、ヴァイグルを捕まえている。マンツー気味の守備なんだけど、相手がこういう風にマンツー気味に捕まえようとするなら、その裏のスペースが空くという事でもある。具体的にいえば、このシーンだと、香川が引いてボールを受ける動きをしてアンカーを釣り出して、そして空いたスペースをロイスが使おうとしている。このシーンの場合、ロイスが下がってきたので、インサイドハーフがロイスのマークについた。その結果として、ギュンドガンがフリーになってしまい、そこに起点をつくられてインゴルシュタットはラインの裏を取られかけた。(この攻撃は巡り巡って香川のゴールの伏線なんだが、それは最後にやる)
このシーンは、4231対4141の対戦では、中央の3枚をマンツーマン気味にしてしまうと、中央3枚のポジショニングにアンカーとインサイドハーフのポジショニングが支配されてしまい、そこから崩される危険性があるって事を示している。ここでドルが使ってる形なんだが、「トップ下+ボランチのポジショニングで、相手のインサイドハーフとアンカーを動かして、空いたスペースをCFとWGに使わせる」って戦術だ。
んじゃあ、アンカーが香川をマンツーマン気味で捕まえるのやめて、中央のスペース潰すの優先でやったら、どうなるかってーと、これはこの後、すぐやるんだけど
これは11分のシーンだけど、アンカーが中央にいるため、香川にギャップ受けされちゃってサイドチェンジされたんだ。アンカーが香川にマンツーマンでついてこないなら、相手のインサイドハーフを前に釣り出してから、アンカーの脇のスペースを香川に使わせれば良いだけって話になる。
実は、この日の前半、インゴルシュタットの守備上の穴になっていたのが、このシーンで香川がボールをうけた場所だった。右インサイドハーフの10番とアンカーの間のスペース。完全に守備上の穴となっていて、あそこのスペースを香川に使われまくることになった。
これは21分。ここもそうなんだけど、インゴルシュタットのアンカーの右脇の所、誰もいないエアポケットになってるんだ。で、そこを香川に使われてしまっている。
さらに23分、またあそこで香川に前を向かれてしまう。あそこのスペースが空くって事がわかってから、ドルは楽に攻める事ができるようになった。26分にもアンカーの右脇で香川に前向かれてしまっている。
ここ、アンカーが香川にマンツーマン気味でつけばいいんじゃ?というのがあるんだけれど、それやっちゃうと前半27分にあったみたいに
香川の動きでアンカー動かされて中央に楔入れられて、そこからコンビネーションで崩される危険性ってのが出てくるんだな。
ここで、インゴルシュタットも動く。連続で香川にアンカーの右のスペースを使われた事から、30分あたりから香川にマンツーマン気味で10番のインサイドハーフがつくようになる。サイドに流れても、相手のWGがきっちり捕まえるようになり、香川が良い形で中盤で前をむけるって事は段々なくなっていった。インサイドハーフに香川を捕まえさせたことで、一旦はインゴルの守備は落ち着いた。
ただ、前半33分みたいに、の高速コンビネーションやられると流石についていけなかったけれど。前半33分のコンビネーションは流石に凄かった。
33分のは、動画張っとくのでそっちでどうぞ。やり方はロイスのと一緒で、右サイドから斜めにパスいれて、スルーをつかったコンビネーションから裏を取るって形。動画見て貰えばわかると思うんだけど、このシーン、相手の10番が香川についてきてるのね。もっとも、スルーを使ったコンビネーションされるとマーク外してしまってるんだけど。
このインゴルシュタットの守り方、前半はそこそこ上手くいっていたんだが、後半、トゥヘルとドルの選手が修正を行ってくると、この守り方そのものがインゴルシュタットに致命傷を与えてしまう事になった。
ドルトムント対インゴルシュタット、後半戦で起きた事、トゥヘルとドルの修正
さて前半は0-0、インゴルとしてはこれでオッケーだった。ドルは、なんとかして勝ち点3が欲しい。だから、インゴルは耐えて、ドルが前がかりになった所をカウンター、そんなゲームプランでよかった。ただ、問題はドルの選手達がインゴルの守備方法になれてきてしまった事である。どーいう事かというと、相手のインサイドハーフが香川をマンツーマン気味で捕まえている訳だから、必然的に、ドルトムントのボランチの片方がフリーになれる。
結果として、何が起きたか、それはキャプで説明するけど、
これは後半45分のシーン。ボランチのヴァイグル君が完全に空いちゃってるのね。次に
これは後半47分のシーンだけど、香川が気になってるのか、ここでも空いてるんだ。あそこでボランチに前向かれて捌かせてしまうの非常に不味い。こうなってしまう原因が、インサイドハーフに香川を見させてしまうからだ。
1,アンカーに香川を見させると、香川のオフザボールでアンカー動かされて中央に楔打ち込まれる
2,じゃあインサイドハーフに香川見させると、ドルのボランチの片方がフリーになる。
後半開始直後から、インゴルシュタットは、こういう悪循環になっていた。一旦、ボランチが空くって事がわかりはじめると、ドルトムントはボランチを起点にして攻めに出ることが出来るようなる。ボランチが高い位置でボールを捌けるようになった事が、この後のドルの先制に繋がってくる。
次に54分のドルの先制シーンになるが
これだが、香川をインサイドハーフがマンツーマン気味で捕まえているせいで、ドルのボランチのヴァイグル君(19才!)がフリーになって、そこを起点としてやられてしまった。前半の最後のほうは、ドルの選手が慣れてなかったから、この守り方でも良かったんだけど、一旦、ボランチが空くって事がバレたら、このやり方は非常にリスクが高い。
その後のドルの二点目の時もそうなんだが、
後半58分、あそこでヴァイグル君が又フリーになってる訳だ。正直な所、インサイドハーフに香川を見させるのは悪手。ヴァイグル君を空けるのは不味い。彼、19才で今年からドルに来た子だが、凄い良い選手でドルトムントのビルドアップが前シーズンとは比較にならないほど安定してる原因になっている。この後、ギュンドガンとのパス交換から、ギュンドガンに縦パス入れられて、シュメルツァーがPKもらってロイスが決めてドルトムントは二点目となった。
ここでインゴルシュタットのほうも、ヴァイグル君フリーにしてるとやられるとわかったみたいで、69分あたりになると
こんな感じで10番がヴァイグル君捕まえに出てくるようになった。ここでインゴルシュタットは、インサイドハーフがドルのボランチ捕まえて、アンカーが香川捕まえるみたいな形に変更。ところがそれはじめると、今度は降りてきたロイスにSBから楔入れられてしまうんだな。インサイドハーフが前にでてしまう事になるから、どうしたってアンカーの両脇が空いてしまう。そして、その両脇をWGやCFに使われてしまうと、前半のリプレーになってくる。
最後の香川の得点シーンが、まさにそれなんだけど、まず
という流れから、
こうなった。これは典型的な4141における、アンカーの両脇を使われて失点の仕方。綺麗にホフマンと香川にアンカーの両脇を使われて失点。ヴァイグル君とギュンドガンをフリーにしたくないので、インサイドハーフをヴァイグルとギュンにつけたら、インゴルシュタットは空いたアンカーの両脇を使われて失点してしまった。
この後、オバメヤンのゴールもあるんだけど、あれは、文脈のないゴールだったので割愛する。
新生ドルトムントとトゥヘルのまとめ
ここまでこの試合の流れを見てきたわけだけど、トゥヘルのドルトムントに関しては、かなりポゼッション寄りのカラーを持ってる。相手チームに対して、合理的な攻め方をするチームになっていて、かなり驚いている。クロップの頃からスピーディーなパスワークをもっているチームだったんだけれど、トゥヘルのチームの場合、相手チームの守り方に応じて攻め方を柔軟に変える事が出来ていたので、正直言って驚いた。
BMG戦では、BMGの442ブロックをいともたやすく引き裂いていたので、びっくりしたモンだが、この試合ではインゴルシュタットの4141ブロックを中2日にも関わらず、簡単に引き裂いてしまった。
この試合の流れをまとめておくと、
1,前半開始直後はインゴルシュタットの前プレが強く、ドルトムントはあまり良い所なし
2,前半10分過ぎあたりから、香川がインゴルシュタットのアンカーの右脇を使えるようになり、ドルトムントペースに。
3、前半27分あたりでインゴルシュタットは守備方法を変更。相手の右インサイドハーフの10番が香川にマンツーマン気味でつくようになる。
4、前半はその後は静かな展開に。ドルはアンカーの右脇を使えなくなり、ちょっと攻めあぐむ。
5、後半開始直後から、ドルのボランチがフリー。ドルトムントは、フリーのボランチ、特にヴァイグル君を使うようになる。
6、後半54分、ドルトムント、ヴァイグル君の縦パスから先制。さらにそのあと、ギュンの縦パスからシュメがPKもらってで追加点。
7,70分あたりからインゴルシュタットはまた守備変更。ヴァイグル君フリーは不味いと気付く。インサイドハーフがギュンとヴァイグル君をきちんとマークするように。
8、インサイドハーフが、ドルのボランチ捕まえる為に両方前に出るようになり、アンカーの両脇にスペースが生まれる。
9、そのスペースをドルに使われて3点目。勝負あり。
10 最後のドルのゴールは、インゴルがもう集中切らしてた。
こうなる。
この試合のレビューをしようとおもったのは、非常に良い対4141オフェンスのモデルケースだったからだ。インゴルシュタットが試合中、何度か守備方法をいじってくれた事もあって、4141に対して、どういう風に攻めればいいのかってのの、教科書的な試合となった。
トゥヘルのドルトムントは、クロップのカラーを引き継いで、前プレのチームなのはそのままなんだけど、ポゼッション面やコンビネーションの面で、クロップ時代より質が高いチームに仕上がっており、今年一年は楽しめそうな感じである。去年と比較して、コンビネーションプレーの質が断然高い。
で、最後になるんだけど、この試合でやたらと目立ったドルのヴァイグル君。記事の中でも彼のことを何度か扱ったけど、この子、本当に良い選手。19才とは思えない位落ち着いてる。この日、一番関心したのは、前半26分のシーンのプレーで、インターセプトしたボールをダイレクトで香川につけたのね。これは動画にあるから、見て欲しいのだけれど、あれをみて「うわ、これで19才か・・・・」と感心してしまった。あれはなかなか出来ないぞ・・・というプレーだった。19才でドルトムントのプレースピードについていけるどころか、加速させることすら出来てる訳で、末恐ろしい。
そんな訳ですので、ドルトムントの新星、19才のヴァイグル君はホントに良い選手なので、ドルトムントの試合みる時は彼に注目してみてみてね。
今日はこのあたりで。ではでは。