勝手に海をどんどん埋め立てる 〜止まらない中国の「オレ様スタイル」東アジアの「トホホ」な国々(1)中国編

2015年08月25日(火) 週刊現代

週刊現代経済の死角

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その「皇帝スタイル」は、今年に入ってますます顕著になってきている。

例えば、中国がフィリピンやベトナムなどと領有権を争っている南沙(スプラトリー)諸島に、次々と埋め立て地を建造しているのは、周知の通りだ。いつのまにか約4km2(東京ドーム87個分)もの人工島を建造し、いまは3000m級の軍事用滑走路まで建造中である。

前出の日本大使館関係者が続ける。

「習近平主席が人民解放軍に、『海の万里の長城を建設せよ』と発破をかけているのです。中国政府は表向きは、『21世紀海上シルクロード』を共に築こうと、東南アジア諸国に呼びかけていながら、実際には人造の軍港を続々と建設している。このため、警戒感を強める東南アジア諸国は、アメリカや日本にSOSを求めてきているのです」

8月6日、ASEAN(東南アジア諸国連合)は外相会議の共同声明を発表し、「南シナ海の埋め立てに深刻な懸念が示された」と明記した。ASEANには中国を最大の貿易相手国とする国が多い中で、異例の非難声明と言える。

中国は南シナ海ばかりか、東シナ海でも「オレ様スタイル」を貫いている。勝手なガス田開発だ。堪忍袋の緒が切れた日本外務省は7月22日、中国が東シナ海の日中中間線付近で進めているガス田開発の証拠写真を、ホームページ上で公開した。

その14枚の写真を見ると、平湖、八角亭、樫、白樺……と中国が次々にガス田の土台を設置していることが分かる。恐るべき侵蝕ぶりだ。

これらのガス田に関しては、'08年5月に胡錦濤主席(当時)が来日した際、福田康夫首相(当時)と日中首脳会談を行い、共同開発することで合意している。翌6月には日中の事務レベル協議も開かれ、共同開発の区域や方法など、より具体的に確認し合っている。

その後、日中関係の悪化に伴って、交渉は頓挫してしまった。中国はそれをいいことに、勝手にどんどん開発を進めているのである。盗っ人猛々しいとは、まさにこのことだ。

こうしたことから、8月6日にマレーシアのクアラルンプールで開かれた岸田文雄外相と王毅外相との日中外相会談は、双方で激論となった。

岸田 東シナ海の資源開発に関しては、日中共同開発を謳った「2008年6月合意」があるではないか。中国は直ちに一方的なガス田の開発を取りやめ、日本との交渉のテーブルにつくことを要求する。

王 '08年には双方で法的拘束力を持つ合意など取り交わしていないし、議論した内容は共同文書にもなっていない。しかもその後、わが国の固有の領土である釣魚島(尖閣諸島)を勝手に国有化し、共同開発の芽を摘み取ってしまったのは日本側ではないか。

さらに言えばわれわれが開発を進めているのは、日本側が勝手に引いた「日中中間線」なるものの中国側の海域だ。日本がとやかく言うのは、内政干渉だ。

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