社説:株安連鎖 緩和依存の矛盾が出た
毎日新聞 2015年08月25日 02時35分
世界の市場が不安の連鎖に揺れている。前週、日経平均株価が1000円以上値下がりした東京市場は、週明けの取引でも急落が止まらず、24日は一時、900円を超す下げ幅となった。中国経済失速への不安が影響しているが、根底には、これまで世界的な株高をけん引してきた前例のない金融緩和が、米国で終わろうとしていることがある。
経済構造や企業の収益力の本質的な改善を伴わない、緩和マネー頼みの急激な株高は長続きしないということだ。日銀の異次元緩和に依存したアベノミクスにとっても、警鐘と受け止めるべき局面である。
中国の株式市場は24日も、上海総合指数が8%超の下げ幅となった。年初からの上昇分は吹き飛んでしまった形だ。日経平均も、6カ月ぶりの安値となった。原油価格も急落している。
中国経済の深刻度がどの程度なのか見極めにくく、動きの速い投機資金が中国市場から流出、株安や人民元安の引き金を引いた。もともとカネ余りと、個人投資家を巻き込んだ投機で膨らんでいた株価だ。どこかで是正されるのは不思議ではないが、官民挙げての株価浮揚策やわかりにくい人民元政策が、不安心理をさらに増幅させている面がある。
中国など新興国市場の動揺は、米国でいよいよゼロ金利が解除されようとしていることと連動している。
ゼロ金利や量的緩和といった極端な政策が長期化すれば、株価や不動産価格のバブルが生じる。あふれ出したマネーがリスクを度外視し、より高い利回りを求めて、新興国はじめ世界のさまざまな市場で過熱を招くためだ。
このような副作用は、大規模な金融緩和策が導入される際に警告されていたが、当面の景気浮揚が優先された。ただ、ひとたび始めると、依存してしまい、なかなか終了できなくなるというのが、こうした劇薬のような金融緩和である。
通常の金利水準に戻そうとカジを切った途端、投機資金がリスクに過剰反応し、新興市場などから一気に逃げ出す。米連邦準備制度理事会(FRB)がゼロ金利を解除し、2006年6月以来の利上げに踏み切ろうとしている今、ひずみが顕在化してきたと言える。
問題は、株式市場や新興国経済への影響が大きいからと正常化を先送りしても、抜本的な解決にならないことである。小手先の株価対策や財政出動は、効果が長続きしないばかりか、新たなひずみの種をまくことになる。
安易な対策に逃げ込もうとせず、構造改革や収益力向上のための経営改革などに、本気で取り組むべきだ。