IMF:人民元の採用検討…特別引き出し権構成通貨
毎日新聞 2015年08月05日 22時16分
【ワシントン清水憲司】国際通貨基金(IMF)は4日、金融危機に陥った国々が外貨を調達する際に使うIMFの「特別引き出し権(SDR)」の構成通貨に、中国の人民元を採用するか正式に検討を始めたと発表した。年内に判断する予定だが、採用条件の一つである「自由に交換できるか」の点で、なお検証の必要があるとして、採用が決まっても実施時期は当初予定の来年1月から同10月まで先送りされそうだ。
SDRは米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円で構成する「合成通貨」のようなもの。IMFが出資比率に応じて加盟国に配っている。経済危機で外貨不足に陥った加盟国はSDRと引き換えに他の加盟国から4通貨を融通してもらえる。
今年は5年に1度の構成通貨見直しの年。SDRへの採用には二つの条件があり、その通貨が「貿易で広く使用されている」ことと「金融市場で自由に交換できる」ことが必要。貿易面では既に米ドルとユーロに次ぐ第3位を占めており、金融市場などで「自由に交換できるか」が焦点だ。
IMF理事会での検討のたたき台として発表された報告書は、過去5年間で、債券発行、国際的な支払い、貿易金融などで人民元が存在感を増していることから「人民元の使用・取引は顕著に増加している」と評価した。
ただ、中国当局が毎朝発表する人民元相場の指標が海外市場での実勢とずれていることなど問題点も指摘。現状のままで人民元を採用すると「(SDRを取引する各国にとって)リスクやコストを増やす懸念がある」として、必要な準備を整えるため、来年9月末までは現行の通貨構成で続行する方向だ。