盗聴疑惑:日本、対米非難を抑制…際立つ他国との差
毎日新聞 2015年08月05日 21時26分
【ベルリン中西啓介、パリ宮川裕章】米国家安全保障局(NSA)による日本政府や企業の盗聴疑惑で、対米非難を抑制する日本政府と、NSAの盗聴が発覚した際に厳しい対応を取ったブラジルや独仏政府との差が際立っている。
「不法な盗聴行為は深刻な主権侵害。友好国がする行為ではない」と米国を激しく非難したのは南米ブラジルのルセフ大統領だ。2013年9月、米中央情報局(CIA)元職員のエドワード・スノーデン容疑者が暴露した情報から、NSAが大統領の電子メールを傍受していたことが発覚。激怒したルセフ大統領は、「テロ防止のためだった」と説明する米国の言い訳を受け入れず、翌月に予定されていた訪米を事実上キャンセルした。
欧州で最も厳しい対応を取ったのがドイツだ。13年10月、メルケル独首相の携帯電話がNSAにより盗聴されていた疑惑が浮上。メルケル氏はオバマ米大統領に強く抗議し、オバマ氏は14年1月に独公共放送のインタビューで再発防止を約束した。
しかし、盗聴に対する独国内の不信感は収まらず、独連邦議会は同年3月、NSA問題特別調査委員会を設置した。今年4月には、独情報機関・連邦情報局(BND)がNSAに協力し、仏大統領府や欧州連合(EU)関係者を対象に通信傍受を行っていたことも発覚。NSAの傍受対象者リストの公開を求める議会と政府が対立している。
過去3代の大統領に対するNSAの通信傍受が今年6月に発覚したフランスは、オランド大統領が「受け入れがたい行為であり、フランスの安全、利益に関わる不正は一切、容認できない」と声明を出し、オバマ米大統領に電話で説明を求めた。両国間では13年にもNSAによる政治家、官僚、ビジネス関係者などを含む仏国内7030万件の盗聴が発覚し、オバマ大統領は14年のオランド大統領訪米時に仏首脳の盗聴は行わないと約束していた。