検証!クリック率はSEOの検索順位の決定要因ではない
この記事は、Search Engine Landに掲載された「Is CTR A Ranking Factor In Organic Results?」を翻訳した内容です。
結論から言ってしまうと、みなさんの期待に反しクリック率は検索順位の決定要因ではありません。
オーガニック検索からのトラフィックを大量に獲得できても、あなたのサイトのオーガニック検索順位に変化はありません。
今回は、そう結論付けるに至った実験結果を紹介します。
クリック率とは?
話を先に進める前に、少しだけクリック率(CTR)の考え方を説明します。
クリック率とは、リンクをクリックする可能性のあった人数に対する、実際にクリックした人数の割合です。
ですので、検索結果(SERPs)にあなたのサイトへのリンクが表示され、そのリンクを見た人の20%がクリックしたら、クリック率は20%になります。
誰もが検索順位10位より1位がはるかにいいと思ってますよね。なぜでしょう?
それは、検索結果ページでの各順位でクリック率が違うからです。下図のとおり、検索結果1位と5位以下では大きな違いがあります。
上図は2011年のもので、今もこの数字がまったく同じとは言い切れません。でも、ここ数年で検索順位をもとにしたクリック率を測定する研究がたくさんなされ、そのすべてが検索順位が高ければクリック率も上がると、最終的に結論付けています。
なぜ、私の実験ではクリック率を取り上げたのか?最近、クリック率にまつわるいろんな噂があります。でも残念なことに、検索順位に対するクリック率の影響について、2015年になされた実験やケーススタディがありません。(これについては、「方法論」のパートでもう少し説明します。)
ここ数年クリック率が注目されている理由について分析してみましょう。
クリック率は今注目の指標
クリック率は以前から重要なSEOの測定指標と考えられてきましたが、2014年になって SearchmetricsのSEO Rank Correlations And Ranking Factors 2014 (※英文)でトップに取り上げられ、広く知れ渡りしました。
SearchMetricsでは、彼らの分析結果は「検索順位1位から30位のサイトが持つ特性の違いをよく示している(ただし検索順位と特性の因果関係は示していません)」とはっきり述べています。言い換えると、検索順位と関係ある要因もあれば、関係のないものもあるということです。
それから、ブログ投稿、カンファレンス、あるいはWhite Board Fridays(※英文)でも重要な検索順位要因として、クリック率が頻繁に取り上げられています。
クリック率を意図的に上げれば、検索順位を自分で上げられるとするケーススタディさえも数多くあります。
最近、被リンクなしのnegative SEO(※英文)に関するケーススタディを公開しました。そこでは、クリックプログラムのみを使ってウェブサイトの検索順位を下げることができました。
有名なケーススタディとして、Rand Fishkinのこの研究(※英文)があります。そこでは、クラウドベースでのクリックによって自身のサイトページのランキングを上げました。
でも、2015年になってすべてが変わりました。クリック率では検索順位が直接変わらなくなっているようです。私の研究からその証拠をつきとめました。ここではその成果を紹介したいと思います。
実験のもとになった考え
ある意味、この実験は大きな失敗でした。もともとクリック率を上げることでウェブサイトの検索順位がどれだけ向上するか確かめようとしていたからです。
私はもともと、クリック率が本当に検索順位を決める要因であれば、クリック率を操作することでウェブサイトのGoogle検索順位が変わるという仮説を立てていました。
言い換えれば、クリック率が高ければGoogleでの検索順位も上がるということです。
この実験の目的
私が知りたかった点は、他の検索順位決定要因を除いたクリック率のみの検索順位への影響です。
Randの実験結果(※英文)は興味深いものでしたが、他にも検索結果に影響しうる要因がたくさん含まれていました。
例えば、Chromeのデータ、ソーシャルメディア、バックリンクなど。ですので、それらの実験結果では純粋にクリック率の影響を測定できていませんでした。
これらクラウド型の実験で測定したクリック率から「人的要因」を排除したかったのです。私の目的は、他の指標による影響を排除した上でクリック率の影響度を調べるSEO実験を行うことでした。
実験環境の準備
どのようにすれば、クリック率の検索順位への影響を最もよくテストできるでしょうか?
ウイルス感染のように、あるドメインへ大量にトラフィックを送ることです(テレビ広告や新製品発表など)。クリック率が本当に検索順位の決定要因なら、間違いなくこのテストでオーガニック検索順位が大きく上がるはずです。
実験に適したコンテンツ選び
前述したnegative SEOに関するケーススタディでは、かなり多くのバックリンクができていました。
でも、「negative SEO」というキーワードでの1位にはなれず、2位から4位にずっと位置していました。このページをこのキーワード検索1位に押し上げることが、クリック率の影響を示す大きな証拠となると考えました。
(もちろん実験結果をさらに明確にするため、他にもキーワードを追加しましたが、その詳細はこの記事の中で後述します。)
実験のタイミング
前述のサイトに新たにリンクが追加されなくなるまで待ち、そこから実験を開始するのがベストだと考えました。
実験は2015年3月の2週目から3週目に行いました。
準備と技術指標
Googleは正確に不正なトラフィックを探し出します。
みなさんはおわかりでしょうが、これは彼らのアルゴリズムのなかで他の機能と同じくらい重要なものです。彼らの一番大切な資産であるAdwardsを維持していくために不可欠なのです。
クリック率プログラム、プロキシ、プロキシスクレイパー、他ツールやサーバ類は、以前行ったテストを通してちょうどよい準備状況となっていました。
それらは単にゴミデータを収集している状態でした。このプログラム設定は前述のSEO実験で確認済みで、まだ私のサイト訪問の60~70%はGoogleアナリティクスやGoogle Search Consoleでフィルターされるような状態でした。
実験を次のステップに進めるには、この状態から変えなければなりませんでした。私は、Googleのトラフィックデータに影響を与えようとしました。それによって、Google トレンドやGoogleキーワードプランナーにも影響を及ぼすのです。私の実験を確かなものにするため、以下の準備をしておく必要がありました。
- GoogleアナリティクスやGoogle Search Consoleによって私のトラフィックを60%~70%の成功率で把握できること。(成功率とは、記録されたトラフィック数 : 送信したトラフィック数)
- Google Adwardsによって同じトラフィックがフィルタされないようにする。
- 毎回違うIPアドレスを使ってページにアクセスする。
- すべてのトラフィックをGoogle.com経由で送る。
簡単ではありませんでしたが、数週間のチューニングの結果うまく改善に成功し私の気持ちも大変高ぶっていました。
理論上、私がやるべきことは、このGoogleオーガニック検索結果からの偽トラフィックを私のウェブサイトへ送って待つだけです。
実験開始
すべての準備完了後、プログラムを私のドメイン https://goralewicz.co
へ送り込みました。各クエリの内容は以下のとおりです。
- ブラウザを起動する。
- Google.comへアクセスする。
- クエリを入力し、「Google 検索」ボタンをクリックする。
- 検索結果ページの中から私のサイトドメインを探す。もし見つからなければ、2番目のページへ。なければまた次へ、結局12番目のページまで。
- 検索結果からクリックする。
- ランダムにページを変えながら、ウェブサイトに2~4分滞在する。
テストに使ったキーワードは以下のとおりです。
- Goralewicz
- Goralewicz.co
- Goralewicz.co negative SEO
- Negative SEO
- International SEO consultant
- SEO consultant
- SEO training
これがGoogle Search Consoleで見た上記キーワードのクリック数とインプレッション回数の状況です。
キーワード1つ1つについてここで述べていくことはできませんが、一番興味深い「negative SEO」というキーワードについて深く見ていきます。
対象キーワード「Negative SEO」についての考察
前に述べたとおり、私のブログは「negative seo」というキーワードでの検索順位が、2014年12月4日の公開から数ヶ月間ずっと2位から4位の間でした。
次のセクションでは、私の実験がどう影響したか詳しく説明しています。
- クリック数、インプレッション回数、クリック率、そして「negative SEO」での検索順位 (Google Search Consoleベースで)
- 「negative SEO」というキーワードに対する Google トレンド表示
- Google Adwards キーワードプランナーにおける「negative SEO」というキーワードに対する月間データ
- 私のウェブサイトの「negative SEO」による検索順位 (SEMrushベースで)
Google Search Console
これがGoogle Search Consoleで見たこのキーワードに対するクリック数です。
これがクリック率です。
これがこのキーワードに対する平均検索順位です。
Google トレンド
Googleから「negative seo」というキーワードの検索数が592%増えているとメールが届きました。
2015年3月に、「negative SEO」がGoogle トレンド上のキーワードとなりました。
これで私が行ったクリックがGoogleでフィルタされていないことが証明できました。
Google AdWords キーワードプランナー
私のクリックが記録され、またスパムとしてフィルタされてないことをさらに証明するため、Google AdWords キーワードプランナーもチェックしました。
これを見てわかるように、2015年3月のトラフィックが極端に突出しています。
月平均の検索数1,600と比べて、378.1%トラフィックを増加させることができました。
実験前の検索順位
これが、SEMrushによる実験前の私のサイトの検索順位です。
実験結果
実験終了後2ヶ月間、私のサイトの検索順位は変わらないままでしたが、その後2015年6月1日あたりから急落し始めました。
実験目的の達成
この記事の冒頭で想像できたと思いますが、検索順位に変化はありませんでした。でも、実験目的はすべて達成できました。
Googleアルゴリズムにフィルタされず、大量のオーガニック検索トラフィックを発生させることができました。
クリック率を上げることができました。
Google AdWords キーワードプランナーからコアとなるGoogleトラフィックデータを変えることができました。
- でもその結果、この実験で使ったどのキーワードで検索しても順位を上げることはできませんでした。
まとめ
クリック率が検索順位に影響しないという今回の実験結果は、様々なデータから証明できそうです。
実際にSMX Advancedにおいて、GoogleのGary Illysは「Googleは検索結果のクリック数を評価と証明のためには利用しますが、検索順位決定そのものには利用しません」と裏付けて(※英語)います。
考えてみれば、操作しやすい検索順位決定要因を「修正する」というGoogleの方針と完全に合致しています。
また、明かされないままとなっている最近の検索順位の大きな変動とつながっています。
私は、これはいい変化だと思いますし、Googleが唯一できたことだと思います。
ウェブサイトの検索順位向上やライバル駆逐を目的としたクリック率改善ソフトウェアやサービスは、Googleにとって大きな弱点だったからです。
このSEO実験がクリック率に関する理解に少しでも役立てば幸いです。また、すべてのウェブ管理者やSEO担当者の手法改善につながることを願っています。
この記事は、Search Engine Landに掲載された「Is CTR A Ranking Factor In Organic Results?」を翻訳した内容です。
クリック率が検索順位と関係しているのではないか?という疑念はSEO関係者の中ではずっと言われている問題でした。Googleが公式に使っていないと明言していても、使うほうが自然だろうと信じきれていないウェブ担当者も多かったのではないでしょうか?しかし、いち調査結果ではありますが、今回の結果から現時点では使ってなさそうです。
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