70年談話:「おわび」表明が焦点…首相、素案には盛らず
毎日新聞 2015年08月09日 21時11分(最終更新 08月09日 21時56分)
安倍晋三首相は戦後70年談話の14日の閣議決定に向け、文案の最終調整に入る。首相の私的諮問機関「21世紀構想懇談会」が6日に首相に提出した報告書は、満州事変以後の日本の「大陸への侵略」を認め、1930年代後半から植民地支配が過酷化したことも指摘した。これを踏まえ、首相が談話でアジア諸国への「おわび」を表明するかどうかが焦点になっている。ただ、首相が7日、与党幹部に示した素案には「おわび」の文言は盛り込まれていなかった。
自民党の稲田朋美政調会長は9日、フジテレビの番組で「首相は一貫して『過去に対する痛切な反省』『未来志向』『戦後の(日本の)歩み』という3本柱を言っている」と述べ、首相は談話で「おわび」には触れないという見通しを示した。そのうえで「なぜあの戦争に突入したかの歴史を直視し、何を反省するかが重要だ」と述べた。
首相は7日夜、自民党の谷垣禎一幹事長、公明党の山口那津男代表、井上義久幹事長と東京都内で会談し、談話の概要を説明した。菅義偉官房長官も同席した。
出席者によると、首相はその場で、戦後50年の村山富市首相談話と戦後60年の小泉純一郎首相談話を全体として引き継ぐ考えを改めて示す一方で、「おわび」には言及しなかった。山口氏は「まったく同じ文言でなくとも、趣旨が(中国、韓国などの)相手に伝わるように配慮してほしい」と要請したが、首相は明確には答えなかったという。
首相と公明党との協議について、首相側出席者は「もうない。最後は首相が一人で考える」と述べ、公明党の意向が談話に反映されるかどうかは首相の判断に委ねられているとの見方を示した。政府関係者は「首相はおわびの気持ちが十分に出るように考えるだろう」と語った。
村山談話と小泉談話は過去の植民地支配と侵略に言及し、アジア諸国への「痛切な反省」と「心からのおわび」を表明した。一方、安倍首相は、4月のインドネシアと米国での演説で「深い反省」「痛切な反省」を表明した半面、「おわび」には触れなかった。【田中成之】