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魔法使いの歩き方 作者:きーち

魔法使いの授業の仕方

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魔法使いの授業の仕方(2)

 日はまだ高く、春の気温は太陽から射し込む光を心地よい物として感じさせてくれる。ここは魔法大学の屋外訓練場、その一角である。
 基本的に学業への熱心さを持つ生徒達が多いこの大学では、人が賑わう場所であった。町の公園が幾つも入りそうな広く平坦な土地で、あたりから爆発音や凍結音が聞こえてくるのは、屋外でしかできない規模の大きな魔法を訓練しているからだろう。
 だがここはあくまで訓練場。どの様な物であろうとも訓練を望む生徒に開かれた場所であり、クルトの様に基礎中の基礎を学ぶための訓練だって、ここで阻むものは居ない。
「一応、屋外に出て外での訓練って事は、教室内で出来ない事なんだよね?」
 ここにクルトを連れてきたのは、自習を手伝ってくれると申し出て来たルーナだ。だから、ここに来た理由を知るのは彼女しか居ない。
 そんな彼女と言えば、訓練場の端にクルトを置いてフラフラと訓練場中を歩いていた。
「彼女は一体何をするつもりなんだろうね。意味の無い行為かもしれないし、実は重要な事かもしれないから厄介だ……」
 やるべきことをさっさと決めているのに、それをフワフワとした思考で包み込んでいる。そんな印象だ。
 目線でルーナを追っていると彼女は突然跳ねる様にまっすぐに立った。つまり普段は猫背に近い形で立っている。
「クルトさーん。ここです、ここまで来てくださーい」
 ルーナはクルトが居る場所へ振り向き、こちらに手を振ってくる。場所は訓練場の中心近くなので、その声は訓練場全体に聞こえそうだ。その声に他の生徒が反応してこちらを見てくるのが少々恥ずかしい。
「何かあった?」
 訓練場の視線を集め続けるのは宜しく無いことなので、すぐにルーナの近くへ走る。
「ここでーす、ここなんです。やっぱり昼間の訓練場は良いですね。こう、訓練に最適と言うか、訓練にふさわしいと言うかー」
「訓練場なんだから当たり前だと思うけどね」
 何故か気分が高揚しているらしいルーナを落ち着けるつもりで話すクルと。勿論彼女がクルトの思い通りに行動してくれるはずが無い。
「そうなんですよー! この魔法大学の訓練場は、さすがその名に恥じぬ訓練スポット。魔法を学ぶ、そのための場所!」
「あー、とりあえず、声を小さくすることから始めようか。そして少しずつ、周囲の興味をひき付けない話し方を覚えてみよう」
 静かにしろとはっきり言っても彼女が聞いてくれることは無いだろうから、まず基礎的な事から教えていく。
「あれ? なんだかわたしが教えられる側になっている様な」
 首を傾げて考え込むルーナ。あまり大声で話さなくなったのは行幸だろう。
「それで、この場所がどうかしたの?」
 訓練場の中心であるが人は余り居ない。多くの人間が広い土地で訓練をする場合、中心では無くその周囲で行うからだ。なにもせずど真ん中に立っていれば他人の邪魔になると想像が容易いからでもある。
「感じませんかー? 周囲から発生させられた魔力の残り火。この場所はその溜まり場。訓練場周囲はどこもそんな場所ですけど、ここは一番集まってるみたいですねー」
「へえ、それって慣れてくれば誰でも分かる物なの?」
「独特の匂いと言うか、感覚と言うか。魔法を使う事が日常になってくると、魔法に関する違いが分かってくることはありますよー」
 一流の武芸者が人の気配を察知する様な物だろうか。まあ、魔力は実際にある物なので、それよりは容易いのかもしれない。
「ふーん。じゃあ、その魔力の溜まり場を見つけて、次は何を?」
「それはもう訓練でしょう。光の魔法は魔力を外に発散するだけの魔法です。訓練自体は簡単だから大丈夫!」
 胸の前まで両手を上げて握りしめる。頑張れと言うポーズなのだろうか。
「いや、まあ、そんな内容だと思ったけども。要するに反復訓練で上手くできるようになろうってことでしょ? そんな大それた魔法じゃ無いんだし、わざわざ場所を選ぶ必要は無かったんじゃあ……」
 反復訓練は魔法に限らずどんな技能でも必要で効果的な物だ。何度も繰り返しコツを掴む。
 魔法を使うには、特別な感覚を用い、特別な教えや研究を必要とするが、結局最後は平凡な訓練と実験が待っている。そこに対してクルトは特に反論は無いのだが、問題は何故この場所をルーナが選んだかである。
「大事なことなんです。本来、こんな他人の魔力が集まる溜まり場は、魔法使いにとってあまり好ましい場所ではありません。魔法を使う際は、使う魔法によって調整方法が違いますよね、そこに他者の魔力が混ざれば、余計な雑味に成りかねない。けれども、光の魔法は単純に自分の魔力を外に出すだけですから、特に影響はないんですよー」
 影響が無いと言う事は、良い方向に変わる事も無いと言う事だ。
「じゃあやっぱり、ここまでわざわざ歩いて訓練する必要が無いじゃないか」
「だから大事なんですって。教室で話した訓練方法に、限界近くまで魔法を使う物がありましたよね」
「気を失って倒れる可能性が高い奴ね」
「はいそうです。では、どうしてそんな無茶をすれば、魔力量が上がるのでしょうか?」
「それは……なんでだろ?」
 体を動かせば体力が付くのは、負荷を掛けられた体が、その負荷に適応しようと肉体を変化させるからだ。では魔法は? 魔法の根底には魔力がある。魔力の源は、人の精神だとか異世界からの力だとか言われているが、明確な答えはまだ見つかっていない。
「魔法に関しては、魔法使いにとっても分からないことだらけですから、色々説があるんですけど、やっぱり魔力を出す場所をみんな門と呼ぶ点が重要なんでしょうねー」
 門。自分の精神から魔力を生み出す際の感覚が、まるでどこからかその力が出てくる様な物だから、魔法使いは魔力の源を門と呼ぶ。
 魔力を出すのは門から出すと表現するし、魔力を放出できる様にする事は門を開くとも言う。
「もしかして、限界まで魔力を使うのは、門の大きさ以上の魔力を無理矢理出すことだから、結果、訓練が終わった時に門が限界を超えた分、大きくなって魔力量が増すとか」
「無理矢理門を広げちゃうって感じですねー。そりゃあ、その反動も大きくなる訳です」
 だが、結果的に魔力量が増すと言うのは想像し易い。むしろ個人が使える魔力量を増やす場合、他にどの様な方法があるのか。
「でも門と言ったって、本当に門の形をしている訳じゃあ無いんですから、そんな無理矢理広げなくても、使える魔力量を増やす方法は別にもありますから安心してください」
 なら第一案に危険な方法を提示するのは止めて欲しかった。
「でも考えて見れば、命がけで訓練してる魔法使いの生徒なんて殆ど居ないんだから、安全な別の方法があるのは当然か……」
 できればその方法を自らの教師から聞きたかったが、居ない者の事を考えても進歩が無い。
「魔力量を増やす一般的な訓練は魔力に慣れること、つまり魔法を使ったり研究したりしていく内に、自然と増えるんですねー。だから、齢を経て経験を積んだ魔法使いの方が魔力量が多い」
 有名な魔法使いに老人が多いのはそこが原因でもあるのだろう。特異な才能が必要に思える魔法でも、最終的には経験が物を言うのだろう。
「他の生徒はそうやって訓練してるのかな?」
「もしかしたら別の方法があるのかもしれませんけど、教室が秘密にしている場合もあって良く分かりません。でも大半の新入生は、魔法に慣れることから始めてます」
「僕は火の魔法の訓練を真っ先にしていたけど、それだって効果があるってことかな?」
「多少はそうでしょうね。ですけれど、単純に魔力を出す訓練を続けていた方と、ちまちまと調整しながらちっちゃな火をおこしていた方とでは、慣れ方も違うんですよねー」
 なんだろう、酷く馬鹿にされた様な気がして地団駄を踏みたくなった。訓練場の真ん中にしっかりと足跡を残すのも悪く無いかも。
「じゃあ結局は地道に魔法に慣れて、成長するしか無いってことか……。さっきの教本って、有名な物なんだから図書館にまだあるよね、探してきて訓練を始めてみるよ……」
 なんだかさっそく同級生に差をつけられた様で落ち込んでしまう。こんな様では故郷の姉にもあわせる顔が無くなりそうだ。
「もう、ちょっと待って下さいってばー。教本なら、ここにある物を貸してあげますし、まだわたしが勧める訓練方法も話してませーん」
 いつのまにか服のすそを掴まれている。伸びるから止めて欲しいのだが。
「訓練方法って魔法に慣れることじゃないの? 他の人もそれをやってるらしいじゃないか」
「そうなんですけど、わたしの経験上、場所が重要なんですー」
「場所? だからこの訓練場まで?」
「ですねー。さっきも言った通り、訓練場のこの場所には、他の魔法から零れ出た魔力が溜まっている状態です。そしてこれも既に伝えたことですけど、魔力量を増やす一般的な方法は、魔法に慣れること」
 ルーナが勧める訓練方法が分かって来た。魔力に慣れるには自分自身で魔法を使う方法と、もう一つある
「周囲の魔力量が多ければ、それも慣れのうちに入るってことか」
 ルーナの言いたいことに合点がいき手を打ち当てる。
「そんな劇的に変化がある訳でも無いんですけどー、クルトくんとその同級生さんたちは
まだまだ魔法使いを始めたばかり、ちょっとした違いでも、差を縮めることは可能だと思ういます」
 この訓練場の様に、周囲の魔力量が多い場所で光の魔法の訓練をし続ければ、それを知らない相手よりは早く魔力に慣れる。それに、周囲の魔力量を感じられないだろうクルトの同級生は、この訓練方法を知らないはずだった。
「ルーナさんは、どこでこのことを知ったの?」
 気になるのはルーナについてである。この訓練方法をクルトは知らなかったが、それはクルトが見習いだからなのか、それともこの知識はルーナ特有の物か。
「だから経験上ですって。あんまり人に学んだことは無いですからねー」
 そう言えば彼女は現在教室に参加していないのだった。ならばその知識の多くは、自分で考え出した物なのかもしれない。
「それじゃあ始めましょうかー。場所は決まりましたから、それ以降は地道な訓練の繰り返しですよー」
 ここまで来れば反論は無い。彼女は確かに人を教える才能はある様だった。ただし一つ、新たな疑問がクルトに出来た。彼女の魔法使いとしての才能だ。
 学ぶ才能が無いと教室を追い出された彼女であるが、魔法使いとしての才能が無いとは言い切れないのではないだろうか。

 日が真上に昇る屋外訓練場。春の日差しと言えども熱く感じる時間帯だが、魔法使い達は休みなく訓練を続けている。
 そしてその中心には光が輝いていた。太陽の光では無い。青く輝く魔法の光である。
「はい、良くできましたー」
 ルーナが手を叩く。クルトが光の魔法に成功したことを褒めたのだ。勿論、簡単に出来た訳では無い。光の魔法の訓練を始めてから、既に一週間は経っていたからだ。
「簡単な魔法だと思ってたんだけど、結構大変な魔法だってことが良く分かったよ……」
 今回が初めての成功だった。少し眩暈もする。現在のクルトの魔力量は、光の魔法を一度使える程度だと言うことである。
 だが今までは使うことすら無理だったので、成長はしているのだろう。それに普通、一から光の魔法を学ぼうとすれば、さらに一週間は掛かるらしく、ルーナの訓練方法も良かったと言える。
「もっともっと魔法に慣れれば、夜に本を読むときの光源にする程度の気軽さで使うことができますよー」
 しかし今は少し使っただけで気分が悪くなる。まだまだ、魔法使いとしての第一歩目、いや、その途中だ。
「自分の出す魔力になんの細工もしない以上、魔力の量と密度だけで光らせる必要があるから、使う魔力量もそれだけ必要なんだもんなあ」
 これを手軽に出来ると言うことは、その人物の魔力量が、クルトのそれより何倍もあると言うことだ。
「ですけど、細工ありだったら、もっと上手く魔法が使える様になってると思いますよー。
クルトさんはもう火の魔法が使えますよね?」
「うん、こんな風に。あれ?」
 人差し指から火が出る。それはいつもと変わらない。だが、その時の感覚が違っていた。使用時の疲労度が違うのだ。なんと言うか、スムーズかつ簡単に火が出せた様な感覚。
「魔力量が上がってるんですから、相対的に同じ魔法でも楽に使える様になるんです。5あるなかで1を使うのと、10ある中で1を使うのは、同じ1でも精神的疲労は半分ですからー」
 もし前と同じくらいの力を込めて火の魔法を使えば、もっと大きな火力を出せることだろう。
「こうやって比較できると、自分が成長してるって分かるね。これからも、光の魔法の訓練をした方が良いのかな」
「光を出せるくらいの魔力量になれば、次は別の研究や訓練をした方が効率が良いですよー。光の魔法だけを使える魔法使いと言うのもなんですからー」
 単純に魔力量だけを上げるのなら、魔力をそのまま使う光の魔法が向いているが、他の魔法を使う中でも魔法には慣れる。そして新たな魔法を覚えることこそ魔法使いの本分なのだ。
「そうするよ。火の魔法についてもまだまだ勉強不足だし」
 一応は使えるが、本腰を入れて訓練はしていない。中途半端なのは個人的に好きでは無いし―――と、ここまで考えてクルトの頭にとある考えが思い浮かぶ。
「あのさ、ルーナさんさえよければ、これからも魔法を教えてくれないかな。うちの先生、大学内に居ることが、本当に少ないから」
「そうですねー。この一週間、まったく顔を見てませんもん」
 一週間前に大学外の仕事に出かけたクルトの師は、未だ自分の部屋に戻って来て居なかった。帰ってくるのがさらに一週間後だとしても、クルトは驚かない自信があったが。
「だからさ、この通り。今回が良かっても次からがまた心配なんだよ……」
 手を合わせて、頭を下げる。ある意味、自分の魔法使いとしての一生に関わる問題なのだ、頭くらいは下げる。
「生徒組合としては、困っている生徒を見過ごせませんけどー。わたしも忙しい時がありますからねー」
 悩む様子を見せるルーナを見て、良く言えたものだとクルトは考える。そもそも、クルトの手伝いを始めてから一週間。他の用事をしている姿は見た事が無い。
「そのことなんだけど、僕も生徒組合に入るってのはどうかな。仕事の量が減るし、勉強を教えてもらう機会は増える」
 それに確か生徒組合の事務仕事には、僅かであるが給金も出たはずだ。長く大学生活をおくる上で、資金源を確保しておきたいと考えていたところでもある。
「うーん。そう言って貰えるのは助かりますけどー。結構、いやーな仕事をする時もありますよー。生徒さんが遊び半分で失敗させた魔法の後片付けとか、何故か女子トイレと繋がった男子トイレの補修とか」
 どれもこれも想像し難い仕事であるが、クルトは別に構わないと思った。
「一応、地元の領主様の後ろ盾で魔法大学に入ったけど、これでも農民の子だからね、汚れ仕事に抵抗は無いって」
 むしろ、そういう分かりやすい仕事で対価を貰った方が気分も落ち着く。
「そう言われると、断る理由もないですねー。生徒組合って、結構人手不足ですからー」
 ルーナの様な人間が、まっさきに仕事をしていると言う時点で、人手不足であると言うのは理解していた。
「それより気になるのが、どうしてわたしなんですか? 前にも言いましたけど、わたしって教室を追い出される様な娘ですよー」
 自分に教えを請いたいと話すクルトに、首を傾げるルーナ。
「うん、それは聞いた。だけど本人の腕とは関係ないよね」
「と言うと?」
「いや、ルーナさんって、実は一通りの魔法が使える一人前の魔法使いなんでしょ?」

 部屋の中で魔法について教わる。そこはオーゼの教室では無く、生徒組合の宿舎内でだが。
「火の魔法は、魔力をその場の熱量に変えることで使える様になります。……よっと。熱量はエネルギーですから、幾らかの魔力で伝わる方向を固定すれば、生み出した火を飛ばすことだってできるんですねー。あれ、この書類、なんでこんなところに混ざってるんでしょうー」
 ルーナはクルトに魔法を教えながらも、生徒組合内の書類整理をしていた。それはクルトも同様で、こっちは宿舎の窓口代わりにカウンターに立っている。声が聞こえやすい様に、奥へと進む扉は開けたままだ。
「書類については良く知らないけど、火の魔法について一応の知識はあるよ。魔法と飛ばすことができると言っても、飛ばすための魔力変換も覚えなきゃならないんだっけ?」
 見る者が見れば、不真面目に魔法の授業をしている様にも見えるだろう。しかし本人にとっては真剣だ。空いた時間で魔法の勉強を手伝って貰う。そのつもりでクルトは生徒組合の事務役を買って出たのだから。
「ですねー。いきなりなんでもかんでも出来る程甘くないと言うか、やることなすこと訓練と研究が必要なのが魔法ですからー。あ、クルトさーん、これ、相談者名簿の一部でしたー。そっちに置いてくださーい」
 ルーナが開いたままの扉をくぐって、整理していた書類をこちらにやってくる。まだ生徒組合の仕事も十分に覚えていないクルトは、とりあえずカウンターに頬杖を突いている。
「へえ、こんな物もあるんだ。いちいち相談しに来た生徒の名前を登録してるの?」
「生徒の相談に乗っていると言うことが存在意義みたいな物ですしー。それに、中には節操も無く何度も生徒組合に顔を出す人もいますから、そう言った人の情報は前もって必要でしょう?」
 なんだかんだで生徒組合も忙しいらしい。生徒組合の仕事も、早めに覚える必要があると考えるクルト。余計な厄介事を背負い込んだ可能性もあったが、他に魔法を学ぶ方法が無い訳で、仕方の無いことかもしれない。
「そう言えば、仕事と勉強の途中ですけど、わたしが経験を持った魔法使いだって、どうしてわかったんですかー」
 ふと思い出した様に顔をこちらに向けるルーナ。本人曰く、隠すつもりは無かったが、話すことでも無かったので話さなかったらしい。
 ルーナ自身にとってはそれで良かったかもしれないが、こっちにとっては魔法を教わる相手がそれに値するかどうかの判断材料なのである。出来れば最初に話して欲しかった。
「そりゃあ、魔力量の増やす訓練方法を“経験上”知ってるなんて言われたらね。好くなくとも、自分なりに魔法を体系化できてる人にしか言えない台詞でしょ」
「そう言えばそうですねー。自己流の魔法訓練を考え付けるのは、魔法を十分知ってる人ですから」
 そしてルーナはその知識を持っている人物と言うことだ。クルトにとっては、師が留守の間、魔法を教わるのに適した相手でもあった。だから無理を言って生徒組合にも参加させて貰ったのである。
「魔法大学の経験者入学なんだってね。あれって確か、それなりの腕が無かったら無理だったと思うけど」
「実技だけですからねー。力が使えなかったり足りなかったりしたらすぐにアウト」
 その代わりかは知らないが、入学後の自由は筆記試験で入った生徒よりも保障されている。特定の教室で学ばなくても許されるくらいの自由だ。
「入った教室の先生から、魔法を習う事が苦手だって言われてたのも、もしかしてそれが理由?」
「うーん。どうでしょうかー。先生の授業を受けていた時、質問されたので、授業内容の問題点を幾つか指摘したり頑張っていたんですけどー」
 恐らくそれが問題だ。自分より知識を持っているかもしれない生徒を育てる側からしてみれば、問題児であることに変わりなく、確かに魔法を習う事が苦手でもある。何故なら教わる前に知識と経験を持っているのだから。
「まあ良いけどね。教わる側からしてみれば、先生の知識があって困ることなんてないんだし」
「先生だなんてー。照れちゃいますねー」
 恥ずかしがってルーナは頭を掻く。随分と間抜けかつ幼い姿に見える。これでクルトより年齢が上で、魔法使いとして何歩も先を行っているのだから驚きである。
「でも、勉強ばかりしてられませんよー。事務員になった以上、生徒組合の仕事もしっかりして貰わないとー」
 ルーナの言葉と合わせる様に組合宿舎の扉が開く。ベルが鳴り、相談者が顔を出した。
「こんにちは、生徒組合にようこそ」
 出来る限りの笑顔で応対する。さてこの相談者、生徒組合への要求が、自分の拙い知識と慣れる経験で解決できる問題であれば良いのだが。
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