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彼方への鎮魂歌《レクイエム》 作者:入堂 甘露

一章 愚者の求道

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切り裂きジャックと阿鼻叫喚

更新が遅れ、申し訳ありません。
バイトが重なり投稿が遅れました。
その分しっかり書いたのでよろしくお願いします。
エリスへ配属先を伝えた男、バルデス・トードは、気に入っている茶葉を使った紅茶を味わっていた。

「エリス君には、悪い事したかなぁ?入隊一年目なのになぁ。まさか、南区の配属とは思わなかったよ。エドワード君とは、仲良くしてくれないと死んじゃうよって言っておくの忘れてたー。エリス君メンゴ。」

「なんで、エドワード氏と仲良くしないとダメなのですか?」

バルデス一人のはずの部屋に、まだ声変わりもしていない少年の声が響く。部屋にはバルデス以外誰もいない。

「厳密に言うと、傭兵団〈レクイエム〉を怒らせるなっていう意味なんだ。」
「それは何故?」
「二年前に、北の軍事国家〈ラリオトリス〉と小さな戦争があったの憶えてる?」
「えぇ、それがどうしたのですか?」
「アレ、本当はウチと〈ラリオトリス〉との全面戦争になるはずだったんだ。」
「えっ?!でも、それと〈レクイエム〉に何の関係があるんですか?」

少年の声がおおきくなるがバルデスはどこ吹く風と紅茶をに一飲み。そして、口を開いた。

「だからね、戦争の時、彼等はコッチ側の兵士して戦ってくれてね。敵の将校二十人中十九人の首を持って帰ってきたんだよ。」
「そ、そんなことが出来るなんて、いったいどれほどの規模の組織なのですか?」
「ハハハ、組織なんてもんじゃないよ。この任務を実行した時のメンバーはたったの十数人程度だよ。」
「それは、恐ろしい。誰が雇ったのですか?」

少年の声の疑問はもっともだ。なぜなら、傭兵団とは利益がない限りは働かない。国のために戦うことが無いのだ。だれかが雇わなければ一年前の戦争の戦果はないのだ。だからこそ、軍や貴族、特に大きな権力を持つ誰かが雇ったのだ。その疑問をバルデスに投げ掛けると、バルデスは、軽い口調で答えた。

「あぁ、彼等を雇ったのは僕だよ。」

ケロリと答えたバルデスに少年の声は困惑した。

「何故ですか?貴族に飼い慣らされた『王属騎士団』が信用出来ないのはわかります。しかし、あなたを主とする『黒の軍鬼シュバルツレフィア』を信用せず、あんな金だけで動くならず者達を使役したのは何故ですか?‼︎お答え下さい。」

少年の声がバルデスを責め立てる。そして、問われたバルデスは、バツが悪そうに頭をボリボリと掻くと目を細めて、真剣さを顔にうかべる。

「だって彼等、料金の割りに凄く働くから頼みやすいし、それにあそこの団員の中には『王属騎士団』の『剣聖』やウチの隊員にも全く劣らないもの、もしくはウチの隊員よりも強い者がいる。ザミル君や、リザ君、副団長であるクロエ君なんかはとんでもなく強いよ。そして、一番の目的は来るべき時のための戦力として友好的な関係を築いておきたいからさ。」

そう言うと、バルデスは紅茶を一飲み、飲み干したことに気づき、にまりと笑う。まるで、これから起きる出来事が、楽しみでしょうがないと感じられるほど。

「そーゆー事だから、わかってくれた?」
「ハッ、失礼しました。それでは私はこれで失礼させていただきます。」

少年の声は凛としていた。

少年の声が聞こえなくなり、辺りに誰も居ないのを確認すると、バルデスは机の引き出しからワインを取り出し、カップに注いだ。

「まぁ、一番怖いのはエドワード君なんだけどね。エリス君には是非頑張って欲しいね〜。」

そう言って、バルデスはワインを飲み干した。




エリスが〈アルビエ〉の扉を開け、店の中に入るとそこは阿鼻叫喚の様相を表していた。

「だ・か・ら!わいのプディング食ったんやろ?ミーナ、正直に言えば、お前のプディングは今日だけわいのもんや!だから、正直に言えや!言わんかったらわかっとるやろな、一週間お前のプディングはわいのもんや!」
「だから、食べてないよ。なんで私なのさ?!大体、ザミルが食べちゃったんじゃないの、食い意地張りすぎだよ!」
「えぇ、度胸しとるやないか。あぁ、わかった。とりあえず、てめえのプディング寄越せや!」

店の中は床には真っ赤なカーペットが敷いてあり、壁には茶色の塗料が塗ってあり照明にはシャンデリアが取り付けられている。まるで、貴族の屋敷のように見える。しかし、その中では数人の男女がまるで、貴族がするとは思えないような荒々しい会話をしていた。ザミルと呼ばれている男とミーナと呼ばれている女の子との会話をエリスは茫然と眺めていると、トントンと誰かの指で肩を突つかれた。

「‼︎?」

驚いて後ろへと振り向く。そこにいたのは、男性とも女性とも言えない中性的な人物であった。

「あの、今はまだ準備中で営業してないの。六時頃から営業開始なのでもうちょっと待ってくださるかしら。」

声まで中性的であったが、言葉遣いが女性のようだったので、後ろから声をかけてきたのは女性だと思うことにした。
その女性に促されるまま、店を後にしようと思ったのだが、ここで冷静になりエリスは女性に話し掛けた。

「すまない、まだ帰るわけにはいかない。私は『国属騎士団』の南区担当部隊隊長エリス・ラホレットだ。本日は、そちらの団長と話をしに来た。」

エリスが『団長と話をしに来た』と言った瞬間、さっきまでの喧騒が嘘のように静まる。エリスは何か失言したのでわないか。と心配したがさっきまで話していた女性が手を、パーンと叩きそこから女性は口を開いた。

「団長のお客さんだミーナ、ザミル、静かにしなさい。あっ、隊長さん、自己紹介が遅れましたね。私は副団長のクロエといいます。一応、男性です。」

エリスはクロエが男だったことにも驚いたが、より驚かされたのはその後、クロエの口から聞いた言葉についてだった。

ーー副団長?こんな優男が?

エリスの疑問を悟ったのか、クロエはクスクスと笑いながら口を開いた。

「こんな優男が副団長なんです。副団長といっても、基本的に戦闘には参加しないので、こんな優男でもなんとかなるですよ。」

柔らかい口調で喋られたのでエリスはクロエについて問いただすことができなかった。しかし、エリスも優秀なのだろう。すぐに別の疑問をクロエに放つ。

「団長は、何処だ?」

そう聞くと、クロエは困ったように眉を歪める。

「団長、朝からいないんですよ。ミーナ、団長何処にいるか知りません?」

そう問われたミーナは人差し指を口には当て、うーんと言う声を出すと、その直後、開いた左手の上に握った右手を置く。

「リーダーは朝ご飯食べに行ったよ。」

ミーナがそう言った直後、階段から一人の男が降りてきた。その男は、三十代ほどの年齢に見え、黒の髪の毛を金に染めたのだろう、黒髪は頭の旋毛付近だけで後は全て金髪だ。無精髭を生やしており、寝起きだと言うことがわかる。

「てめえ等、うるせえよ。おい、そこの嬢ちゃん、団長が待ってるぞ。」
「バルトおはよ。」

ミーナがバルトに挨拶をすると、バルトはめんどうくさそうだがちゃんと挨拶を返した。バルトはザミルとクロエとも挨拶を交わした後、エリスへと振り向いた。

「メンバーは全員、団長室に集合、嬢ちゃんもついて来な。団長の所に連れて行ってやる。」

バルトはそう言うと踵を返し階段を登って行く。それに続くようにミーナ、クロエ、ザミルの順でバルトの跡を追う。エリスも慌ててその後を追いかけた。

階段を登り、二階に着くと一番奥の部屋まで着いて行く。バルト達は次々と部屋の中に入り、エリスもその後に続く。

エリスは困惑した。何故なら、バルト達の他数人の男女に囲まれた部屋の中で一人だけ座っているのは団長なのだろう。しかし、それを認めたくなかった。そこに座っているのは、先ほどまで一緒にいたエドワードだった。

「よっ、エリス。さっき振り。」
「何故、キミがここにいるんだ?」
「言ってなかったけ?俺、団長なんだよ
。」
「しかし.〈マロン〉では違うと言ったではないか。」
「『団員ではない』と言っただけだ。団長なんだからな。」

その一言でエリスは激昂した。剣を抜刀し、エドワードを傷つけようとしたわけではない。ただ、謝罪をさせようとした。しかし、エリスの剣はエドワードには届かなかった。

「流石に此処でこうゆう事はしないでもらえますか?それに僕以外の二人は、本気で殺そうとしますし。と言うか、エド?この女性とはどこで会ったんですか?」
「朝飯〈マロン〉で済ませようと思ってな。そん時、エリスとは知り合ったんだ」

それは本当のことだ。朝、自主的にスラムの南区をパトロールしていたエリスは、小腹が空いたので食事処〈マロン〉と言う店で食事を取った。店の中には、エドワードとマキナと言う、茶髪の美少女がいた。
その時、エドワードはまだエリスに自分が傭兵団〈レクイエム〉の首領だとは教えなかった。おそらく面倒なことになると思ってのことだろう。
それよりも、気にするべきはそこではない。
剣を抜こうとしたエリスだったが、剣の柄をクロエに抑えられていた。クロエの声は穏やかだが、目には明らかな殺気がやどっていた。しかし、クロエだけならそこまでたいしたことはないと思い、剣を抜こうとしたらエリスの身体と首は泣き別れしていたことだろう。何故なら、先程までザミルと、口喧嘩をしていたミーナという少女と先程までエドワードの座っている椅子の斜め後ろに立っていた、腰まである金の髪をポニーテールのように束ねた女性が、エリスの首筋に当たるギリギリの所に二つの刃を置いていたからだ。もしエリスがクロエを押し退け、エドワードに切りかかろうとすれば、エリスの命は消えていただろう。
仕方なく剣を鞘に収めた。
そうすると、先程エリスの首筋に刃を突き立てようとした二人のうち、金の髪をポニーテールにした女性が口を開く。

「主に対して、刃を向けよう事ならばその首、飛ぶと思いなさい。」

続けてミーナが喋りかけてくる。

「も〜、ダメだよ騎士のお姉さん。リーダーを傷つけたりしたら、私が殺しちゃうよ。」

さっきまで、プディングについて激論を交わしていた少女とは思えない程の冷めた声だった。

「悪かったな、エリス。軽いジョークのつもりだったんだがな。」

エドワードは苦笑いをしていたので本当に悪気があったわけではないのだろう。そう思うと、自分も少し怒り過ぎたな、と反省する気持ちも出てくる。しかし、エリスはそれを抑えもともとするつもりだった話を始める。

「傭兵団〈レクイエム〉の団長であるエドワード殿で間違いないな?」
「ああ、それで南区担当部隊長殿はなんの御用で?」
「情報を提供してもらいたい。」
「ああ、いいぜ。どんな情報が欲しい。」
「近頃、ここ南区で起こっている通り魔事件についてだ。どんな些細な情報でも構わない。教えて欲しい。」
「通り魔ね……ああ、思い出した。アレはウチでも犯人を探していてね、情報を提供する代わりに、そちらと共同戦線を敷きたいと思う。」
「ああ、いいだろう。こちらも人手は多いに越したことは無いからな。それでは、情報の提供をお願いする。」
「最初に起こったのは二十日前の夜だ。スラムじゃ人が死ぬくらいよくある事だが、明らかにおかしい殺しもある。その一つがこの事件だ。二十日前から昨日にかけて合計十五人近く殺されてる。被害者は全員首と心臓を奪われている。近くにそれが無いとゆう事は、犯人が奪っている。多分、犯人はもっと殺すつもりだろうな。ここまでは、そちらも知っているよな?」
「ああ、その他には何かあるか?」
「犯人は南区の地理については相当詳しい。つまり、逃げようと走り出したら止められないとゆう事だ。」
「ありがとう。参考になった。それで、共同戦線の方はどうする。」
「そちらはそちらでパトロールしてくれればいい。こちらもこちらで動くから。でも、エリス、アンタは俺と行動してもらう。」

エドワード以外のメンバーに動揺が走るが、エリスからすれば、エドワード達について知ることができるので、悪い話でもなかった。

「わかった。よろしく頼む。」
「じゃあな。今日の夕方、騎士団の屯所にむかえにいくよ。」
「ありがとう。それではまたな。」

そう言うとエリスはドアを開き〈アルビエ〉から外へ出た。
エドワードはそれを確認すると、みんなに、椅子に座るよう促す。全員が座ったのを確認すると、エドワードは口を開く。

「それじゃあ、見回りの班決めるぞ。とりあえず、俺はエリスと行動するが、後もう一人来たいやついるか?」
「じゃあ、リーダー、あたし行きたい。」

そう言って手を上げたのはミーナだった。

「よし。じゃあ俺はミーナと行くぞ。残りは二人一組のチームで行動してくれ。リザとクロエ、ザミルとバルト。これでいいな。」
「ええ。」

そう答えたのは、クロエ。

「オッケーや。任しとき。」

ザミルはいつもの調子で答える。

「ハイハイ。わかりましたよ、リーダー。」

気怠げにこたえたのはバルト。

「主よ、任せてください。」

そう答えたのは金髪ポニーテールの女性、消去法で行くと、この女性がリザなのだろう。
全員の賛成を得たエドワードは大きな声で部下を鼓舞する。

「仕事はいつも通り、気ぃ抜かずに行くぞ!」

そう言うとエドワード達はそれぞれの仕事を始めた。
最近、エロについて考える事が多くて困る。マイッチング。
〈p〉〈/p〉 なろう特殊ランキング http://yomou.syosetu.com/rank/list/type/daily_total/ 小説家になろう 勝手にランキング←もし面白ければ、ここをクリックしてください
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