安倍晋三首相は9月初旬に検討していた中国訪問を見送ることを決めた。菅義偉官房長官が24日午前の記者会見で明らかにした。中国が北京で9月3日に開く抗日戦争勝利70年記念式典に米欧首脳は出席しない方向で、首相も足並みをそろえる。安全保障関連法案の国会審議が大詰めを迎えることも考慮した。
日中関係の改善を進めるため、習近平国家主席との首脳会談は引き続き検討し、秋の国際会議などでの開催を探る。
菅長官は式典欠席の理由を「国会の状況を踏まえた」と説明。「中国から様々な説明を受けていたが、出席を前提とした調整はしていない」と述べた。首脳会談については「国際会議などの機会を利用して首脳同士が率直に話し合う機会を設け、関係の発展に取り組みたい」と語った。
中国は記念式典への出席を各国首脳に要請。ロシアのプーチン大統領や韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は式典に合わせて訪中する見通しだ。
首相は当初、戦後70年談話などを踏まえ、式典当日を外した2日や4日を軸に訪中する案を検討。7月には谷内正太郎国家安全保障局長が訪中し、李克強首相と会談するなど地ならしを進めていた。
ただこの時期は今国会中の成立をめざす安保法案の参院審議がヤマ場を迎えている可能性がある。政府内には軍事色や反日色の濃い式典前後の訪中は誤ったメッセージを送ることになるとの慎重論もあった。