広島平和祈念館:被爆手記13万編、データベース化
毎日新聞 2015年08月06日 09時30分
原爆被爆者の手記約13万5000編を所蔵する国立広島原爆死没者追悼平和祈念館が、被爆時の状況などから手記を検索できるようにするデータベース化を近く終えることが分かった。広島、長崎両市にある祈念館の端末で、被爆した場所や被爆時の年齢などのキーワードから読みたい手記を探せる。端末で全文が読めるよう文字データ化も始めており、既に約1000編を完了。将来はインターネット上での掲載も視野に入れている。被爆70年の遺産といえる貴重な記録を継承し、活用する新たな可能性が生まれつつある。
同祈念館は2002年開館。国が1995年と05年に収集した被爆体験記や、学校や職場などの団体がまとめた手記集、個人から直接寄贈を受けた手記などを所蔵し、都道府県別の冊子などに分類している。執筆者が、被爆した時の年齢▽被爆した場所▽学校や軍隊など当時の所属▽手記に登場する人物−−など数十項目について、1編ずつ登録作業を進めてきた。
12年からは、手書きの文字を文字データに置き換える作業も本格的に着手。今年3月末で1002編まで終えた。路面電車内で被爆し、2週間後に死亡した男性(当時56歳)の遺稿など貴重な証言記録もある。
また、広島市が50年に市民から集めた幻の「原爆体験記」についても7月末から文字データ化も始めた。「原爆体験記」は165編から18編を冊子にまとめたが、占領下だったため出版は中止。関係者らに配布されただけで、朝日新聞社が65年に11編を加えて刊行した。原本は広島市公文書館が所蔵し、今回は葉佐井博巳(はさい・ひろみ)広島大名誉教授がデータ化した手記の確認を進めている。
いずれも当面は館内での閲覧・検索のみだが、将来的には遺族らの許可が得られた手記をインターネットから閲覧可能にする。
同祈念館は「被爆直後の手記は生々しい描写を含み、最近の手記も戦後の人生や現在の平和への思いがつづられ、貴重なものばかり。誰もが読みやすい形で提供し、より多くの人に活用してもらうことは当館の使命だ」としている。【高橋咲子】