円周率。
定義:円の直径に対する円周の長さの比のこと。
英語では”the perimeter of a circle” “circle ratio” あるいは単に”Pi”と呼ばれます。
今回は、円周の求め方・円周率とは何なのか・なぜ無限に続くのか=割り切れない理由について小学生にも分かるように書いていきます。
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(1)円周の求め方
円周率とは、直径を何倍したら円周になるかを表す数字です。
ですから、半径をrとしたら、その2倍が直径2r。
その直径(2r)に円周率Pi(π)をかけることで、円周の長さ(2πr)が求まります。
(2)円周率はどうやって求められるのか?
(1)からも分かる通り、円周の長さを求めるにはまず、円周率を求める必要があります。
皆さんは円周率を単に3.14と習ったと思いますが、これは実用性を考えて簡略化されたもの。
円周率は正確には3.141592…と小数点以下の数字が無限に続いていく数であることが分かっています。
皆さんはこの話を聞いた時、「小数点以下の小さな数をどうやって正確に求めているんだろう?」と不思議に感じませんか?
その答えをズバリ言うと、「多角形による挟み撃ち」を使います。
上図は、
①直径1cmの円
②直径1cmの円がすっぽり入るような八角形(=外接八角形)
③直径1cmの円にすっぽり入るような八角形(=内接八角形)
の3つの図形を重ねあわせたものです。
図を見ると、
明らかに「②外接八角形の外周 > ①円周 > ③内接八角形の外周」ですよね?
そして、円の外周の長さは円周率×1cm
②の外接八角形の外周の長さを計算すると約3.313708cm
③の内接八角形の外周の長さを計算すると約3.061467cm
ですから、
3.313708 > 円周率 > 3.061467
であることがこの時点で分かります。
参考:円に内接する正多角形 円に外接する正多角形/ke!san
(※円の半径を0.5cm=直径1cmで計算)
次に八角形の角の数を一気に増やして、二百角形にしたらどうなるか計算してみましょう。
直径1cmの円の外周の長さは変わらず、円周率×1cm
直径1cmの円に外接する二百角形の外周の長さは約3.141851cm
直径1cmの円に内接する二百角形の外周の長さは約3.141463cm
「外接多角形の外周 > 円周 > 内接多角形の外周」の大小関係は二百角形になっても同じですから、
3.141851 > 円周率 > 3.141463
と求まり、この時点で円周率は3.141○○○…と続く数であることが分かります。
このように、角の数を非常に大きな値にすればするほど、円周率の正確な値を絞り込んでいくことができるんです。
(3)「ループせずに無限に続く数」の存在とその正体
さきほど、円周率は3.141592…と小数点以下の数字が無限に続いていく数だと言いました。
ただ、単に小数点以下の数が無限に続くだけなら1/3=0.3333…もそうであり、
さして驚くほどの物でもありません。
しかし、
円周率はループすることなく無限に続いていくという特殊な性質を持っています。
数の世界には、このような「ループすることなく無限に続く数」がたくさん存在するんです。
不思議ですよね。
この円周率を始めとした「ループすることなく無限に続く数」は無理数と呼ばれています。
例えば、√2×√2=2となるような数、√2(ルート2と読みます)がこの無理数に当たります。
(4)無理数とは、分数で表せない数
③の話を聞いて、「ループせず無限に続く数なんて謎すぎる!」と思った方もいらっしゃると思います。
その謎を解く鍵は、それとは反対に「無限には続かない数」にはどんな性質があるかを考えることで分かります。
というのも、実は「無限には続かない数」には「必ず分数で表す事ができる」という性質があるんです。
言われてみれば当たり前のことかもしれませんが、これは非常に重要なことです。
なぜなら「無限には続かない数」が「必ず分数で表せる」のならば、裏を返せば
「分数で表せない数」こそが、円周率を始めとした「ループすることなく無限に続く数」の正体だということになるからです。
円周率を分数で表す事ができないことの証明には難関大学入試レベルの知識(後述)が必要ですが、√2を分数で表す事ができないことの証明は簡単にできます。
この証明から、√2は整数による分数では表せないことが分かり、
整数による分数では表せないことから、√2は無限に続く数であることが証明されました。
全く同じ手法で、√3も無限に続く数であることが証明できます。
(5)円に内接・外接する多角形の世界では、無理数がよく現れる
√2や√3が無限に続く数であると分かったところで、(2)の「円に内接・外接する多角形の外周」の話に戻りましょう。
この「直径1cmの円に内接・外接する多角形の外周の長さ」、実は無限に続く数であるケースが多いことが分かっています。
たとえば、
直径1cmの円に内接する四角形の外周は2×√2cm
直径1cmの円に外接する六角形の外周は2×√3cm
直径1cmの円に外接する十二角形の外周は(24 – 12×√3)cm
このように、直径1cmの円に内接・外接する多角形の世界では無限に続く数というのは全然珍しくない存在なんです。
(6)円とは「円に内接する無限多角形」である
ここまで来れば、円周率がなぜ無限に続く数なのかも納得がいくはず。
多角形の角を増やせば増やすほど円に近付いていくことからも分かる通り、円は無限多角形のようなものです。
「直径1cmの円に内接・外接する多角形の世界では無限に続く数というのは全然珍しくない」
→「ゆえに、直径1cmの円に内接する無限多角形とも言える円の外周・円周率も、無限に続く数であることは何ら特別なことではない」
という訳です。
まとめ
①円周率とは、直径を何倍したら円周になるかを表す数字
②半径をrとしたら、それを2倍にした直径(2r)に円周率π(Pi)をかけることで円周が求まる
③円周の内外を多角形で挟み込み、その多角形の外周を調べる事で、円周率の正確な値を絞り込んでいく事ができる
④円周率はループすることなく無限に続く数。このような数は無理数と呼ばれ、√2や√3など数多く存在する。
⑤1cmの円に内接・外接する多角形の世界では、無理数がよく現れる
⑥ゆえに、無限多角形たる円の外周を表す円周率も、ループすることなく無限に続く数である事は何ら特別な事ではない
今回の説明は、分かりやすかったでしょうか?
円周率が無限に続く数である=無理数であることの証明には、①シグマ「∑」②三角関数③微積分という3つの武器を持っている必要があり、高校生はおろか難関大学の理系学部合格者でも自力で証明するには骨が折れるものです。
ただ、今回の説明でなんとなく「あ~円周率は分数で表せないから無限に続くのか~。多角形や円の世界だとこういう数は珍しくないなんて凄いな~」くらいには理解していただけたかなと思います。
もし、この記事で「無理数」の不思議さに興味を持っていただけて、「無理数とはどんなものなのか?」をもっと深く勉強する気になっていただけたら嬉しいです。
それでは、明日も当たり前の事をアタリマエ!にやっていきましょう!ではでは!