サムスン電子は昨年5月に最先端の半導体工場を完成させた陝西省西安市は黄土地帯にある。黄河流域にあり、肥沃な土地で農業が発達した。そのおかげで中国古代文明の花が開いた。秦の始皇帝の兵馬俑(よう)もここにある。ところが、現在の基準で言えば住みやすい環境ではない。黄土地帯を吹きすさぶ風は非常に強い。水にも黄土の成分が含まれている。最近はスモッグに苦しんでいる。半導体は空気中の微細粒子に弱い。サムスンは西安工場の防じん設備に韓国の1.5-2倍の費用をかけたという。
サムスンがほこりだらけの西安に半導体工場を建設した理由は公然の秘密だ。習近平国家主席の故郷が陝西省であることと深い関連がある。現在中国で「指導者」と呼ばれる共産党政治局員25人のうち7人が陝西省で生まれたか、学んだ経験があるか、勤務経験がある。サムスンは西安工場の70億ドル(約8700億円)を投資した。中国国内の外国企業の単一プロジェクト案件としては最大規模だ。李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長は昨年だけで習主席と3回も会った。
現代自動車は昨年4月、河北省滄州市に第4工場を着工した。滄州はかつて隋の煬帝が建設した京杭大運河(北京-杭州)の物流で栄えたが、現在は遅れた地域だ。現代自は滄州を選んだ理由について、「北京工場と215キロメートルの距離にあり、既存の部品下請け業者を活用でき、部品物流基地がある天津港とも近いため」と説明した。しかし、ある現地記者は「滄州の副市長が誰か調べてみろ」と話した。2011年に副市長に就任した賈発林氏は12年末まで最高指導部の一員だった賈慶林元政治局常務委員の弟だという。滄州は賈慶林兄弟の故郷である泊頭に近い。現代自と賈慶林氏のコネも公然の秘密とされる。賈慶林氏が党書記を務めた北京市、福建省アモイ市のタクシー車両は現代自のアバンテとソナタであることが物語っている。
このように中国にコネがあるサムスン電子と現代自だが、最近は中国市場で苦戦している。サムスン電子のスマートフォンは昨年第2四半期までシェア1位だったが、今年第1四半期には4位に転落した。北京現代汽車の今年上半期の販売台数は前年同期を7.7%下回った。6月の販売台数が急減し、資金事情が切迫したのではないかといううわさも流れた。一方、日本と中国のメーカーは好調だ。
習近平政権が発足するまで、中国事業にはコネが大切だった。工場の許認可、取引先などがコネで決まることが多かった。当時韓国企業は西洋の国々よりも中国のコネ文化を早期に理解して適応した。しかし、現在はコネが反汚職運動で一斉に力を失っている。韓国企業にいくら強いコネがあっても中国企業と付き合うのは困難だ。西洋と日本の企業は最初から技術とマーケティングで勝負をかけた。中国で韓国企業が誰とのコネをつくろうとしているといったうわさはもはや聞こえて来ない方がよい。