反対にドイツは最もユーロ通貨の恩恵を受けた国だ。ドイツ経済の体力に比べてユーロが弱かったため、ユーロはドイツの輸出競争力を日に日に押し上げていった。ユーロ圏19カ国全体の直近1年の経常黒字額は3028億ドルだが、このうちドイツの黒字額が95%を占めている。米国エール大学のスティーブン・ロッチ教授は「ドイツで経常黒字が急増しているのはユーロ通貨の魔法のおかげ」と指摘する。仮に欧州各国が以前のようにそれぞれが自国通貨を使っていたら、為替相場の調整機能によって国家間の貿易収支が適切なバランスを保っていたはずだ。ギリシャがユーロ圏にとどまったまま競争力を回復するためには、方法は一つしかない。貨幣価値を下げることができないのだから、構造改革によって生産性を高め、また人件費などの経費を削減して商品やサービスの価格を引き下げるのだ。
最近の韓国経済は長期低成長という慢性疾患を患っている。為替レートという「切り札」は、日本がアベノミクスによって先手を打ったため、韓国が使うのは難しい状況だ。残る道は構造改革を通じた経済の体質改善だが、ずたずたになった国内世論が原因で出口を見いだせずにいる。もう一度「災い転じて福となす」となるような出来事が必要な時期ではないかと思う。今回は、南北統一がそのような役割を果たせるのではないだろうか。統一という巨大な外的要因が発生すれば、政治権力の構造再編、労働改革、貨幣改革などさまざまな課題を一気に解決できるような気がする。