アイリスオーヤマ:玄関に靴箱がない米国で収納ケース人気
毎日新聞 2015年08月23日 12時05分(最終更新 08月23日 15時23分)
◇品質重視で認知度アップ
家の中でも靴を脱がない米国では、玄関に靴箱がない。靴は自室のクローゼットで服と合わせて選ぶ。そこで人気なのがアイリスオーヤマ(本社・仙台市)のプラスチック製透明収納ケースだ。購入時の紙箱にそのまま保管し、外からはどの靴か分かりづらかった不便さを解消したのがヒットにつながった。
今ではどこにでもある透明収納ケース。専門誌ダイヤモンド・ホームセンターによると、1989年に同社が開発して発売。2014年に国内累計販売は1億個を超えた。
とはいえ発売直後から他社が追随し価格競争は厳しかった。そこで92年、金型設備の再利用も兼ねて米国に進出すると日本同様にヒットした。さらに靴の収納という想定外の使われ方がされていることも分かり、靴の大きさに合わせた専用ケースを売り出すと、販売量はさらに伸びた。
一方で、米国でもすぐに価格競争になった。広い国土にいくつもの工場を持ち流通コストが抑えられる現地企業に対し、同社は全米に二つしか工場がない。安さを競っても勝ち目がなかった。そこで品質の良さをアピールすることにした。例えばケースの縁に材料がはみ出す「バリ」。低価格品ではよく見る雑なつくりも、同社製ではまずない。こうした仕上がりの良さを前面に押し出し、中・高級品を扱う小売店で売り場を獲得していった。すると認知度が上がり、ホームセンターなど量販チェーンでの取り扱いも増えた。
いまでは米国での年間売り上げが約1500万個、累計販売個数は1億6500万個に上る。98年には欧州にも進出し、年間約300万個、累計2600万個売れている。米国と欧州では売れ筋が異なる。米国では投げても壊れない頑丈な製品、欧州ではフタがカラフルな製品が人気だ。欧州ではベッド下や棚上などに置く隙間(すきま)収納ケースも人気だが、米国ではさっぱりだそうだ。【山越峰一郎】
◇「暗闇で手探り」きっかけ
アイリスオーヤマの透明収納ケースは、大山健太郎社長の「不便」な体験から生まれた。釣りに行くため早起きした大山社長は、暗闇の中で家族を起こさずに服を探すのに苦労、探すのに便利な透明ケースを思いついた。当時CDケースはあったが、耐久性に難があり、素材メーカーと原料から開発した。1958年の創業当初は売り上げ500万円の下請けプラスチック工場だったが、収納ケースをきっかけに飛躍。小型家電などグループで3000億円超の売り上げを計上する生活用品大手に成長した。