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【終戦から70年】原点に立ちいまを問う |
2015年08月14日08時03分 |
ことしの鎮魂と平和への誓いは重いものになるだろう。あす15日は「終戦の日」、70年を迎える。
日本人戦没者はもちろん、日本との戦いや虐殺などによって命を奪われた幾多の国の犠牲者にも心から冥福を祈りたい。
70年を振り返り、戦争で肉親や友人を失い、反戦平和を懇願して戦後の日本をつくり上げてきた戦争体験世代の思いも忘れてはならない。
日本はかつて、アジア・太平洋地域を侵略し、戦争へと突き進んだ。軍部の暴走を誰も止められず、財界もメディアも加担して、おびただしい人命が失われた。
戦後の日本は、その痛切な反省を基に歩んできたはずだ。平和憲法を樹立し、復興や国際協力にも力を入れてきた。経済大国を築いた。戦争の教訓と平和国家の継承は現世代の最大の使命といえる。
ところが、日本はいま、こうした過去を否定するかのような局面に立つ。国会で安全保障関連法案が審議されている。
歴代政権が憲法9条の下で禁じてきた集団的自衛権の行使を可能にし、「専守防衛」の概念を根本から覆しかねない法案だ。多くの憲法学者が違憲と断じている。
にもかかわらず、政府与党は憲法改正の手続きも、選挙で国民の信を問うこともせず、わずか数カ月の審議で成立させようとしている。
この法案をめぐっては、首相補佐官が「法的安定性は関係ない」と発言したり、自民党の若手議員が抗議活動の若者グループに対し、「『だって戦争に行きたくないじゃん』という自分中心、極端な利己的考え」と批判したりもした。
歴史を振り返れば、理解しがたい現象である。
揺らぐ土台
沖縄の基地問題や原発再稼働を見ても、政府与党が民意に向き合おうとしない姿勢は明らかだ。特定秘密保護法の制定や刑事訴訟法の改正による通信の傍受拡大、テレビ報道への介入など監視・統制姿勢も目立つ。
不気味なのは経済界もそんな政権を後押ししていることだ。
背景には世界的なナショナリズムや民族主義の台頭もあろう。
中国の南シナ海や東シナ海における海洋進出や領有権の主張、北朝鮮の核開発も警戒が続く。欧州では、ウクライナ問題を境にロシアと欧米の緊張が高まっている。中東の過激派組織「イスラム国」も依然、勢力を維持したままだ。
4、5月にニューヨークで開かれた核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、核廃絶に向けた最終文書に加盟各国が合意できず閉会した。核保有国の論理が先鋭化した会議だった。
しかし、世界平和に退潮感が漂う時こそ、戦争への教訓と唯一の被爆体験を持つ日本は役割があるはずだ。その日本が逆に歴史認識などで隣国を刺激する場面が増えている。平和国家としての土台が揺らいではいないか。
70年の節目を、戦後の平和の原点に立ち返り、日本のいまの姿を問う機会にしたい。
まずは、時の政権が、原点をどう捉えているか、歴史への真摯(しんし)な姿勢や反戦平和への誓いを明確に示すことができるかどうかを問わなければならない。安倍晋三首相はきょう、戦後70年談話を発表する。 |
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