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「空の利器」活用と規制 将来性妨げない調和大切
（2015年8月16日午前7時12分）
生活の中に浸透する「衛星利用測位システムＧＰＳ」、そして何かと話題の小型無人機「ドローン」。二つの「空の利器」をめぐって活用と規制の論議がにぎやかだ。日進月歩の先端技術に期待は広がるが、その使い方には批判も多い。空の利器は将来性があるとはいえ、活用の場が野放しとはいかないケースも出てくる。さりとて規制の行き過ぎは新技術の可能性を妨げる恐れもある。バランスをいかに調和させるか、難題が突き付けられている。
■ＧＰＳ利用に違法判断■
ともに軍事用システムだが、ＧＰＳはカーナビや徘徊（はいかい）する認知症高齢者の保護など民生用途で貢献している。発信される位置情報は精度、信頼性が高く、警察の捜査に有用とされるが、プライバシー侵害の恐れが常につきまとい、乱用に歯止めをかける議論が欠かせない。
大阪地裁で６月、ＧＰＳを使った警察の捜査手法の是非を争う判決があった。広域窃盗事件で裁判所の令状なしに捜査対象者の車にＧＰＳ端末を取り付け居場所などを探った。公判まで検察側にもＧＰＳ捜査を伝えなかった。被告が起訴内容を認め有罪にはなったが、ＧＰＳ捜査は「プライバシーを大きく侵害した強制処分に当たる」として「違法」判断が下った。
刑事訴訟法にはＧＰＳ捜査について明確な規定はないが、警察庁は２００６年、内規で「移動追跡装置を用いた任意捜査」の要件と上司の事前承認を定めた。あくまで捜査の補助手段との位置付けであり、全国の運用実態も明らかにしていない。
■相次ぐ新たな捜査手法■
ＧＰＳ捜査には適法判断もありケース・バイ・ケースだ。今後、プライバシー侵害の恐れを拭い去れないなら、事件の重大性や捜査手法の必要性などについて裁判所のチェックを受ける仕組みが必要かもしれない。
総務省の通信事業者向けガイドラインの改正で、捜査情報が筒抜けになるとして警察が見直しを求めていた携帯電話ＧＰＳ情報が利用者に通知せずに取得できるようになった。誘拐、振り込め詐欺事件などには威力を発揮するとみられている。
さらに通信事業者など第三者の立ち会いを不要とする通信傍受法改正案も衆院を通過、今国会で成立の見込みだ。国民の自由を脅かす恐れがあると乱用には批判がある。最先端の情報通信絡みで相次ぐ新たな捜査手法の恣意的（しいてき）な導入は歯止めが曖昧で、国民の監視が必要だろう。
■弊害より利益なら推進■
「ドローン」は“空の産業革命”といわれ、新たなビジネスチャンスや雇用に期待が大きい。米家電協会は世界の商用市場が２０年までに１０億ドル（約１２５０億円）に拡大すると予測。軍用・民用合わせ１０年内に１００億ドルと見込む調査報告もある。災害時は被害把握、人命救助に威力を発揮し、過酷な環境にも耐える。物流、広告、スポーツ、エンターテインメントなど各分野で可能性は無限だ。
そんな中、４月に首相官邸屋上でドローン侵入が見つかるショッキングな事件があった。操縦ミスによる落下事故も各地で起きている。政府は官邸など重要施設上空の飛行を禁止する法案と、人や住宅密集地上空の飛行を制限する航空法改正案の二つの法規制を急いでいる。
ドローン空撮映像によるプライバシー問題やテロへの悪用を懸念する声も強く、これまで規制外だった小型無人機に適正なルールが必要だろう。ただ新技術を頭から悪者扱いすることは避けなければならない。
「空の利器」には、まだ安全性や防犯性など課題、弊害はあるが、利益が大きいなら問題点を解決しながら積極利用を図っていきたい。（大塚 潤三）
