(ピンキー桃山)一昨日やったかな…。
テレビ出とったな…。
大したもんや。
(英亜呂真)ご覧になっていただけたんですか?あぁ…見て驚いたわ。
ショーが始まりますので…。
(開演のブザー)
(拍手)こんばんは。
魅惑の一時へようこそ。
(拍手)信じられないかもしれないけどこの世界にはマジックの神様がいるの。
でもその神様はちょっと気まぐれ。
時には人間に魔法をかけ…。
(亜呂真)「その運命さえも操る」
(拍手喝采)
(亜呂真)ファイブ…。
(咳き込む)
(亜呂真)フォー…。
(亜呂真)スリー…。
(亜呂真)トゥー…。
(亜呂真)ワン…。
(桃山)うわぁ〜!!
(拍手)
(北沢継信)ダメだ…開かない…。
ちょっと…!フィナーレでバタバタするなんて何考えてるの!?
(増村幹子)すみません!でも…。
大変なんだ!ここから人が落ちたみたいで…!
(亜呂真)えっ…!?ちょ…ちょっと…離れて!ちょっと…。
窓が…!あ〜!!キャ〜!!
(榊マリコ)頭蓋骨骨折…。
下腿骨にも損傷が見られるわ。
(乾健児)通報では転落死って言ってました。
アルコール…それに煙草の臭いもするわね。
(乾)シガレットケースですかね?…ほらやっぱり。
窓枠ごと落ちた可能性が高いわね。
回収よろしく。
(乾)はい。
でもどうして窓枠が落ちたんでしょう?
(北沢)来週にも修理しようと思ってたんです!本当なんです!業者にももう連絡はしてあったし…!
(木佐貫直巳)わかりましたから!落ち着いてください!こんな事になるんならもっと早く連絡しておいてあげれば…!あぁ…!
(土門薫)あの転落されたのは桃山一男さん62歳この方に間違いありませんね?はい!ピンキー桃山ですよ!ほら!一時はすごい人気でテレビとかもよく出てたんですけどね。
ほら…。
「タネ仕込み忘れたんやないけ?」…覚えてません?ハハハ!さぁ…。
腕のいいマジシャンでした。
でもまぁいろいろあって表舞台からは姿消されてたんですけどね…。
そんな方がどうしてこちらに…?
(直野邦彦)開演前にいきなり楽屋を訪ねて来られたんです。
あなたは…?はい。
英亜呂真のマネージャーの直野と申します。
あっ!英亜呂真…。
最近よくテレビで見ますよ。
ふ〜ん。
へ〜この人のショーだったんだ。
彼女は以前桃山さんの弟子で本来ならお席をご用意するところだったんですがあいにく満席で…。
控え室のモニターでステージも観ていただく事に…。
小屋主さんの言ったとおりですね。
コンクリが劣化して剥離したみたいです。
ここのビルかなり古いですし。
そう。
珍しい銘柄ね。
これ…!ここにあるやつパクったんじゃないですか!?この吸殻もそうね…。
持ち帰って鑑定するわ。
ずいぶん簡単な鍵ね…。
どうして…。
なんか嫌〜な予感するんですけど。
そうね…。
「そうね」じゃなくってマリコさん何かが引っかかってると仕事が長〜くなりそうっていう…。
これが桃山さんの持ち物ね。
聞けよ…!何これ…?何って手品の道具でしょ?手品とか見た事ないんすか?そういえば見た事ないかも。
えっ…!?すいません訊いちゃって…。
謝られても。
(マリコ・乾)うわぁ!
(亜呂真)勝手に触らないで。
誰?警察の人?科捜研の榊といいます。
いい事!?マジシャンにとってマジックの道具は命より大事なの!特にオリジナルで開発したものは他の誰にも知られてはいけない知的財産なの!素人が勝手にいじるなんて以ての外よ!
(乾)すいません!ですが桃山さんがどうして亡くなったのか明らかにするためにはあらゆる事を調べる必要が。
どうしても何も…事故だったんじゃないの?いえ。
事故だと断定するにはまだいくつか引っかかる点が。
引っかかる点…?えぇ例えば…。
どうして桃山さんは内側から鍵をかけたんでしょう?えっ…?モニターでショーを観ているだけなら鍵をかける必要なんてないと思いませんか?さぁ。
何か鍵をかけなければならない事情があったとか…。
ひょっとして…マジックのタネを仕込んでたんじゃないのかしら?え?さっきも言ったとおりマジシャンはタネを人に見られる事は絶対に避けるの。
桃山さんがここでマジックのタネを仕込んでいたとしたら…どう?何のためにタネを仕込む必要が?ショーの後に…私に見せようとしたのかもしれないわ。
タネの仕込みの最中なら誰かが入ってこないように鍵をかけたとしてもおかしくないと思うけど?ありがとうございます!えっ…?おかげで疑問が一つ解けてスッキリしました。
そう…よかった。
あの…もう一つ訊いていいですか?私に答えられる事だったら。
例えばこの部屋の鍵を…。
外からかけるなんて事マジックで出来ませんか?あなた面白い人ね。
そんなマジックがあったら教えて欲しいわ。
次のショーで使うから。
(ノック)亜呂真さん車来ました。
そう。
お疲れ様。
(直野)そうだ…これ下ろしてきました。
こんなの後でいいでしょ!?あ…すいません!
(米倉助教授)窓枠が壊れとったんやろ?窓をこう開けようとしたけども足がもつれて窓と一緒に落っこちたっちゅうところかな?ここ…見てもらえますか?おぉ気管支か?気管支に鬱血とわずかですがただれが見られませんか?あ〜激しく咳き込んだりした時にまれに出るやつやなぁ。
この肺の汚れ具合から見てヘビースモーカーやったみたいやし吸いすぎてムセたんかな?この辺り何かミカンみたいな匂いが…。
(米倉)ん〜?どれどれ…。
こりゃ…オレンジオイルか…?オレンジオイル?あぁ柑橘類の果皮から抽出したエッセンシャルオイルの一種や。
ほら…入浴剤とかに使ったりするやつや!しかしこのおっさん…見かけによらずオシャレやったんやなぁ…。
(榊伊知郎)何ですかこれ?桃山という人が転落した部屋にあった灰皿・吸殻・灰と煙草分析をお願いします。
マーちゃんは人使い荒いね。
その呼び名はやめてください!まやってもいいけどさじゃあね榊君。
帰ったら洗濯当番代わってくれる?だったらゴミ出しはそっちですから!
(乾)窓枠の右側のヘリからなくなった桃山さんの右手中指と人差し指の指紋が出たようです。
窓を開けようと窓枠に手を触れた時窓ガラスごと窓枠が外に落ちた。
で勢い余ってそのまんま一緒に…落ちた!そう考えるのが自然ですよね?やっぱり事故ですよ。
どうして桃山さんは窓を開けようとしたのかしら?どうしてって?控え室のエアコンはショーの間ずっと冷房がついていたの。
わざわざ窓を開ける必要なんてないはずよ。
また嫌な予感…。
もう少し調べてみるしかないわね。
さやか…今日も会えない…!さやか〜!!「パン!」って音…?えぇ。
英亜呂真の助手の増村って娘が控え室の中から…「パン!」って音が聞こえたって。
時間は?8時15分過ぎだそうです。
ショーは7時から8時半の間だからまだショーの最中ね。
えぇ劇場から人が落ちるのを見たっていう目撃情報が8時20分ですからその直前です。
そう…。
あっ!それと亡くなった桃山って男は4日前に拘置所を出所したばかりでした。
服役していたんだ…。
えぇそれも…傷害致死で。
え…?すいません。
(ベルの音)
(フロント)桃山様なら19日からお泊まりでした。
ほぅ。
部屋の通話記録拝見出来ますか?あ…はい。
どうも。
ご苦労様です。
(ノック)
(佐久間誠)はいはいどうぞ。
刑事部長にお願いがあります!え?
(佐久間)なんだって私が榊君とこんな場所に来なきゃならないんだ…。
このディナーショーすごい人気なんです。
刑事部長のコネでもなければ今日の今日で入れませんから。
だからって…公私混同もはなはだしいな君は。
お言葉ですが…部長が英亜呂真のファンだという噂も当然耳に入ってました。
ハハ…それはな…。
でも君もこんな格好するとは珍しいなぁ。
私のじゃありません!…美貴ちゃんに借りました。
あぁ…。
あ…!
(拍手)
(拍手)クロースアップマジック…大掛かりなステージマジックにはないスリリングな緊張感。
魔法の瞬間を目撃する幸運な誰かを皆さんの中から選ぼうと思うんだけど…。
そちらの赤いドレスの女性…。
あぁ君だよ!君!…私?さぁ!拍手で迎えてあげて。
こちらへどうぞ。
(拍手)マジックの神様に見初められた幸運な方…お名前は?榊マリコと申します。
(拍手)ボールはどちらに入ってますか?ポケットです。
本当にポケットでいい?はい。
私の人生にかけて。
フフ…大げさねぇ。
(観客の笑い声)嘘…!残念。
(拍手)では…目を閉じてください。
(拍手)
(拍手)あなたの心を読んで選んだカードを当てる。
そのためには二人の心をあわせる事が必要なの。
では…好きなとこから一枚選んで…覚えてください。
あまのじゃくってよく言われない?この前面白い人って言われましたけど。
それでは皆さんに見せてあげてください。
では…上に載せて好きなだけまぜてください。
あなたの選んだカードがこの中から向きを変えて現れます。
…え?おやおや…二人の心がまだ通じてないようね…。
それではこの上に手を置いてください。
はい。
あなたの選んだカードは…これですね?
(拍手)気持ちが通じたようね。
(拍手)
(亜呂真)あなたのおかげで盛り上がったわ。
本当は内心ビクビクものだったのよ。
科学捜査のプロならマジックのトリックなんて簡単に見抜かれるんじゃないかって。
いいえ。
さっぱりわかりませんでした。
科学とマジックは全然別物だと思いますけど。
そうかしら?マジックは魔法とか不思議とかいう言葉で飾られてるだけでその仕組みはものすごく論理的なの。
論理的…?えぇ。
物理的に起こる当たり前の現象を錯覚やミスディレクションといった心理学で華やかに彩り時には観客を自分の意のままに操ったりする。
合理的で計算し尽くされたプロセスこそがマジックの醍醐味なの。
だとしたら…科学より犯罪に似ているかもしれませんね。
確かに…。
面白いわねあなた。
あの…一つ伺ってもいいですか?何かしら?今夜のディナーショーも大変盛況でした。
テレビでも引っ張りだこのあなたがお世辞にもキレイとはいえないあんな小劇場の舞台に出演されたのはどうしてですか?あの小屋は私にとって思い出の場所なの。
思い出の場所?10年前…あの劇場にレギュラーで出ていた桃山の私は弟子だったの。
取っていただいたカード何です?
(客)ハートの11です。
(亜呂真)弟子といっても桃山は私の事を一人前とは認めてくれなくて…介添えや雑用ばかり。
おまけに猜疑心が強くて弟子の私にさえマジックのタネを一つだって教えてはくれなかった。
バカモノ!!アァッ!
(拍手)
(亜呂真)ステージに立ちたい…ステージでマジックをやりたいその頃はそれしか頭になかった。
なるほど…ではあなたがマジシャンとしてデビューされたのは…。
そのしばらく後ね。
もう8年になるかしら…?桃山さんが服役された後…という事になりますか。
…えぇ。
確か大阪のスナックでしたね事件が起きたのは。
え〜!?わぁすご〜い!絡んできた酔っ払い客と桃山さんは喧嘩になり…。
(椅子を蹴る音)
(男)コラペテン師!われ人騙して銭もうけかい!キャー!!
(ナイフの刺さる音)キャー!!相手は即死。
判決は懲役10年。
仮出所で桃山さんが出てきたのが事件の3日前です。
何が言いたいのかしら?桃山さんが宿泊されていたホテルの通話記録です。
事件前日の昼にあなたの事務所に電話をしています。
さらにその夜あなたのご自宅にも。
あなた確かこう言いましたね!開演前にいきなり楽屋を訪ねて来られたんです。
えっ…!?えぇ…。
あの日桃山さんが訪ねてくる事をご存知だったんじゃないですか?確かに前の日に電話もらったわ。
でもショーを観るとは言ってなかったから。
ショーを観るためではなければなぜ…?あっ…!そうだ。
これ下ろしてきました。
ひょっとして…あのお金は桃山さんに…?確かショーの間ロビーを抜け出してコンビニに行かれてたんですよね?いや…それはその…。
あなた何隠してるんですか!?何をしに!?確かに50万円下ろして来てって頼んだわ。
当然桃山さんに渡すはずだったお金よ。
電話で頼んできたの。
「新しいマジックを考案してステージに復帰するからお金を貸して欲しい」って…。
私は信じてはいなかったけど。
信じてはいなかった?あんな事件を起こした以上復帰するなんて不可能でしょ?マスコミはそんなに甘くないわ。
それに…。
それに?ピンキー桃山は確かに偉大なマジシャンだったわ…。
でも10年近いブランクは命取りだった…。
(亜呂真)あの指ではもうクロースアップマジックは無理。
ピンキー桃山はもはやマジシャンではなくなっていたの。
自分でもわかっていたからこそあんな事を…。
あんな事…?私は彼は自殺したんだと思う。
自殺!?一度頂点まで登りつめた人間があんな事件を起こした挙句昔の弟子に金の無心をする…。
内心は相当プライドが傷ついていたとしてもおかしくはないでしょ?でもどうしてショーの最中にいきなり…!?マジックの世界は日進月歩よ。
言いたくはないけど私のステージを観ているうちに自分はもうとっくに時代遅れだと痛感して自己嫌悪がつのったのかも。
つまり…発作的な自殺だったと?…えぇ。
おい…事件の日になぜその話をしなかったんだ!?決まってるでしょ?彼の名誉のためよ。
名誉…?ピンキー桃山という偉大なマジシャンの名誉のために必要のない事はあえて語るまいそう判断しただけ。
桃山さんが内側から鍵をかけた理由もこっちの方が正解。
わかってみれば簡単な事でしょ?えぇ…。
タネ明かしは以上よ。
もう話す事は何もないわ。
(土門美貴)結局…衝動的な自殺だって発表したみたいですね。
(日野和正)なるほど…自殺だから邪魔されないように内側から鍵をかけたわけね。
納得。
いや…!まだ納得出来てない人が一人…。
相当イラついてるね…。
血糖値落ちてんじゃない?はぁ〜こんな手品グッズまで買い込んで…わぁ!やりすぎっていうか…。
出来すぎてると思わない?は!?ディナーショーで演じたマジックなんだけど私の選んだカードを当てるって言ったのに最初は全然違うカードが出てきたの。
英亜呂真が失敗したんですか?ううん。
多分それも計算のうち。
その後もっと鮮やかに本当のカードが出てくるから観てる人はとっても驚くし感動が大きくなるように逆算してたの!ダイエット明けのビールが美味いのと一緒だな。
何が言いたいんです?開ける必要のない壊れた窓があってそこから人が落ちて死んだ…。
その理由として最初から「自殺です」って主張されたらかえって信じられないかもしれない…。
なんとなくわかるような…。
でも最初は何も言わずに事故とか他の可能性を調べた後になって「実は自殺だと気付いていた」そう言われてそれなりの理由を示されると何だかその答えで納得したくなる。
それってミスディレクションってやつ?まるでよくできたマジックを見せられたみたい…。
(伊知郎)うん…お前がね年老いた父親に無理矢理押し付けた例の分析結果出たよ。
何が年老いたよ…。
ていうかこういうのは仕事場で渡すもんでしょ?公私混同はしないで。
だったら読むな。
えーと…吸殻の唾液は全て被害者のモノ…灰の量にも問題はなし…なぁんだ…。
ため息をつくと早く老けるよ。
あ〜もう手遅れか。
一言多いんだから…!こんな立派な煙草入れがあるのにこっちの中身は手付かずでくすねた方のばっかり吸ってたんだから桃山って男もかなりケチだったんだねぇ…。
…何やってんの?ん…?もうちょっと待って。
もうちょっと…よ〜し!ほ〜ら氷が釣れた〜!科学マジック…今流行りだろ?もう流行ってないし…全然不思議じゃないし。
小さい頃はねぇ目を輝かして「もう1回やってもう1回やって!」ってマーちゃんは催促したもんだけどね…。
ちょっと入れないでよ…!いいじゃないか。
どうせ溶ければなくなるんだから。
もぅ…!あっ…!
(亜呂真)まだ何か…!?しつこい人ねぇ…。
あそこは何なんです?マジックを開発するための工房よ。
へ〜!自宅に工房まであるんですか?他人のやらないマジックを追求するにはどうしてもこうするしかないの。
もちろん中に入れてあげる事は出来ないけど?やっぱり命より大事なんですね。
そんな事より…まだ何か引っかかるわけ?えぇ…いろいろ。
例えば…煙草の事とか。
煙草…?えぇ。
桃山さんのトランクには控え室に買い置きしてあった煙草が4箱ほど入っていました。
なるほど…くすねたってわけね。
これから自殺しようとする人がそんな事するでしょうか?…衝動的だったんじゃないの?そんな事をした自分に嫌悪して自殺したのかもしれないわね。
なるほど…。
はぁ…他には何か?そうだ!これ見てもらおうと思いまして。
外から鍵をかけるマジックを見つけたんです!こうやって…ドライアイスを掛け金にはめた状態なら…。
ドアを閉める事は可能です。
そして時間が経って…これが溶ければ…どうです!?子供だましな上に手垢がついてるって感じ。
気に入ってもらえませんでしたかすいません。
ドライアイスなら誰でも手に入れる事ができる…。
つまり私にも出来るってわけね。
だけど…仮に桃山さんを控室の窓から突き落としてそんなちゃちな細工をして出て行ったとして私がいつそれをやれたって言うの?私はずっとステージにいたのよ?アリバイがある私にあの部屋を密室にする必要なんかないでしょ?あなたがやったなんて一言も言ってません。
あっそ…なら良かった。
ステージにいながらにして控室にいる人間を転落死させるトリック?えぇ。
彼女のショーの時間はおよそ90分。
桃山さんが転落したのは開演して約80分後。
つまり控室にいた桃山さんにその時刻に確実に窓を開けさせる方法さえ見つかれば彼女にも犯行は可能です。
(日野)電話で「窓開けて」って頼むとか?控室には電話はないし桃山さんの所持品にも携帯電話はなかったわ。
窓の外からノックするとか?
(美貴)4階ですよ!
(美貴)犯人はスパイダーマン…?ヘタな考え休むに似たり…ここらで一服小休止と…あら。
いただきます。
証拠品を着服しないで。
いやいや…これおかしいねぇ。
確かさっきいっぱい入ってたのに。
(一同)あっ…!
(伊知郎)ほら。
すごい…マジックみたい。
っていうかこれマジックなんじゃないですか?開け閉めすると煙草が消えるんだ〜。
どういう仕掛けになってるのかな。
あれ…?あれ…?
(笑い)あんまり乱暴すると壊れちゃう。
ちょっとマリコさん貸してみて。
あ…きっとこうだ。
いい?こうやって普通に開けると…煙草はあるけど…でもここを押さえながら開けると…じゃん!
(乾)空だ!あ〜この胃の中も空にして欲しいよ…!いやいやこれ上手く出来てるね。
あれ…?何か張り付いてない?
(伊知郎)え…?マリコさん!
(マスター)あぁ!この人なら確かにお見えになりました。
先週の…木曜日だったかな?その時の事を詳しく話してもらえませんか?あ…はい。
あのねお一人様でふらりとここにお見えになってすいません。
その後に手品を見せてくれましたからよく覚えてます。
手品…。
はい。
煙草がね消えたり現れたりするんですよ!不思議だったな〜!他に何か覚えてませんか?あその後しばらく話をしました。
はい!えっ…!?風船!?うん。
市販のゴム風船のカケラだったの。
(乾)何でそんなものが?マジックの小道具じゃない?ほら風船ピストルで撃って割れるとハトが出てくるとか。
(美貴)フフッ!古〜っ!それと微量だけど化学物質が付着していたの。
はいはい出ましたよ〜。
どうだった!?主成分はクロロアセトフェノン。
何それ?略称CNガス。
わかるように言って!催涙ガス。
ほら防犯スプレーとかによく使われるやつだ。
え…?ちょっと…。
ひょっとして…。
わかった…!
(携帯電話)はい榊…土門さん!?桃山が死ぬ前の日に立ち寄った店で英亜呂真と桃山がらみで面白い話が聞けた。
自殺じゃない可能性がある。
こっちも大事な事がわかったわ。
何だ?殺害方法…マジックのタネ。
(扉の開く音)
(扉の開く音)お時間を取らせて申し訳ありません。
一体何なの!?忙しいんだけど。
全てわかりました。
あのショーの夜何があったのか。
まだそんな事言ってるの?あの夜あなたはショーの直前に桃山さんを劇場の控室へ呼び出しある細工をして控室を後にした。
細工…?部屋を密室にし桃山さんを殺害する仕掛けです。
ショーが始まりますので。
フフ…バカバカしい。
言ったはずでしょ?ステージにいてアリバイのある私があの部屋を密室にする必要なんかないって。
最初私はあなたが犯行後に部屋を密室にする事で桃山さんが自殺したと偽装したのだと思ってました。
でもそうじゃなかった。
逆だったんです。
…逆?部屋を密室にしたのは桃山さんが転落した後ではなく転落する前でした。
何のために?意味がわからない。
桃山さんに窓を開けさせるためです。
桃山さんのシガレットケースから見つかりました。
市販のゴム風船のカケラでした。
例えば…こんな。
おそらくあなたはこれと同じような風船を控室に用意しておいたはずです。
オレンジオイルにはゴムを溶かす性質があります。
膨らませたゴム風船の表面に塗っておけばある程度の時間が経った後にひとりでに破裂させる事も可能です。
量を変えて何度も実験すれば時間の調節も出来るようになります。
そろそろかしら…?
(風船の割れる音)やっぱり!驚かせてすみません。
中身はただの空気です。
でもあなたの仕掛けた風船にはCNガス…つまり防犯用の催涙ガスがたっぷり入っていた…。
(風船の割れる音)
(咳き込む)
(桃山)うわぁ〜!!そしてショーが終わった後あなたは…小屋主の北沢さん達と控室に入ると…。
窓が…!
(北沢)あ〜!!
(幹子)キャー!!
(亜呂真)私がそんな事をする理由がどこにあるの?え…?桃山はもう終わった人間よ。
そんな人をこの私が殺す動機なんかないでしょう?あいにくだけど自白なんて期待しないでね。
マジシャンは自分からは決してタネは明かさないものなんだから。
これはマジックではありません。
現実に人が一人死んでいるんです。
なくなる前日桃山さんはホテルの近くの飲み屋に立ち寄りました。
(拍手)お客さんすごいですね〜!お客さん京都へはご旅行ですか?
(桃山)会いに来たんや…。
昔俺の弟子だったやつにな。
お…お弟子さんですか?弟子っちゅうても…とんでもない女や…。
俺が長い事しょうもない事で留守してる間に俺のマジックを全部自分の物にしたんやからな…。
8年前桃山が過失致死で服役した直後あなたはマジシャンとして華々しくデビューした。
それが出来たのは…師匠だった桃山のマジックを盗んだからだ!教わったのよ!桃山は師匠だったんだから。
桃山さんは弟子のあなたにさえマジックのタネは教えなかった…あなたがそう言ったんです。
人気絶頂の英亜呂真にとってマジックの盗用は決して表には出せないスキャンダルだ!だからこそ…出所した桃山から連絡を受けたあなたは彼が自分をゆすりに来るのだと察知して先手を打った…つまり!お前が殺したんだよ!!おい…。
はい。
工房に対する家宅捜索令状です。
オレンジオイルやCNガスの痕跡が見つかれば十分な証拠になります!その必要はないわ…。
警察まで送ってくれるんでしょ?喜んで。
…おい。
待ってください。
最後に見せたいものが。
マジックでも見せてくれるって言うの?はい。
これはただのシガレットケースではなくマジックの道具でした。
風船のカケラが入っていたという事は風船が割れた時桃山さんはこれを手にしていた。
えぇ…そのようね。
なのに転落した桃山さんの上着の内ポケットからこれが見つかった。
突然の刺激臭に外へ逃げようとした時にわざわざ上着の内ポケットに大事にしまったんです…。
命より大事なマジックの道具だから…。
あなたが教えてくれた事です。
…そうだったかしら?あなたは彼の事を「もはやマジシャンではなくなっていた」そう言いました。
でも彼は…ピンキー桃山さんは死ぬまでマジシャンだったんです。
(桃山)もちろん…最初は頭に来たさ。
けどな…今はこれでよかったと思っとる。
でも…マジック盗まれたんですよね?あの頃の俺は人気にあぐらかいてテングになっとった…。
弟子のあいつにも冷たく当たったし師匠らしいまともな事は何一つしてやらんかったんや。
それなのに…。
あいつは俺が8年間も無駄にしとる間に俺のマジックを生かし続けてくれたんや…。
明日…これをあいつに届けたろ思うとる…。
俺が直に教える最初で最後のマジックや…!桃山さんはあなたを恐喝する気なんかなかった。
それどころか師匠としてあなたとちゃんと向き合おうとしていたんです。
もういいわやめて…!自分が人からマジックを盗んだから誰かに盗まれるんじゃないかっていつもピリピリしてた。
だから誰の事も疑いの目で見る事しか出来なかった…。
桃山さんの気持ちがわかっていればこんな事にはならなかったんです。
人の心を読めるマジックが本当にあったらよかったのに…。
取り調べも素直に受けてるし裏が取れ次第送致されるだろう。
これ…彼女に渡して。
鑑定は終わったから。
あぁ…でもどうして?いつか彼女にこのマジックを見せてもらいたいの。
2015/08/21(金) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
新・科捜研の女2[再][字]
「密室の秘密!消えた殺人アイスマジック」
詳細情報
◇番組内容
舞台は京都府警科学捜査研究所・・・通称“科捜研” 沢口靖子演じる榊マリコが、科学を武器に難事件を解決します!微細証拠から始まるキレの良い科学捜査をお楽しみに!
◇出演者
沢口靖子・内藤剛志・加藤貴子・小野武彦・田中健 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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