原油:過剰感強まる 需要減少 米・中東は生産競争

毎日新聞 2015年08月23日 10時35分

NY原油相場の推移
NY原油相場の推移

 21日のニューヨーク市場で、原油価格(米国産標準油種=WTI)は約6年半ぶりに一時1バレル=40ドルを割り込み、下落に歯止めがかからない状況になっている。背景には中国など新興国経済の減速で需要が減少するとの観測に加え、シェールオイル開発を進める米国と、中東の産油国との生産競争による供給過剰がある。

 米国ではシェールオイルの生産は、原油価格が1バレル=50〜80ドル程度で採算が取れるとされ、それ以下に価格が下がれば生産量は落ち込むとの予想が多かった。しかし、開発企業は効率性の高い井戸に生産を集中させたり、掘削技術の向上に取り組んだりし「生産コストは昨年から2〜3割程度下落している」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之・主席エコノミスト)とみられる。

 米石油サービス大手ベーカー・ヒューズが21日に発表した全米の石油掘削装置(リグ)の稼働数は、前週末から2基増えて674基となった。増加は5週連続で、価格の下落にもかかわらず原油生産量が高止まりしていることを裏付ける。

 中国経済の減速などで原油需要の減少が見込まれる中、これまでは価格の調整役を担ってきた中東諸国にも減産の動きがみられない。中東産油国などで構成する石油輸出国機構(OPEC)は昨年11月と今年6月の総会で、減産を見送った。

 米国のシェール増産に対抗するため、サウジアラビアやイラクは増産を続け、OPECが今月11日に発表した石油月報によると、7月の原油生産高は日量3151万バレルと約3年ぶりの高水準だった。

 また、イラン核開発問題の最終合意を受け、対イラン経済制裁が解除され、イラン産原油が流入すれば、供給量がさらに膨らむ可能性がある。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は「原油価格は秋に向けて1バレル=35ドル程度まで下げてもおかしくない」と語る。【安藤大介、清水憲司】

原油価格の下落で消費者の負担は減っている
原油価格の下落で消費者の負担は減っている

 ◇消費者には恩恵

 原油価格は、昨年6月の1バレル=107ドル前後をピークに、1年余りで約6割下落した。国内のガソリン価格や電気料金は徐々に値下がりしており、消費者にはメリットとなっている。

 レギュラーガソリンの全国平均小売価格は、昨年7月14日時点の1リットル=169円90銭をピークに下落に転じた。今月17日時点では138円20銭と、当時から2割近く下落した。全国の電力10社の標準的な家庭の平均電気料金は、今年9月に7562円で、昨年9月の7876円から約4%下落。この間、北海道電力と関西電力が、電気料金の体系を値上げ方向に抜本的に見直したが、燃料価格の下落効果が勝った形だ。

 電力会社やガス会社が火力発電の燃料や都市ガスの原料とする液化天然ガス(LNG)の調達価格は、原油価格と連動している例が多く、原油の値下がりは都市ガスの値下がりにもつながっている。【安藤大介】

最新写真特集