それは、敗戦国の戦勝国に対するいわゆる戦争賠償のことです。日本は1951年のサンフランシスコ平和条約を受けて、米英など多くの連合国が対日賠償を放棄する中、別途の条約を結んで、インドネシア、ビルマ(現ミャンマー)、フィリピン、ベトナムにはそれぞれ巨額の賠償金を支払いました。インドネシアには803億円、ビルマには720億円、フィリピンには1980億円、ベトナムに140億円です。いずれも当時としては大きな金額です。
加えて韓国には65年の国交樹立に際し、「経済協力」という名目でしたが、無償資金3億ドル、有償資金2億ドル(5億ドルと言えば、当時の韓国の国家予算の規模に相当する)を支払いました。またそれぞれの植民地の宗主国(英国、フランスなど)は対日賠償の放棄をしたものの、戦争の災いを受けたシンガポール、マレーシアなどにも資金――当時は準賠償と言っていましたが――を提供しました。このへんのところは、日本政府は大変生真面目に取り組んだのです。
もちろん無謀な戦争の災禍、植民地支配の償いが金で済むという話ではありませんが、これら東南アジア諸国への賠償金の支払いが契機となって、日本と東南アジア諸国との間の経済関係が深くなっていきました。
ドイツの方はこの「戦争賠償」の話は、いずれ東西ドイのツ統一が実現した上での話ということになっていた。しかし、91年東西ドイツの統一が実現した時、ドイツは「あれはもう昔の話」「それにドイツは他の面で十分“償い”をしてきた」ととり合わず、他方、連合国側も、あえてこれを問題にする向きはありませんでした。
最近 “面白い”ことがありました。ドイツに散々厳しいことを言われ続けたあのギリシャが「そう言えばオレ達はあのドイツから“戦争賠償”をもらっていないな!」と言い出したことです。そして、このドイツから戦争賠償をとり立てようということを公約に掲げて首相の座についたのが、今のチプラス首相です。
その額も1620億ユーロ、日本円にして約22兆円と半端な額ではない。でも、ドイツからはほとんど相手にされていないようですし、イギリス、フランスなどでもこれに呼応する動きは全くない。やはり、その他の面でのドイツのしっかりした取り組みが評価されているからでしょう。ギリシャはドイツ軍に占領され、あのアテネのパルテノン神殿にはナチスの旗が掲げられました。ちなみに昔、名画として皆が見たグレゴリ-・ペック主演の『ナバロンの要塞』は、そのナチスの要塞を破壊する連合国側の地下活動家たちの話です。
心配な日本の若者の
近現代史知識の欠如
――中国、韓国との間では、歴史認識を巡る対立が繰り返されています。この対立を乗り越える道はあるのでしょうか。
私はこの点に関して大変心配しているのが、日本の若者たちの近現代史についての恐るべき知識の欠如です。よく言われるように、高等学校では日本史は必修ではない。その日本史の授業も江戸時代か明治時代くらいまでで終わってしまう。