又吉、芥川賞贈呈式で次作に意欲「面白いものを書きたい」
第153回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の贈呈式が21日、都内のホテルで行われ、「火花」(文学界2月号)で芥川賞を受賞したお笑いコンビ「ピース」の又吉直樹(35)は、上下グレーのダブルのスーツ姿で登壇し、正賞の懐中時計と副賞の100万円を贈呈された。
大きな拍手を浴びると又吉は「火花を増刷して頂き、びっくりしました。(お笑いの)ライブでは1万人、2万人集める正直できないんですね」と229万部の大ベストセラーになったことに驚きながら「小説をふだん読まない人でも、いつか読みたい、手にとる機会がなかった、という人がこれだけいたんだ、と知りました」と喜んだ。
売れなかった芸人時代に、アルバイトの面接さえもなかなか合格できなかったことを振り返りながら又吉はあいさつを続けた。「(芸人をしながら)雑誌にコラムみたいなものを書かせてもらったりと、チャンスをもらい、本が出版ができた。出版できたことは芸人としても自信になりました。芥川賞の候補になった時から(周りに)『次どうすんねん』と言われて、プレッシャーでゲー吐きそうでした。しかし、表現する場所を与えてもらえて、すごく良かったと思います。次作面白いものを書きたい。また皆さんに読んで頂き、感想をいただければ励みになると思います。今後ともよろしくお願い致します」会場は大きな拍手に包まれた。
選考委員の作家、島田雅彦さんは、又吉と同時受賞の羽田圭介さん(29)の潜在力を評価。「2人とも秘密兵器。(作家として)強力なライバルを世に送り込んだ自殺行為を褒められるべき。10年ほど前、日本近代文学はその役割を終えた、という声もあったが、それを撤回せざるを得ない気配」と絶賛した。特に又吉については「お笑い芸人がなんでこんな所にいるんだろうという雰囲気を全身から醸し出している」と笑わし、最後は「いいことばかりではなく、今後はかなりのプレッシャーを背負わなくてはなりません」と締めくくった。