町医者だから言いたい!
2015年8月22日
週刊朝日MOOK「自宅で看取るいいお医者さん」に全国の3980の
在宅療養支援診療所の在宅看取りの実績が載っていますが、見て驚きました。
ちなみにこの中には、「平穏死8カ条」という記事も載っていますが
私の著書「平穏死10の条件」とまるでソックリなのでこれも驚きました。
何百人もの在宅患者さんを診ていても、在宅看取りが年間ゼロという
診療所が現実に結構あるのです。
この雑誌独自の統計処理法に難があるものの、医療機関が厚生労働省に届けた
数字がそのまま掲載されているという点で、実に貴重な資料です。
講演の最後に、よく「どの在宅医がいいですか?」と質問されると
「近くで看取りの実績がある先生を探して下さい」と答えています。
しかしもうそんなことを言わなくていい。
この雑誌(907円)を買っておくといい。
3980の診療所の中には、在宅専門クリニックと当院のように
外来もやるクリニックが区別されていません。
またがん専門とか神経難病専門では看取り数の意味が違っています。
そういった難点を差し引いても、実に興味深い資料です。
看取り数が多い、看取り率が高い、で選ぶという意味では決してありません。
看取り数が少ない、看取り率が低いという診療所は避けて下さいという意味。
そしてなによりこの3980の診療所は、「在宅療養支援診療所」といって
国が定める基準を満たしている診療所ですが、その届けをしていない診療所も少なくありません。
届けを出さないのは
といった理由で、「隠れ名店」のような診療所もあることを付記します。
いずれにせよ、悪徳在宅クリニックにはくれぐれも注意してください。
悪徳とは「悪くなれば救急車を呼んでハイさようなら」というクリニック。
そんなクリニックが公表されている雑誌だと思ってください。
こんなクリニックがあるから、がん拠点病院から信用してもらえないのです。
がん拠点病院から見れば、全部看取るクリニックのことは見えず、見えるのは
悪徳在宅クリニックの内情だけなので在宅医仲間は自浄作用を発揮すべきです。
しかし自浄作用を期待されても、現実にはできません。
できるのは、市民が得ることができる情報を吟味することです。
参考文献) 「長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか?」(ブックマン社)
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