【パリ=竹内康雄】ベルギー国内を走行していた国際列車内で21日午後(日本時間22日未明)、男が銃を発砲し、複数の乗客がけがをした。男は乗り合わせた米国人らに取り押さえられ、フランス北部のアラス駅で当局に引き渡された。現地入りしたフランスのカズヌーブ内相は22日、容疑者はイスラム過激派思想を持つモロッコ国籍の男(26)だったと発表、テロとの見方を示した。
列車はオランダ・アムステルダム発でパリに向かって走行中の国際特急「タリス」で、約550人が乗っていた。オランド仏大統領は21日夜、ベルギーのミシェル首相と電話会談し、事件の全容解明に向けて緊密に協力することで一致した。ミシェル首相は「テロ攻撃」との認識を示した。
欧州メディアによると、容疑者はベルギー在住で、シリアへの渡航歴があったという。列車内では自動小銃のほか、複数の刃物を所持していた。イスラム過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)に関心を持っていたとの情報もある。
欧州では1月以降、テロやテロ未遂事件が相次いでいる。1月にはパリの仏週刊紙本社を銃撃し、多数の死傷者を出すテロが発生。2月にはデンマークのユダヤ教施設で銃が乱射され、2人が死亡した。ベルギーでも1月に大規模なテロ計画が発覚した。
各国の治安当局は警戒度を最高水準に高めて、テロ発生を未然に阻止しようと努めている。だが欧州にはシリアやイラクに滞在経験があったり、渡航を検討したりしている「テロリスト予備軍」が数千人規模でいるとされる。予備軍をすべて常時監視するのは難しいのが実情で、今後は国際列車や高速列車の安全検査が強化される可能性がある。
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