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具体的な解決策見えず 養老鉄道の公有民営化

赤字経営が続く養老鉄道=養老鉄道大垣駅で

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 赤字経営が続き、存続の是非が問われている養老鉄道。大垣市が昨年秋、親会社の近鉄(大阪市)から「公有民営方式」を提案されていることを明かして以来、波紋が広がっている。近鉄や県、沿線3市4町(大垣市、海津市、三重県桑名市、揖斐川町、池田町、神戸町、養老町)の話し合いが続くが、具体的な解決策はまだ見えてこない。

 車両や線路を自治体が保有した上で経営は鉄道会社側が行う公有民営方式。近鉄は二〇一七年度からの移行を沿線自治体に求めているが、その場合、現在は年三億円ほどの沿線市町の負担額が大幅に増えるなど課題も多い。

 大半の沿線市町は受け入れに前向きだが、大垣市は財政負担増を理由に難色を示しており、方向性は一致していない。その状況に、古田肇知事は七月の県議会定例会一般質問で「大垣市と他市町の考えが異なり、混迷している。まことに残念」などと苦言を呈す場面もあった。

 年間六百万人が利用する養老鉄道。大垣市の調べでは、平日の利用客が休日の二倍に及び、通勤や通学の足となっている。存続するには多額の税金が必要となる一方、廃線となれば住民らの生活、さらには自治体の存続に大きな影響をもたらすとあり、各市町は対応に頭を悩ませる。

◆存続へ最善策模索

 地域公共交通総合研究所(岡山県)が二月に出した調査報告書によると、養老鉄道の沿線自治体で一般社団法人を立ち上げ、施設を保有するとなれば負担は十年間で五十一億六千万円。車両や施設の維持管理費が自治体に重くのしかかる上、公有民営化後に路線を廃止する場合、撤去費用は約四十七億円に上るとしている。

 五月に沿線自治体が行った調査では、通勤通学時間帯の利用者の人口に占める割合は、大垣市が0・58%と最低だった。しかし、最も赤字補填(ほてん)の負担が大きいのも同市。これらの事情が、同市が公有民営方式の慎重論に傾く背景にある。

 こうした中、養老鉄道のあり方を検討する「養老鉄道活性化協議会」に参加する沿線市町や県は、公有民営方式を採るかどうかは別として国に財政支援の拡充を求めているが、今後の利用客増加や収支改善のめどは立っていない。

 地方創生問題に取り組む岐阜経済大(大垣市)の竹内治彦副学長は「今のままでは周辺人口とともに利用者数も減る。国に支援を求めるのはわかるが、それだけでは限界がある」とした上で、「十年スパンで自治体施設を駅近くに移すなど、車より養老鉄道に乗った方が便利という環境をつくるべきだ」と話す。

 協議会は年内に方向性を示すとしているが、一致しているのは依然「存続」の一点のみ。残されたわずかな時間で最善の策を見いだせるかどうかが、今後の焦点となる。

 (榊原大騎)

 

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