古賀史健さんの、「騙される人の共通点」という記事を読んで。

私もつい最近、次の書籍のために、とあるネットワークビジネスの洗脳パーティーみたいなのに潜入取材してきたんですよ。いったいどんな人たちが来ていて、どういう感じで取り込まれてゆくんだろう、と思って行ったんですが・・・。

まず、それが渋谷のクラブで行われるクラブイベントであることに驚き、さらにそれが真っ昼間に行われることに驚いた。

そして、意外なことに、来てるのはみんな、20歳から24、5歳くらいの、お金を持ってない感じの子たちなんですよ。どちらかというとコミュニケーションが苦手な、大学の1学期に友達づくりに失敗してしまっていそうで、でも一応は会社や学校には所属していて、暇と友達作りたい欲をもてあましていそうな子たちなんです。

「お金持ってない若者を狙うのか〜」と思ってたら、主催の人が出て来て、最初に煽るのが「老後の不安」なんです。「みんなこのままじゃあと50年後はやばいぜ!」って。で、そっから「老後に悲惨な思いをしないためにはつながりを作って日本を変えていこうぜ!」とかなんとか、音楽のパフォーマンスの合間のMCで言う訳。「老後の不安」「つながり」「日本を変える」がこの会の黄金キーワードらしく、そのあとも繰り返し繰り返し繰り返し言われ続けるわけです。

特に一番最後に出て来たDJの人の語りがやばかった。

「俺はぁ〜!

3年前まで売れない役者だったけどぉ〜!

この会のおかげでこうして舞台に立てるようになりましたぁ!

みんな〜〜!!

夢を叶えるために必要なことって何か知ってるかぁ〜〜〜!

それはぁ〜〜〜………

 

 

 

 

つながりダァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」

 

 

…吐きそう。

で、あとはその場で半強制的に「つながり」を作らされる。

ああ、こうやって会員を増やしているんだな、って思いました。それぐらい今の若者で「つながり」に不安を持っている人が多いんだな、そういうぼんやりうっすらした不安から来る「友達つくらなきゃ、つくりたい」っていう欲、「でもどうしたらいいかわからない」っていうグルグルの中にこの人たちは自分のビジネスをはさみこんで少しずつかっさらってゆくんだって。本来なら人に言われてするようなことじゃない、確立した道筋みたいなのがない物事について、でもまあ、仕組みに任せちゃえば安心、みたいな気持ちから、亀裂にはまり込むんだな、って。

そのクラブのVIPルームには、ビジネスの代表みたいなのがいるらしく、30分並んで入ると、そこには“しょぼい松岡修造”みたいなのが陣取っていて、そのまわりを若い子たちが3周くらい取り巻いており、しょぼ松岡はキラキラ光る白い歯を見せながら「俺みたいなクラスの自由人になるとぉ〜、年に5、6回はハワイいっちゃうからっ!見てこの日焼けの色!これじゃ会社員無理っしょ!」とかなんとかひたすら「ハワイ、ハワイ、ハワイ」自慢、それを若い子たちが目をキラキラしながら聞く、という構図が延々と続きたいへん胸クソ悪くなった。肌の色と仕事関係ねぇ〜〜〜!!!!

しかし、この胸のむかつきはなんだろう、老後に不安があるのは事実だし、たしかにつながりは大事、そして日本には問題がたくさんあり、変えて行かなければいけないことは分かり切っているし、ロジック自体は間違いではない、でも彼らに言われるとなんだか底なしの胃のむかつきのようなものがおそってくる。べつに彼らは騙しているわけでは決してないし、このイベント自体だって、参加するのは来場者の選択だ。でもなんだか、「老後不安」→「つながり大事」→「だからここでつながろう」のあいだにはすんごくいろいろなものがスルーされて取りこぼされている気がする。しかしここに来ている人々はみなすごく不自然な笑顔でうんうんとうなずき素直にMCを聞いている、まるで、笑顔と素直さがこの場の通行手形であって、そうであらないとなにか大きなものから取りこぼされてしまうみたいな緊迫したものが彼らの身体から漏れていて、わたしはなんだか見ているうちになんだか悲しい気持ちになってしまった。

この悲しい気持ちとむかつきの正体を、うまく書けるときがきたら書こうと思う。

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