朝鮮出身者遺骨115人分、韓国に返還へ 戦時中、日本で死亡
太平洋戦争中に日本の民間企業に徴用されるなどして日本で死亡した朝鮮半島出身者115人の遺骨が9月、日本と韓国の市民グループによって韓国に返還される。日韓関係の悪化で政府間の返還が進展しない中、メンバーらは「東アジアの和解を育むきっかけにしたい」としている。15日には京都市下京区の西本願寺で追悼会が開かれる。
朝鮮半島出身の旧民間徴用者らの遺骨返還をめぐっては、2004年の日韓首脳会談を機に、政府が企業や全日本仏教会などに情報提供を依頼。今年4月までに、遺骨2798人分の報告があり、このうち1014人分を朝鮮半島出身者と確認し、韓国政府にも情報提供している。しかし、日韓関係の悪化の影響などで、政府間による返還は一度も行われていない。
今回、遺骨を返還するのは、日本と韓国の市民グループでつくる「強制労働犠牲者追悼・遺骨奉還委員会」。115人の遺骨はいずれも北海道で亡くなった人たちで、旧三菱美唄炭鉱、朱鞠内雨竜ダム建設、旧浅茅野日本陸軍飛行場建設の犠牲者と、本願寺札幌別院に残されている遺骨という。
北海道では、戦時中に企業の募集に応じたり、徴用されて炭鉱や建設現場で働かされたりした朝鮮半島出身者の遺骨が、1970年代から市民により発掘され、道内の寺などで保管。これまで16人分の遺骨が返還されてきた。
遺骨奉還団は、韓国の遺族の1人、金敬洙さんとともに9月11日に北海道深川市の一乗寺(浄土真宗本願寺派)を出発。道内の各地で保管されている遺骨を受け取る。その後、同派の東京・築地本願寺や本山・西本願寺(15日午後3時半から)、大阪・津村別院、広島別院で追悼会を開く。山口県からフェリーで韓国入りし、ソウルでは19日に市庁舎前広場で葬儀、20日に市立追慕公園で焼骨と納骨式を行う。
委員会の共同代表を務める一乗寺の殿平善彦住職(69)は「戦後70年が経過し、これ以上時間がたつと遺族も亡くなって返還がさらに困難になる。遺骨を祖国に帰すことを通して、過去の歴史の傷を癒やしていきたい」と話している。
【 2015年08月22日 08時40分 】