ここから本文です

沖縄メディアの「ミス・インフォメーション」―ロバート・D・エルドリッヂ

nippon.com 8月20日(木)11時16分配信

意図的に報道しない「ミス・インフォメーション」

このいい話を報道しなかったことは、「ミス・インフォーメーション」、つまり前向きなニュースを、しばしば意図的に報道しないというひとつの例である。これらの記事には、友情、人間性のある行為、善行、コミュニティー関係、そして米軍の存在や日米関係をめぐるさまざまな側面についての記事が含まれる。メディアは、肯定的な事実を報道しないことにより、厳に存在する実際の関係を間違った形で描写し、その代りに否定的でセンセーショナルなものに焦点を当てている。

この事故を報道する機会は実際いくつかあったが、取材しないという意識的な決定があったようだ。最初のチャンスは事故直後に警察などが現場に初動したときである。次のチャンスは12月31日、電子新聞Okinawa Marine(沖縄海兵隊)に事故の目撃者の投稿が掲載されたときだ。1月5日には日本語でも公開された。地元メディアは米軍の発表する情報を定期的にモニターしているが、ほとんどの場合それに基づく報道はしない。

そして最後のチャンスとしては、地元メディアが式への招待状を1月8日に受け取ってから事故について知り得た時だった。しかし、悲しきかな、かれらは式典に出席し、報道し、この日に沖縄における米軍の隣人であるかれらの読者のために公表されたメッセージを共有するという選択をしなかった。

このことで私は悲しい結論に達した。琉球新報と沖縄タイムスは沖縄の米軍取材で偏向しているということだ。日本新聞協会が2000年に採択した新聞倫理綱領に違反しているということだ。

防戦体制のメディアが繰り出す無差別砲撃

有名な保守派のコメンテーターである百田尚樹氏は6月25日、自民党の若手政治家、約40人でつくる勉強会に出席、沖縄のメディアは政府に批判的だという質問者の意見に同意した上で、「沖縄のふたつの新聞は潰さないといけない」と語った。

百田氏は後にこのコメントは冗談だと説明したが、議論は他の話題にも移り、沖縄、本土、そして日本在住の外国メディアが同氏の発言を激しく攻撃した。自民党執行部はすぐさま行動を取り、勉強会の主催者や攻撃的と捉えられた発言をした他の出席者に制裁措置を取った。安倍晋三首相自身もこの問題が国会での安保法制審議に悪影響を与えかねないと懸念したこともあり、連立相手の公明党に対して謝罪した。

しかしながら「百田事件」について最も驚いたことは彼のコメントではなかった。さらに、沖縄のふたつの新聞社が非常に否定的な反応を示したこと、つまり抗議声明を発表したり、朝日新聞のような業界仲間と共闘して社説で百田氏を糾弾したり、日本外国特派員協会でのこれらの仲間の集まりで発言したりしたことでもない。最も驚いたのは、メディアそのものが、言論の自由、報道の自由の名の下に、ひとりの民間人の言論の自由を露骨に犯していたことについて、人々が気付くのが遅かったということである。

一連の発言は、沖縄に対して攻撃的であるとか、民主主義、報道の自由、言論の自由に対する脅威であるとの批判がある。メディアはこれらの批判のうちひとつとして、発言の背景となった偏向の存在や意図的にミスリードするカバー体制、そしてこのような状況下における彼ら自身の役割を認識していなかった。沖縄のメディアとかれらの仲間全体は、自己評価をするいい機会を捉えるのではなく、いわば防戦体制を固めてすべての方向に“無差別砲撃”を行っている。

2/4ページ

最終更新:8月20日(木)11時25分

nippon.com