ロシア首相:択捉島を訪問…政府、駐日大使に抗議

毎日新聞 2015年08月22日 11時09分(最終更新 08月22日 12時51分)

メドベージェフ首相=ロイター
メドベージェフ首相=ロイター

 【モスクワ真野森作】ロシア通信によると、ロシアのメドベージェフ首相が22日、北方領土の択捉島を訪問した。7月下旬に現地視察の意向を表明して以降、日本政府は外交ルートを通じて中止を要請してきたが、ロシア側から無視された形になった。

 メドベージェフ氏は2010年(当時は大統領)と12年に国後島を視察しているが、択捉島訪問は初めて。

 今年7月以降、ロシア閣僚の北方領土訪問は3回目。今回、トルトネフ副首相(極東連邦管区大統領全権代表を兼任)とガルシカ極東発展相が同行した。ロシアによる実効支配や開発推進を誇示する姿勢を鮮明にするもので、日露関係は困難になりそうだ。

 メドベージェフ氏の択捉島訪問は、24日までロシア政府主催で開催されている愛国的な青年養成の研修キャンプに合わせた訪問で、水産加工場などの視察も目的に入っている。7月下旬に閣議決定した、北方領土を含む千島列島(ロシア名・クリル諸島)の新たな「社会経済発展計画」をアピールする狙いもあるようだ。メドベージェフ氏は7月23日の閣議で訪問の意向を示し他の閣僚にも視察を勧めていた。7月18日にスクボルツォワ保健相が色丹島、今月13日にトルトネフ副首相が択捉島を訪問した。

 ロシア政府は、ウクライナ危機を受けた経済制裁など日本の対露外交に不満を抱いており、今回の択捉訪問には日本をけん制する意図もある模様だ。プーチン大統領は今年4月、北方領土問題に関して「日本側のせいで対話は停止している」と記者団に強調。日本政府に対露姿勢を軟化するよう暗に促していた。

 日露両政府は昨年2月に同年秋のプーチン氏訪日で合意。しかし、ウクライナ情勢が悪化し、ロシアが一方的にクリミア半島を編入したため、日本は対露制裁を決定した。昨年11月、日露はプーチン氏訪日を今年の「適切な時期」に先送りすることで合意したが、ウクライナ東部紛争の影響で日露関係は停滞したまま推移。大統領の訪日準備のための岸田文雄外相の訪露日程も決まっていない。

 ◇「極めて遺憾」

 外務省の林肇欧州局長は22日午前、ロシアのメドベージェフ首相が北方領土を訪問したことについて、アファナシエフ駐日ロシア大使に対し「日本国民の感情を傷つけるもので極めて遺憾だ」と電話で抗議した。

 林氏は「北方4島は日本固有の領土であり、(メドベージェフ氏の訪問は)日本の立場と相いれない」と指摘。アファナシエフ氏は、北方領土はロシアの領土であるとの従来の主張を繰り返した。【高橋恵子】

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