世界で株安が進んだ最大要因は中国経済の減速懸念が強まったことだ。先月の上海株式市場の暴落時や人民元切り下げでの中国当局の不透明な対応も懸念を増幅した。大国としての自覚を望みたい。
東京株式市場の平均株価は六〇〇円近い大幅安となり一カ月半ぶりに二万円の大台を割り込んだ。アジアの主要市場も全面安、前日の欧米市場とあわせて世界同時株安の様相である。政府は「中国が大きな要素になっているのは間違いない」(麻生太郎財務相)との認識を示した。
世界最大の貿易大国であり、GDP(国内総生産)世界二位でもある中国の景気減速は、原油や銅といった資源の消費縮小も招くなど、さまざまな形で世界経済に打撃を与え得る。
また貿易大国である以上、通貨の切り下げを実施すれば、意図は別にあったとしても輸出増が狙いとの疑念を招きやすい。中国当局は今月十一日から三日連続で人民元を計4・65%切り下げたが、これを受けてベトナムは同国の通貨ドンを1%切り下げた。
それまで人民元はアジア通貨に対し一割以上切り上げた水準だったため、この程度の切り下げで中国が輸出競争力を高めようとしたとは思えない。
むしろ国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に人民元を採用してもらう狙いで、柔軟な通貨政策をアピールしたとみるべきだろう。
だが、中国人民銀行(中央銀行)が突如として始めた切り下げは世界経済の動揺を招いた。「市場との対話」もなく、意図が伝わらない未熟さを露呈した。それは七月に上海株式市場の株価が大暴落した際に、証券会社を使った買い支えなど当局のなりふり構わぬ介入を実施したのと同様である。
何よりも世界経済をけん引してきた中国の景気減速が著しい。不動産バブルが崩壊し、経済成長率を7%台に抑制した「新常態」を目指すも、達成は見通せない。
新興国からの資金流出を招きかねないなど影響が大きい米国の利上げも控えるほか、欧州を揺さぶってきたギリシャは総選挙が決まり、先行きの政情不安が懸念材料である。
日本にとっては、他の通貨との比較で円が買われ、一気に進んだ円高が波乱要因だ。中国経済の一段の落ち込みと円高は輸出を冷え込ませる。アベノミクスで唯一、明るい材料である企業業績にブレーキがかかりかねないのである。
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