韓国大法院(最高裁判所に相当)は20日、建設業者から9億ウォン(現在のレートで約9300万円、以下同じ)余りの違法な政治資金を受け取ったとして政治資金法違反の罪に問われた韓明淑(ハン・ミョンスク)元首相(71)の上告審で、懲役2年、追徴金8億8300万ウォン(約9200万円)を言い渡した高裁判決を支持し、韓元首相の上告を棄却した。9億ウォンのうち3億ウォン(約3100万円)については裁判官13人全員が有罪と判断し、残りの6億ウォン(約6200万円)については8人が有罪、5人が無罪との判断を示した。
最大野党・新政治民主連合で国会議員を務める韓元首相は、判決の確定により議員職をはく奪された。首相経験者が収監されるのは今回が初めてだ。
韓元首相は首相を辞めた直後の2007年3月から8月にかけ、建設会社「ハンシン建営」のハン・マンホ元社長から大統領選に向けた党内予備選資金の名目で3回にわたり3億ウォンずつ受け取ったとして、10年に起訴された。ハン元社長は韓元首相に資金を渡したとする検察での供述を法廷で翻した。一審はこれを根拠に韓元首相に無罪を言い渡したが、二審はハン元社長の供述が証拠によって裏付けられたとして逆転有罪判決を出した。
大法院は、ハン元社長が韓元首相に最初に渡したとされる3億ウォンのうち、1億ウォン(約1000万円)の小切手を韓元首相の妹が自宅を借りる保証金に使った明白な証拠があること、不渡りの衝撃で入院したハン元社長を見舞った翌日に韓元首相が2億ウォン(約2100万円)を返したことを根拠に、韓元首相に9億ウォンを渡したとするハン元社長の供述には信ぴょう性があると判断した。
韓元首相は大法院の判決後に記者会見し「法理にのっとった判決ではなく、政治権力が介入した不公正な判決」と非難し「良心の法廷で私は無罪だ」と主張した。新政治民主連合の文在寅(ムン・ジェイン)代表も「司法府には正義と人権を守る最後の砦であってほしかったが、その期待がかなわなかった。裁判所までもが政治化したという懸念を禁じ得ない」と反発した。
だが、韓元首相は11年に一審で無罪判決が出たときには「真実を明らかにしてくれた裁判所に深い信頼と感謝を捧げる」と裁判所をたたえた。野党も報道官論評で「法と良心にのっとり賢明な決定をしてくれた裁判所に感謝する」と述べていた。ところが今回、自分たちに不利な判決が出るや態度を変え「政治的な判決」などと非難しているのだ。裁判結果によって正反対の姿勢を見せるようでは、野党に対する国民の不信は募るばかりだろう。